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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十八幕】公国の悪意と王国の変化
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18

 

 教皇様とカルネラ司教にせがまれて、馬車の中で今まで自分がしてきた活動の話していると、やっと領主の館に到着した。


 ふぅ…… 漸く着いたよ。時間にして数十分の距離なんて普通ならそう疲れる事はないんだけど、教皇様という大物を相手にしていると結構長く感じてしまう。これから国王様との面会が控えているというのに、俺の精神はもう擦りきれてギリギリですよ。こんなんで大丈夫かな? 今更だけど不安になってきた。


 一応服はそれっぽいものを着てきたけど、これで良かったんだよね? アグネーゼとオルトンは、よく似合っております―― と、俺をヨイショするだけで全然参考にならない。


「あの、これから国王様と会うのに、この格好で大丈夫でしょうか? 」


「大丈夫、よく似合っておりますよ。今のライルさんの立場はあくまでも商店街代表の一人でありますので、貴族のような装いはしなくてもいいですよ」


 そっか、それを聞いて少し安心したよ。下手な格好で不敬罪にでもなったら嫌だからね。


 こっちの世界にもスーツのように決まった正装でもあればいいのに…… いっそリタに頼んで作ってもらおうかな? パーティならドレス、仕事ならスーツと分けて着こなすくらい貴族に流行らせれば、平民だろうとフォーマルな服装が用意出来て、今の俺のように悩む事がなくなる。良し、このお祭りが終わったらリタと領主に相談してみるか。




 館の敷地内で馬車から降りた俺と教皇様とカルネラ司教は館に向かうが、アグネーゼとオルトンは場違いだという理由で魔力収納に入っていった。因みに、朝からエレミアもずっと魔力収納にいる。


 玄関前では使用人が待機しており、深くお辞儀をした後に扉を開けてくれた。


「本日はお越しいただきありがとうございます。吾輩の館に教皇様をお迎え出来た事は一族の誉れとなりましょう」


「此方こそお招きいただき感謝致します」


「お疲れのところ申し訳ございませんが、国王陛下と王妃がお待ちしております。ご案内致しますので此方へ…… シャロットはライル君を応接室まで案内するように」


「はい、承知致しましたわ」


 ここで教皇様とカルネラ司教は領主の案内で国王と王妃が待つ部屋に行き、それを黙って見送った後、くるりとシャロットがこっちへ振り向く。


「さぁ、此方も行きましょうか。既に皆さん揃っておりますわよ」


 シャロットの先導で応接室に入ると、そこには各商店街の代表達が各々席に着いて寛いでいた。


「あら? やっと来たのね。国王様がいらっしゃったと言うのに、随分とのんびりしていたわね」


 部屋に入るなり北商店街代表のカラミアが呆れた様子で声をかける。


「まぁまぁ、ライル君にも都合というものがある。そう頭ごなしに言うてもしょうがないなかろうて」


「オバさんに同意すんのはあれだけど、王様と会うよりも優先する都合って何なのさ」


 東商店街代表のへバックがフォローしてくれるが、そこへ西商店街代表のティリアが言葉を挟んだ。


「皆様、ライルさんは教皇様をここへお送りして遅れたのですわ。決してのんびりとしていた訳でも、国王陛下を蔑ろにした訳でもありません」


 シャロットの釈明に、代表達は揃って俺を見る。三人ともほぼ同時に首がこっちに向くもんだから、驚いて肩がビクッ! と反応してしまったよ。


「…… なんじゃって? 今、教皇様と言うたかの? 」


「神官騎士達をインファネースに引き連れて来たと思ったら、そんな大物が後ろに控えていたのね」


「あんたさぁ、どんだけ顔が広いんだよ…… つか、教皇様も今ここにいるの? 今年の祭りはどうなってんのよ」


 代表達がすっかり大人しくなったのを見計らい、使用人が俺の分の紅茶を運んで来てくれたので、俺も空いている席に着いて一息つく。


 あぁ、紅茶が旨い…… これはデットゥール商会の茶葉だな。


「今は別室にて国王陛下と教皇様が非公式でお会いになっておられますので、もう少々ここでお待ち頂きたいですわ」


 俺の隣に座ったシャロットに皆の視線が集まる。


「陛下と教皇様が祭りを理由にお会いになられているという訳じゃな? 王妃様もご一緒というのも意味深じゃのぅ…… 日取りはずらされておるが、賓客のリストにはサンドレア王とトルニクスの元首までおったぞ」


「おいおい…… 何がどうなってんだよ。そんな大物達を招待して、王妃様はこのインファネースをどうしようってんだ? 」


「心配は無用よ。あの王妃様のことだから悪いようにはならない筈。それに、私達が集められたのは何も国王陛下と謁見する為だけじゃなく、その事についての説明もあるんじゃないかしら? 」


 インファネースの経済を担っている各商店街の代表を国王様に紹介しようとするのは分かるけど、それだけではない筈だ。これまでの王妃様の不可解な動きの説明をしてくれるものだと、此処にいる誰もがそう思っている。


「あ、そう言えばコルタス殿下が見当たらないけど、国王様の所にいるの? 」


「えぇ、こういう非公式での会談もこの先必要な事ですので、実際に見て勉強するようにと、王妃様に言われたようですわ」


 うへぇ…… 王子ってのも大変だね。俺だったらその場にいるだけでストレスで胃潰瘍になってしまいそうだよ。

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