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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十八幕】公国の悪意と王国の変化
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9

 

 話し合いの末、今年もお祭りを開催する方向に進み、民衆や他国への宣伝を開始した。


 王妃様は各国への貿易海路の安全確保を急ぎ、俺達商店街の代表は自分の商店街で店を構えている店主達に祭り開催を報せ、準備に取り掛かる。


 この話は商工ギルドと冒険者ギルドに設置してある通信魔道具により瞬く間に拡がり、世間はインファネースの祭りで話題騒然となった。


 当然、こんな時にあの国は何を考えているのかと非難されたが、他国からは概ね肯定的な意見が多く、寧ろ自国からの方が非難が激しいらしい。恐らくその殆どは貴族派の連中だろう。


 それでも国王様はインファネースにいる王妃様へ、祭り開催の許可を下し、今年こそ自分もその祭りに参加するのだと息巻いているのだとか。


 問題を呈する貴族達の意見を丸々無視する形となった国王様に、貴族派は勿論の事、一部の中立派にも国王様の行動に不信感を募らせる結果になってしまったと、中立派の代表であるマセット公爵から連絡があったと領主から聞いた。


 そのマセット公爵だが、祭りの開催には大賛成なようで、今から楽しみにしているようだ。今年は王族派のロレスク公爵も呼んでインファネースの祭りを存分に楽しむつもりらしい。


 まさか、インファネースに三大公爵家の二人と王妃様、国王様がいらっしゃるとは…… これは絶対に失敗出来ないな。


 開催期間は話に出た通り一週間で、準備期間として一月が設けられた。一月は長いと思えない事もないが、今から準備するとなるとこれがまた短く感じてしまうものだろう。


 商店街の人達と協力して外灯に飾りを付け、屋台の準備を始める。去年も同じように経験している分、今年は比較的スムーズに準備が進められていく。南商店街は妙に張り切っているデイジーに任せて、俺は今日も領主の館で他の代表達と領主とで、今年はどんな催し物をするのか意見を出し合っていた。


「やっぱり締めの花火は外せないわよね。後は、去年と同じように色んな屋台を出しておけば良いんじゃない? 」


「今年は難民達や村の人達もインファネースに来ているし、他国から来客もあるから、商店街と中央広場だけじゃ狭いんじゃないか? 」


「確かにのぅ…… それなら今開拓している土地も祭り会場にしてみんか? 難民達も整地ばかりでは疲労が溜まるだけじゃし、彼等に屋台を貸し与えてみるのはどうじゃ? 彼等は臨時収入を得て、此方は祭りの規模が拡がるじゃろ? 」


「良いですね。祭りが開催している間は、第一防壁の門を開放して、その周辺と壁に沿って屋台を並べて見ては如何ですか? 」


「ブフゥ…… そうであるな。流石に第二防壁までは距離があり過ぎる故、その位が丁度良いかも知れん。それより今年も人魚と妖精による歌の披露はするのであるか? 」


 あぁ、去年はアンネの企みにより、海上ステージにてゲリラライブをしたんだったね。今年はもう歌については皆に知れ渡っているので隠す必要はないからか、祭りの開催が決まったと聞くや否や、アンネは他の妖精達を連れて人魚の島へ歌の練習に向かって行った。


「今年は人魚と作った完全オリジナル曲も歌うかんね!! 」


 と、アンネと妖精達は張り切っていたな。そんな事を領主に伝えたら、


「ブフ、それは楽しみであるな! 」


 機嫌良く肥えた顎と腹を揺らす領主は、満面の笑みを浮かべる。


「でもさ、このままじゃ規模のわりに屋台の種類が少なくないか? 同じ屋台を複数用意したりすれば良いんだろうけど、それだと少し味気無いような気がするんだよな」


「こればかりはオチビちゃんの言う通りね。屋台の案は殆どライル君が出していたわよね? 他に何か思い付いた事はない? 」


 う~ん…… 食べ物系は充実しているから同じ屋台を増やせば事足りるだろうから、ここは遊戯系を増やしてみるのはどうだろうか?


 射的や輪投げは去年にもあったけど、的当てはまだ無かったな。難民達では景品を用意するのも難しいと思うので、ドワーフ達に何か簡単な置物や工芸品なんかを作ってもらおう。なに、お酒でも渡せば嬉々として作ってくれる筈さ。


 後は他のイベントでも考えて、インファネースに来てくれた人達と一緒に何かしたいよね。


「うん? それって、祭り以外に何かするって事なのか? 」


「あくまで祭りの中での小さなものなんですけど…… 何処でもいいので用意した舞台に、時間を決めて小さな催し物をするんです。例えば、舞台の上で一人ずつ歌を披露してもらって、一番上手な者を選んだり、女性達が水着姿となって舞台に上り、特技を披露してもらったりして、その中から一番綺麗な人を撰ぶとか。 勿論、一位となった人物には豪華景品をご用意致しますよ? 」


「ほぅ? それはなかなか面白そうじゃのぅ。どれか一つではなく、そのイベント会場を街の中に幾つか作っておけば、色々と出来そうじゃな」


 この日も俺達の会合は日が沈むまで続いた。それを繰り返す事数日。やっと祭りの全体図が出来上り、これから本格的な準備が始められる。


 今年で二回目となるインファネースの夏祭り…… 思ったより大きくなってしまって、正直戸惑いを隠せない。それでも、ここに元から住んでる人達も、難民達も、村から引っ越してきた者達も、この祭りで少しでも未来に希望を見い出し、俯かずに顔を前に向けてほしい。

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