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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十七幕】魔王討伐連合軍と反撃の始まり
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47

 

 遂に戦いが始まった。地上ではクレスとゴーレム、アロルドと義勇兵達が先陣を切り、その側でレイシアとレイラが追従している。


 俺はハニービィを飛ばして戦況を把握すると共に、空の魔物と対峙する。


 魔力収納から取り出した幾つもの鉄の弾丸を魔力で操り、自分の周りに浮かべて戦闘体勢に移ると、堕天使達が一斉に槍を構え出す。ゲイリッヒは血で形成した大鎌を担ぎ、バルドゥインは全身を血液で覆いあの怪物の姿となり、テオドアは愉しげに嗤う。エレミアは蛇腹剣を抜き、リリィも杖を握り締めては魔力を練り始めた。ムウナとアンネは…… 今のところ何もしてない。




 ロック鳥とシザーヘッドの群れが、地上にいる兵士や冒険者に襲い掛かろうと飛んで来る。それを魔法や弓で迎え撃つけど、虫特有の不規則な動きと、体積が大きいからこその高い耐久力を持つロック鳥には効果は薄い。


 俺は深く深呼吸をする。怒りは抑えず且つ頭は冷静に…… 空にいる魔物は俺達よりも遥かに数が多いが、負ける気はしない。


「敵は見ての通り数が多くて広範囲に展開している。出来るだけ固まらずにバラけて各自撃破してほしい。常に俺の魔力で繋がっているから、何かあったら迷わずに報告する事。それと最後に…… 奴等を一匹足りとも逃がすつもりはないから、そのつもりで」


 事務的な言い回しになってしまったけど、戦闘の指揮なんて取った事ないから正直なんて言えば良いのか分からないが、本気で魔物達を殲滅するつもりだと言うのが伝わればいい。


「承知した、長よ。オレが受けた屈辱、この戦いにて晴らせてもらう…… お前達! オレに続け!! 」


 タブリスと他三十五名の堕天使達が二人一組になって飛んで行く。


「王がそれを望まれるのなら、俺はご意向に添って敵を排除するだけ…… 」


「殺すのは魔物だけですよ? 貴方が撒き散らす血の霧は凶悪ですからね。味方まで巻き込まないようにお願いします」


 バルドゥインとゲイリッヒは、各々違う方向へと向かって行った。あの二人なら個人で動いても問題ないだろう。


「そんじゃ、一発かましてやろうじゃないさ! あたしとゴーレムの力を皆に見せ付けてやるぜい!! しっかり付いてきなさいよ、ムウナ! 」


「むぅ…… みんなとちがって、ムウナ、ほんきだせない。でも、がんばる! 」


 どうやらアンネはムウナと一緒に行動するようだ。ムウナも多少不満気ではあるが俺の言い付けを守ろうとしている。


 皆が散々となり、残ったのは俺とエレミア、リリィ、テオドアの四人だけとなった。さて、そろそろ俺達も動きますか。


「テオドア、リリィを頼んだよ」


「俺様も存分に暴れてぇけど、仕方ねぇな。良いぜ、任されてやるよ! 」


「…… よろしく」


「私が周囲を警戒するから、ライルは自分の思うように動いて」


「ありがとう、エレミア。じゃあ、行くぞ! 」


 俺達四人も近くまで迫って来ている魔物へと向かい、魔力で操る弾丸に回転を加えてシザーヘッドに放つ。


 ほぼ真っ直ぐな軌道で進む弾丸は、吸い込まれるようにシザーヘッドの胴体に当たるが、キンッと高い音を立て弾かれてしまう。あの甲殻は予想以上に堅い。なら、弾丸の種類を変えるだけだ。


 魔力収納からミスリルの弾丸を取り出し、再度シザーヘッドに放つ。


 一撃目で此方に気付いた魔物達が、地上から俺達へと標的を変え襲ってくる。その内の一匹にミスリルの弾丸が命中し、鉄をも弾く甲殻を今度は意図も容易く破壊する。


 弾は小さくてもミスリル製なので、鉄と比べるとかなりの出費となるが、そんな事など気にしてはいられない。この戦いでは損益なんて度外視だ。ついでに周りの目を気にして自重するつもりもない。


 新たに無数の弾丸を取り出しては次々とシザーヘッド達の体を砕いていく。


 弾丸に貫かれたシザーヘッドは、自身の甲殻の破片と体液を撒き散らし地上へと落ちていった。


 しかし、数が多くて直ぐに囲まれてしまう。


「…… テオドア、時間を稼いで」


「おぅ! 任せな!! 」


 俺の後ろ側でテオドアが魔術で体を雷へと変化させ、リリィに近付くシザーヘッド達を感電させて動きを止める。その間に発動させたリリィ魔術が残りの魔物を襲う。


 前にオークと戦った時に使っていた炎の鎖を何本も作り出し、一匹ずつ丁寧に絡みつけては焼いていく。


「…… いくら堅くても、熱までは防げない」


「へぇ、なら俺様も焼き殺すか! 」


 背中にリリィとテオドアの魔術で発生した炎の熱を感じつつ、俺も正面の敵から意識を逸らさずに弾丸を発射させていく。


 シザーヘッド達は背中の翅で縦横無尽に飛び回るが、俺の弾丸は銃のように真っ直ぐしか飛ばせない訳ではない。魔力で操っているので途中で軌道を変える事だって可能である。例え避けられたとしても、当たるまで弾丸は執拗に追っていく。


 だが、これにも欠点はある。軌道を多少修正するぐらいだったら、そんなに難しくもないのだけど、ホーミング弾のように大きく弾道を変更するには、それなりに集中力を要する。そうなると他が疎かになりやすいが、俺は何も一人で戦っているのではない。


「そんなものをライルに向けないで」


 エレミアが蛇腹剣の剣身を伸ばして俺に襲い掛かるシザーヘッドを容赦なく切り刻み、雷魔法で稲妻を落として胴体に風穴を空ける。何だか以前より魔法の威力が上がっているような…… 気のせいか?


「ライル、今度は鳥が来るわよ」


「みたいだね」


 俺もエレミアもあまり目線は動かさずに敵を捉える。俺には魔力支配のスキルで、エレミアは義眼に仕込まれている魔術の効果によって魔力を視認出来るので、大体の位置や動きが視えるのだ。


 ふぅ、今度はロック鳥か。同じ鳥ならスキュムが良い。そうすれば手っ取り早く報復が出来るからね。

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