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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十七幕】魔王討伐連合軍と反撃の始まり
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『アグネーゼ、レイチェルの具合はどう? 』


『呼吸、心拍共に異常ありません。ですが、まだ目覚める気配はありませんね』


 レイチェルが気を失いもう三日。魔力切れが原因と考えていたので、一日や長くても二日で目が覚めるだろうと思っていたが、未だに眠り続けている。


 レヴィントン砦の医務室でベッドを占領させるのも悪いし、何より何時でも容態を確認できる魔力収納の中が一番安全で安心だと思い、レイチェルを魔力収納へ入れ、細かな世話をアグネーゼが買って出てくれた。


 インファネースに戻ってきた俺は、直ぐに王妃様と商工ギルドのマスターであるクライドに連絡を取り、暫く堕天使達が運送業を休む旨を伝えた。


 商工ギルドの応接室で二人にその理由を伝えれば、王妃様とクライドは呆れたような、でも何処か納得もしているような何とも言えない表情を浮かべる。


「どうせ反対しても無駄なのでしょう? 良いわ、トルニクスの元首には私から説明しておきます」


「王妃様がお認めになるのなら、仕方ありませんね。しかし、やっと軌道に乗ってきた所を今更止める訳にもいきません。あれから着々と鳥獣人達が集まってきていますし、彼らにトルニクスまで業務を広げてもらいましょうか。その指導と引き継ぎはしっかり行って頂ければ何とかなるでしょう」


 二人には自分の我が儘で迷惑を掛けてしまう事に深く謝罪し、そしてそれでも見放さず協力してくれる事に感謝した。



 今も堕天使達は鳥獣人達へトルニクスへの航路やギルドの場所等、指導と引き継ぎを急いで行っている最中だ。タブリスとクレスの話ではまだ開戦までに時間がある。それまでに堕天使達全員を連れてレヴィントン砦へと向かい、そこの責任者のゲオルグ将軍とやらに顔合わせをして俺達を作戦に組み込んで貰わないと。勝手に参入なんかしたら向こうを混乱させてしまうのは望む所ではない。



 なので俺は今も沸き起こる怒りを抑えながらも、何時も通りに店番をしている訳で……


「デイジーさん、なんか最近のライルさん恐くないですか? 何処かと聞かれると困るんですが、怒っている雰囲気を感じるんですよ。やっぱり店の中で長時間寛ぐ私達に、とうとう腹を立てたとか? 」


「リタちゃん…… それならそうと私達を追い出している筈よ。あれはきっと別の事ね。でも、表面上何時も通りを装っているけど、内に渦巻く憤怒は隠しきれていない。彼をあそこまで怒らせるなんて、いったい誰が何をやらかしたのかしらねぇ? 」


 …… どうやら抑えきれていないみたいだ。


 スキュムとかいう魔物は確実に仕留めるとして、レイチェルが今も眠り続ける理由は何なのだろうか? ただの魔力切れならもう目覚めても良い筈だ。現にレイチェルの魔力は全快している。なのに起きてこないのは別の原因があるのでは?


『そう心配せずとも良い。レイチェルならあと少ししたら目を覚ますだろう』


『ギル…… その言葉を信じたいけど、どうして大丈夫だと? レイチェルが今も眠り続けている原因を知っているのか? 』


『ライルよ、今レイチェルに干渉している存在の気配を感じ取れないのか? 』


 うん? 干渉、だって? レイチェルは今ここで寝ているのに、干渉とは?


『やれやれ、お前も支配スキルを持っているのならその気配には敏感な筈なのだがな…… まぁ良い。レイチェルの精神に干渉している者が原因で、魔力が回復していてもまだ目覚めないのだろう』


『精神に干渉だって!? いったい誰が…… ? 』


『そんな事が出来るのは管理者達とあの御方だけ。だが、あの御方はこの世界にあまり関与する事はないので、管理者の方だな。それも闇の管理者だろう』


 管理者…… 前に何処かで聞いたような…… ?


『人間達が属性神と呼んでいる者達の事だ』


 あぁ、思い出した! 確か、この世界を創った神によって力と権能を分け与えられ、世界の管理者になったという者達だよな? っていうか、その属性神がレイチェルの精神に干渉しているだって?


『レイチェルは…… 大丈夫なんだよな? 闇の属性神に性格や記憶を弄られたりはしないか? 』


『だから心配するなと言ったではないか。落ち着いて聞け、良いか? 我々の持つ支配スキルはあの御方が直接にお与え下さったもの。故にあの御方に深く関わりのある気配には敏感になるというのに、お前と来たら何時まで鈍いままなのだ? まぁその事についてはこれぐらいにしてだな…… 干渉と言っても人の性格や記憶を変えてしまうのような事は出来ない。ただ対象の意識に語り掛けるぐらいしか出来ん』


『何故レイチェルに? 』


『さて? そこまでは皆目検討もつかん。闇に限らず、管理者達の考えは我らの理解を越えている。しかし、レイチェルに害を及ぼすものではないと言えるだろう。そこまで干渉できる権限は持っていないからな』


 という事は、今のレイチェルは闇の属性神と何かを話している?


『じゃあ、レイチェルと属性神の会話が終われば目覚めるのか? 』


『他に異常が見られないのであれば、そうなるだろうな。ただし、それが何時になるかまでは我にも分からん』


 でも、レイチェル自身に危害が無ければそれで良い。神と呼ばれる者は総じて理不尽なものだからな。しかし、レイチェルに何かあれば、世界の管理者だろうが関係なく報復するけどね。


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