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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十七幕】魔王討伐連合軍と反撃の始まり
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27

 

 何はともあれ目の前のリアムと名乗る男は、闇の勇者候補でありながら裏ギルドの暗殺者で、ギルドマスターから俺を監視するよう指示されているらしい。


「それで、そちらのギルドマスターは我が主を監視して、その後はどうするつもりなのですか? 」


 ゲイリッヒの問いに、リアムは淡々と答える。


「この数日で大まかな事は分かったのでマスターに報告したところ、その少年と話がしたいと言っている。素直に応じてくれると助かるのだが? 」


「話ですか? それは何時何処で? 」


「今すぐにでも、場所は言えないが俺が案内する」


 今すぐ? そんな近くに裏ギルドのマスターが来ているのか?


「殺しや盗みを仕事にするような奴等の言葉を信用する訳ないでしょ? 」


「俺達は快楽殺人者でも盗賊でもない、依頼の無い殺しはしないさ。ただ話をするだけだ。危害は加えないと約束しよう」


「だからそれが信用出来ないって言ってるのよ」


「困ったな…… あまり手荒な真似はしなくないのだが」


 全然困ったようには聞こえない声で、リアムはやれやれと肩を竦める。


 このまま家の中で戦闘が始まったら、母さんとシャルルとキッカを巻き込んでしまう。それに、裏ギルドに目をつけられてしまった今、断れば母さん達が暗殺の対象になる恐れもある。ここはそのギルドマスターと会って、どうにか母さん達の安全を確約したい。


「…… 分かりました。ギルドマスターと会いますので案内をお願いします」


「ライル、本当に行くの? 罠かもしれないのに? 」


「殺すつもりなら、こうして姿なんか見せずに逃げていたと思うし、どのみち母さん達の安全の為にはギルドマスターと会わなくちゃならない」


 こっちは人質を取られているいるようなものだからね。ただし、それでも母さん達を傷つけようものなら…… ムウナ、ゲイリッヒ、バルドゥイン、そして堕天使達と、俺の持てる限りの力で裏ギルドを滅ぼす。そんな気概で今回のギルドマスターとの対談に挑むつもりだ。


 俺の思いが顔に出ていたのか、エレミアはこちらをじっと見詰めては、分かったと一言呟いた。


「話は纏まったようだな。それでは案内したいのだが…… マスターは君一人だけに会うと言っている。なので他の者は遠慮して貰おう」


 裏ギルドのマスターは俺一人との会談をご所望らしい。リアムの要求にバルドゥインは言わずもがな、ゲイリッヒとエレミアからも殺気が漏れ出す。もう一気に部屋の温度が氷点下にまで達してしまったかのような錯覚に陥る。


「おっと…… そんなに殺気をぶつけないでくれないか? 俺も本気になってしまいそうだ。別に付いてくるなとは言っていない。どんな仕組みか分からないが、少年の中に入れるのだろ? それで姿を消してさえしてくれれば問題ない」


 つまりはエレミア達が魔力収納の中にいれば大丈夫って事か? しかし全部とまではいかないけど、この短期間そこまで調べられてしまったのか。


「良いのですか? 貴方のマスターが我が主にふざけた言葉を投げ掛けた瞬間、私とバルドゥインが即座に首を刎ねますよ? 」


「お好きにどうぞ…… あまり俺達のマスターを舐めないでほしいね」


 やたらと強気なリアムの様子に、ゲイリッヒは感心して魔力収納に入っていく。それに続きバルドゥインとオルトンも入り、最後まで渋っていたエレミア、そして何も考えて無さそうなアンネも魔力収納に入ると、残りは俺とリアムだけとなった。


「では、案内しよう。先ずは此処に入ってくれるか? 」


 リアムが手を向けた先には、つい先程自分が出てきた部屋の隅にある影だった。


「え? 入るって、その影にですか? どうやって? 」


 次々と現れる疑問符にもう頭がパニックだよ。


「あまり深く考えず、取り合えずそこの影に足を差し入れてみるといい。俺の言った事が理解できる筈だ」


 俺は言われるまま、恐る恐る影に足を重ねて突き出してみる。すると、足を伸ばした先には壁に当たる感触もなく、ズブスブと影に足が埋まっていくではないか!? 焦った俺は咄嗟に影から足を引き抜いた。


「どうだ? これで分かってくれたようだな。そこの影の中は人体に何ら影響はないから安心してくれて良い。さぁ、今度は全身で潜ってみようか。その先にギルドマスターが待っている」


 凄いな、闇魔法。こんな事も出来るのか…… これは実際に体験して後でレイチェルに教えておこう。


 ふぅ…… 緊張を解すように息を深く吐き、意を決してゆっくりと右足から右半身を潜り込ませ、全身を影に入れた先に見たものは―― 真っ暗な闇の中に、幾つもの光りが周囲に浮かぶ光景だった。まるで自分が宇宙空間の中に一人ポツンと佇んでいるみたいだ。


「なかなかの絶景だろ? あの光り一つ一つがこの闇への出口であり入り口だ。影移動と言って、影が出来ている所なら距離も関係なく移動できる闇魔法さ。影は至る所に発生し、その全てがこの闇と繋がっている。そこに影がある限り、俺に侵入出来ない場所はない」


 成る程、この空間から影を通して俺を監視していたのか。こんなの気付ける訳ないだろ。エレミア達はよく気付けたよな。

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