表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十八幕】公国の悪意と王国の変化
758/812

6

 

 連合軍と魔王軍との戦いは、両軍とも決定打もないまま悪戯に長引いていると話すクレスの声は、とても疲れている感じだった。


 調査の結果、魔王がいると思われる元小国の城にはインファネースや他の町と同じような、転移をも防ぐ結界が張られていて、転移魔石での侵入は不可能だと、帝国の斥候部隊から報告があったのだとか……


「魔王側に結界魔術を扱える魔物がいるとは考えにくい。となれば、魔王に味方する人間がいるか、それともまだカーミラが魔王を援助しているかのどちらかだと思うんだ。僕としては、人類を滅ぼそうとする魔王に与する人間がいないと信じたいけどね」


 それは俺も同じだ。しかし、ヴェルーシ公国という怪しい隣国がある以上、そう簡単には信じられないのも事実。


 俺は王妃様から聞いたヴェルーシ公国の事をクレスに伝え、注意を促した。


「そうか、ヴェルーシ公国が…… これは黒騎士が言っていた事なんだけど…… 帝国にある歴史書には、五百年前の魔王討伐以降から公国が不可解な動きを見せているらしいよ? その頃から既にリラグンド王国との確執もあったようだし、そもそもどのようにして建国したかは何処の国の歴史書や文献にも残されていないんだ。カーミラの事といい、何かと怪しい国ではある。ライル君は今もあの国を調査しているんだよね? 君なら―― いや、君達ならそう危ない事にはならないと思うけど、カーミラが裏にいる可能性は高い。十分に気を付けてくれ」


「はい、肝に命じておきます。今はまだ裏ギルドからの報告待ちではありますが、その報告次第では俺も公国に赴かなければならないかも知れません。まぁそれはそれとして、クレスさん達は魔王討伐を優先して下さい。カーミラと公国については此方に任せて貰えませんか? 」


「あぁ、頼んだよライル君。僕達も出来る限り急いで魔王を討ち取り、君と協力してカーミラを何とかしたいところではあるけど、予想より戦況は思わしくないね。この戦い、もしかしたら年単位で長くなりそうな気がするよ」


 そこまで事態は膠着しているのか…… 何時になったら勇者候補の中から勇者が決まるのだろうか?


『確か前の勇者が決まったのは、候補が出てから一年くらいだったと、我の知識支配で調べた結果ではそうなっているな。今回も同じとは限らないが、一つの目安として取ると良い』


 一年程ねぇ。勇者候補が世に現れたのは今年の冬ぐらいだったよな…… ならまだ数ヵ月はあるって事か? まぁ勇者が決まったとしてもすぐに魔王を倒せる訳ではないが、この膠着状態から抜け出せるかも知れない。


 クレスとの会話を切り上げてマナフォンを仕舞い、軽く息を吐く。さて、まだまだ問題は山積みだ。何処から手をつけるか……



 カーミラの所在は未だ掴めず、公国に関しては裏ギルドからの報告待ち。リラグンド王国は跡目争いで一悶着ありそうだけど、王妃様には待っててくれと言われたし、今現在俺が出来る事と言えば、事態が好転するよう願い、このインファネースと店を守るだけ。





 シュタット王国からの難民はあれからも増え、インファネースの財政を圧迫している。それでも新しく広げた土地の開拓には人手が大勢必要だ。


 シャロットが言うには、あの広げた土地は農業地帯として開拓し、麦や家畜を育て、海に面した場所では塩田を作る計画らしい。それを難民達にやってもらうのかと思ったら、それはどうも違うようで、領内にある村に住む人達を全員まとめてこのインファネースに移すのだそうだ。


 今はリラグンド王国まで魔王の手は届いていないが、活発化した魔物の被害は各国に発生している。そんな時、インファネースでは結界があるから問題ないけど、領内の小さな村々では結界を維持するのも難しく、領主の私兵を何時までも常駐させても置けない。


 ならばいっその事インファネース自体を更に広げて、そこへ村人達を移住させてしまえば、魔物が攻めて来たとしても安全は確保出来る。難民の受け入れも土地を広げた理由でもあるが、主な目的は領民を一つに纏める事にあった。


 新しい土地の安全は既に保証されているので、各村々から人が集り、其々持参した種を持ちより畑を耕し、村から連れてきた家畜の世話をしたり、塩田を作り始めたりしている。


 難民達は整地の他に、そんな村人達から農業などの基本を学び、何時の日かシュタット王国に戻る事を目標としているらしい。


 勿論、領主もそのつもりで難民達を受け入れたのだが、本人が望むのなら、このままインファネースに永住してもらっても構わない心積りだ。


 噂では更に新しい防壁を建てて、開拓地を広げる計画があるとかないとか…… いったい領主はインファネースを、レインバーク領をどうしたいのだろうか?


 いや、これは確実に王妃様も関わっているな。むしろ主体となっているといっても良い。


 信じて待っていて欲しいとは言われたけど、ここまで大きく変わっていく様子を見せられては、どうしても期待より不安が勝ってしまう。


 いったい王妃様はインファネースをどうしたいのだろう? それと国内で拡がる騒ぎはどの様に収めるつもりなのか? 信じて良いんだよね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ