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「さて、もう充分休憩出来ましたし、今度こそ魔術言語の授業をしましょうか」
「それでは、私も失礼いたします」
クラリスはテーブルを片付け部屋から退出し、アルクス先生は席を立った。
この後、時間いっぱいまで魔術言語を習った。文字数は全部で百六文字で、文法は日本語とよく似ていたので覚えやすかった。
あくまで、この世界の言語と比べればの話しだけど。
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「今日はここまでにしておきましょう」
「ありがとうございました」
「続きはまた後日、復習を忘れずに、それでは失礼しますね」
「はい、また明日よろしくお願いします」
ふぅ~、随分久しぶりにまともな授業をうけたな、学校の授業より楽しかった。先生がよかったからかな、かなり集中できた気がする。
その後、クラリスが夕食を運んで来てくれたので食事をしたのだが、精神的に疲れていたみたいでうまく食器を動かせず、その日はクラリスに食べさせて貰った。
「そういえば、クラリスは風の魔法が使えるんだよね?」
「はい、またご覧になりたいのですか?」
「いや、そうじゃなくて魔法が使えるということは魔法スキルを持ってるんだよね?」
「はい、私は風魔法スキルを授かりました」
「初めて魔法を使った時、どんな感じだったか覚えてる?」
「はっきりと覚えております………あれはとても不思議な感覚でした。身体に何かがゆっくりと染み込んでいく感じです。まるで初めから分かっていたように魔法が使えました……申し訳ございません。言葉では上手に説明できそうにありません」
「ううん、充分だよ、ありがとう」
「そうですか?それなら良かったです」
なんだか俺が初めて魔力を使おうとした時と似ている気がするな。もしかして、アルクス先生が言っていた先天的スキルを持っている可能性がある。問題はどうやってそれを調べるかだ………。
「ねぇ、どうやってクラリスは風魔法スキルを授かったのを確認したの?」
クラリスは夕食の片付けを一時中断し、
「教会には鑑定の魔道具があります。それで調べて貰いました」
あぁ、アルクス先生もそんな物があると言っていたな。
「当時、私が調べて貰った時は“風魔法” “大陸共通言語” “家事” その三つのスキルを持っていました」
「へぇ~、他にその魔道具で分かる事はないの?」
「その他には名前と年齢、性別に種族だけです」
「それだけ?」
「はい、それだけです。さすがに古代の遺物を参考に作られた魔道具でも鑑定した人物の全てを知ることは出来ないと思いますが……」
ふ~ん、そうなのか………
「ありがとう、クラリス。よくわかったよ」
「そうですか?お役に立ててなによりです」
そう言って夕食の片付けを済ましたクラリスは「失礼します」と言って部屋から退出した。
よし、少し休んでから検証を始めるか。
アルクス先生の話しを聞く限り、スキルや魔道具を使用しなければ、人や物の情報を読み取る事は出来ないらしい。
俺は魔力を使い、物の情報を読み取る事ができる、なら人の情報はどうだろうか?
俺の魔力で、自分自身を調べる事が出来るのではないか?
とにかく、試してみるしかない。
まずはイメージしてみよう。アルクス先生が言っていた、自分の魔力の保存場所を。
目を閉じて暫く集中していると、俺の中で魔力が蓄積している場所が頭に浮かんだ。
そこは、魔力で出来た空間みたいだった。まるで自分の中に、魔力だけの世界が広がっているかのような気がした。そこから血管のように細々とした魔力が身体中に行き渡っているのを感じる。
アルクス先生は、これと同じものを見たのだろうか? それで驚いてたのかな? 比較対照が無いので、いまいちよく分からない。
あとは自分の情報を引き出すだけ、さらに精神を集中させると様々なものがみえてきた。筋肉や血管の構造、骨骼、細胞まで、それらの情報が頭に浮かぶ。
まだだ……もっと………もっと深くまで……
すると、あの不思議な感覚が俺を襲う。
これだ……見つけた………確かに此処から“何か”が流れ込んでくるのを感じる。これが俺のスキル………俺の頭に文字が浮かんでくる。
その文字はこう読めた“魔力支配”と…………