ロロアの新しい生活
「うんしょっ!! 」
ロロアは今日も元気良くベッドから起き上がるよ!
どうも! ロロアはロロアって言うの。皆はロロア達の事を鳥獣人って呼ぶよ。
まだ頭がボ~ッとするから、昔の事を思い返しながらのんびりするの。それがロロアの何時もの朝。
ロロア達はここからうんと遠くにある山の上に住んでたの。でも、魔物が狂暴になっちゃってロロア達の住む場所が荒らされちゃった。そんでもう此処には住めないからって近くの町まで行ったんだけど、ロロア達にはお金がないから住むところも食べる物も手に入んない。
そこで人間から、奴隷ってのになれば仕事を紹介してもらってお金を貰えるって聞いて、ロロア達は奴隷商って所に行って登録したの。
だけど、聞いていた話と違って全然仕事なんてなかった。誰かに連れていかれても、ちょっと失敗するだけで直ぐに戻されちゃう。奴隷商のおっちゃんが言うには、ロロア達の腕が羽になっているのがいけないんだって。
え? なにそれ? 羽が無かったら空が飛べなくなっちゃうのに、何言ってんの?
ロロアはおっちゃんの言う事が全然分かんなかったよ。それはロロアが馬鹿だから? それともおっちゃんがおかしいから?
でも、ロロア達を必要としてくれる人がいないのは、何だか寂しいな……
全然生活が楽にならなくて皆困っていた時、ロロア達を大勢集めている奴隷商がいると聞いてロロア達も行ってみたら、そこで一人の変わった人間と出会ったの。
その人間は顔の半分が怪我したような跡があって、両腕が無かった。でも、それを気にしている素振りもなく普通にしているもんだから、ロロア達も特にその事に関しては聞かなかった。それより本当に仕事があるのか、ロロア達でもお金が貰えて街で暮らせるのか、それが大事なの。
その人間が言うには、ロロア達に空を飛んで何かを届けるといったお仕事を頼みたいんだって。
それならロロア達は得意だから大丈夫だね!
そんでその人間に連れられてやって来たのは、ロロア達のいる町とは別の町。確か…… イン何とかっていう名前だったかな?
とにかく、ここがロロア達の新しく住む場所。空を思いっきり飛べるのは嬉しいのだけれど、仕事を覚えるのは大変。ロロア達は他の人みたいに直ぐ何かを覚えるのは苦手なんだよね。それでも、商工…… ギルド、って言うの? そこの人達と背中に黒い羽を生やした人達は、今までの人達と違って、怒鳴る事なく丁寧に何度も繰り返し教えてくれた。ロロア達も一生懸命それに応えようと頑張って、やっと二人一組で仕事が出来るようになったよ!
ここの人達は皆優しいし、住む場所も作ってくれた。
それは山のように高い建物で、中は小さな箱見たいな部屋が沢山あるの。皆急いで自分の部屋を確保する為に飛んでいく。へへ、ロロアは一番高い部屋を取ったんだよ! こう見えても結構速いんだからね!
屋上には長い椅子や屋根付きの休憩所みたいなのもあって、仕事が無い日や時間がある時は、皆でお日様を浴びて寛いでいるよ。こうしていると、山で過ごしていた頃を思い出すの。でもここから見える景色は全く違うけどね。
ボ~ッとしていた頭もハッキリしてきたから、溜めた水桶に顔を突っこみバシャバシャと洗って眠気をスッキリさせてから窓から外へ飛び出す。玄関? そんなものより窓から出た方が早いよ?
何時ものように商工、ギルド? に向かうと、ロロアの相棒が待っていた。
「おっはよ~! 今日は何運ぶの? 」
「ん~? わかんないけど、手紙かなんかじゃない? 」
沢山入る魔法のバッグを肩に下げて、いざ出発!
届ける所は何時も決まっているから、一度覚えてしまえば迷う事なんてない。まぁロロア達は道には迷った事はないけどね! 他は全然だけど。
「ねぇ、キキ! 」
「なぁに? ロロア」
「ここに来て良かったね! 」
ロロアがそう言うと、キキは同じようにニッコリと笑っては、
「そうだね! 」
と、元気良く返事をくれた。
一度出発したら暫くあの街へは帰れないけど、今から行く所もそんなに悪い所じゃないから楽しみ! そんでそこからまた荷物を持って帰ったら、仕事で稼いだお金で美味しいものを食べて、あの屋上でのんびり過ごす予定なの。
山にいた頃よりもずっと便利で安全な生活に、皆も不満はないみたい。時々仕事中魔物と遭遇する事はあるけど、ロロア達の速さにはついてこれないから、振り切るのは簡単だよ!
今でも各地からロロア達と同じ境遇の鳥獣人が集められているみたい。きっと皆もロロア達のようにこの生活を気に入ると思う。
あの街はとても変わってて面白い。髭が長いずんぐりむっくりな人に、耳が長い人、背中に白や黒の羽がある人、ちっさい人、色んな人が一緒に暮らしていてとても楽しい。
えっと…… 確か、イン…… パ、じゃなくて、フ…… そう! インファネース!! へへへ、もう覚えたからね。ロロア達は忘れっぽいけど、大切なものや場所はそうそう忘れたりしないよ!
あ、そういやあの両腕が無かった人の名前ってなんだっけ? ……ま、いっか! また会ったら聞けばいいだけだもんね。
良し! 今日もお仕事がんばるぞー!!