表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十七幕】魔王討伐連合軍と反撃の始まり
738/812

50

 

「…… お待たせ」


「私ももう大丈夫よ。十分に休ませて貰ったわ」


 リリィとエレミアが再び飛行魔術を使ってテオドアが憑依したロック鳥の背中から離れる。


「おっし! そんじゃこの肉体はもう用済みだな」


 憑依していたロック鳥から出たテオドアは、直ぐ様自身の体を炎に変えて燃やし殺した後、此方へ笑顔で近付いてきた。


「タブリス達がスキュムに向かっているようだから、俺達も少し急ごうか」


 堕天使達に先を越される訳にもいかないので、ペースを速める事にした俺達は、次々と魔物を仕留めながらお目当てのスキュムへと目指して飛んで行く。


 俺は弾丸で、エレミアは蛇腹剣と魔法で、リリィは炎の鎖や風の刃など多様な魔術で、テオドアは己の身を魔術で変化させ、道中地上への掩護をしつつ一番大きい魔力の下へと向かう。



 暫くそんな状況が続くなか、大きな魔力のうねりが視えた。それは暴風となり吹き荒れ、地上の人達に襲い掛かる様子を俺はしっかりと捉えた。それはエレミアも同じなようで、


「ライル、あれってもしかして…… 」


「あぁ、奴が動き出したみたいだ」


 あんな大きな魔力を持っている者はそういない。あの攻撃はスキュムが放ったに違いないだろう。


「相棒、もっと急ぐか? 」


「そうしたい所だけど…… 」


 俺はリリィとエレミアに目を向ける。二人は今でさえ必死に付いて来ている状態なのに、これ以上スピードを上げたら付いて来れないだろう。


「…… 悔しいけど、今の私ではこれ以上速度は上げられない。ここは一旦魔力収納へ入った方が効率的」


「それだと側でライルを守れなくなるけど、仕方ないわね。テオドア、しっかりとライルの補助をしなさいよ」


「おうよ、任せろってんだ! 」


 リリィとエレミアを魔力収納へ入れ、俺はテオドアを伴って全速力でスキュムと思わしき強大な魔力を目指す。


 テオドアがその身を雷に変化させ、周りの魔物を感電させているのを横目にひたすら突き進んでいると、先に目的地へ着いたハニービィから映像が送られてきたとクイーンから報告があった。



 今は敵陣の中を突っ切っているようなもので、普通なら他に意識を割く余裕はないのだが、目にも止まらぬスピードで魔物達を感電死させていくテオドアがいるから、まだ若干の余裕はある。


 移動速度は維持したまま、クイーン経由で送られてくるハニービィの視覚映像を確認してみると、そこにはスキュムの前で槍を構える数人の堕天使とタブリスの姿があった。



 〈久しぶりだな、スキュム。オレを覚えているか? 〉


 〈はて、弱き者を覚えてやるほど私も暇ではないのでな〉


 スキュムのその言葉に、他の堕天使達は明らかに不機嫌な表情を浮かべる。


 〈ほぅ? 隊長が弱い、ねぇ…… こいつは確殺もんですな」


 〈寝言は寝てから言うものですよ? まぁ、直ぐ永遠の眠りに就く事になりますがね〉


 スキュムの前に立ちはだかるのは、タブリスと六人の堕天使だけ。他は各自散らばり地上へのサポートに専念しているようだ。


 タブリスを含めた七人の堕天使と、魔王の力によって変異したスキュムとの戦いが始まった。


 流石は空を生業としているだけあって堕天使の動きは洗練され、息の合った連携で着実にスキュムの体に傷を作っていくが、どれも浅く致命的なものにはなっていない。


 スキュムも、金属の羽で堕天使達の槍を防ぎ、金属の嘴で突き、金属の足爪で肉体を切り裂こうと迫る。


 今の所、堕天使達とスキュムは一進一退の攻防を繰り広げているかのように見える。しかし、奴の動きにはまだまだ余裕を感じるな。しかも、お得意の風魔法をまだ使ってはいない。


 これはもしかしなくとも手加減されているな。いや、ただ単に遊ばれているだけなも知れないが。


 〈その余裕、何時までも持つとは思うな! 〉


 スキュムの肉体が金属になっているのは嘴、羽、足爪の三ヶ所だけ。それ以外のところは普通の羽毛に包まれた鳥の肉体である。その胸の部分にタブリスは槍の穂先を向け、魔力を練る。


 すると穂先が白く輝き出し、気付いたら細い一筋の光がスキュムの方へと伸びていた。発射した瞬間も光が伸びていく過程も見えず、一瞬にしてスキュムの肉体を貫く光の筋。まるで極細のレーザーだな。


 自分の体に空いたそれはもう本当に極小さな穴から立ち上る煙に、スキュムは顔を顰めた。


 〈良し! これなら奴も防げず攻撃が当たる! 〉


 それを見ていた他の堕天使も、自分の持っている槍をスキュムへ向けると、タブリスと同じように穂先が光り、気付けば光の筋がスキュムの体を貫いていた。


 〈ぬぅ…… ! 〉


 スキュムが苦しそうな声を上げる。これは手応えありか?


 堕天使達には身体強化の魔術の他に、幾つかの光魔術を刻んである。元々有翼人改め天使だった彼等は光魔法を授かっていたので、扱いに慣れている光魔術をとお願いしてきたのだ。


 しかし、俺は光魔法なんて使った事がないのでどういう魔術にするか悩んだ。なので身近にいる人の光魔法を参考にして、リリィの協力を得て術式を構築し、堕天使達へと刻む。


 だから彼等の光魔術は、クレスが使う光魔法に似通っているが気にしないで貰いたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ