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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十七幕】魔王討伐連合軍と反撃の始まり
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17

 

 ここ最近、数人の北商店街に店を持つという人物が他の商店街に小さな嫌がらせをしてくる。


 この噂を聞き付けた北商店街代表のカラミアは自分の社員を使って調査を開始したが、首謀者どころか実行犯すらにも辿り着けていない状況である。


 そのカラミアらしくない動きに、他の商店街代表の三人はカラミアに疑いの目を向け、徐々に北商店街は孤立し始めていた。


 それを見計らったかのように、姿を眩ませていた者達が再び現れ店にちょっかいをかけ始める。





 ―― 上手く行ってるようじゃな。それで、奴等の足取りは掴んだのかの? ――


 ―― あぁ、そこら辺は抜かりない。妖精達が気付かれないように後を付けてる筈だよ――


 ―― 妖精が? 良く協力してくたわね――


 ―― あの野郎、アタシの喫茶店で好き勝手言って客に迷惑を掛けるだけ掛けていったからな。その際に妖精達もとばっちりを受けたのが余程頭にきたんだろうよ。それはもう自ら進んで力を貸してくれたよ――


 俺のマナフォンには代表達が送るメールが次々と表示されていく。今から少し前、俺は他の商店街代表達へ、直ぐ連絡が取れるようマナフォンを渡していた。メールなら声を出さなくとも良いので誰かに聞かれる心配もないし、マナフォンを知らない者からしたら、他の代表と連絡を取っているなんて思わないだろう。

 しかし、グループチャットではないので態々一斉送信するしかないのが面倒である。でもそれをするとなるとまた術式を構築して更新しなくちゃならないからなぁ。まだマナフォンを持っている人も少ないし、今はこれで十分だろ。



 ―― ここまでは順調ですね。だからと言って油断は禁物です。一人でも取り逃すと後に響きそうですから――


 ―― そうじゃな。しかしカラミアも思いきった事を考えたもんじゃ。自分の商店街を餌にするとはの――


 そう、このメールで分かるように、カラミアは孤立なんてしてはいない。敢えて向こうの作戦が上手くいっているように思わせ、隠れた奴等を再び出てくるように仕向けたのだ。


 ―― 今回ばかりは保身に走る訳にはいかないわ。あいつらがいい気になってる内に、調べられる所は全部調べておかないと…… 後は一斉に捕まえて領主様に引き渡す。私の調べでは雇われただけのようだから、録な情報は持っていないわ。それより、暫く監視して雇い主を突き止める方が重要よ――


 これまでの北商店街に関する悪い噂は全て俺達が流したものだ。それに気を良くした彼等が畳み掛けるようにまた活動を再開した。各商店には悪いけど、暫くは泳がせて誰がこんな事を企てたのか調べる方針である。


 ―― 必ず実行犯の誰かに、首謀者の使いが接触を図ろうとするわ。こんなただの嫌がらせで終わる訳ないもの――


 ―― それで、今度はそいつの後を妖精につけてもらって、その首謀者とやらに案内してもらうんだな? ――


 ―― まだ暫くは不快な思いをするでしょうけど、我慢してくれないかしら? ――


 ―― 各商店のフォローは任せて下さい――


 さて、南商店街の被害はリタの店だけではなく、酒場や宿屋にも及んでいる。俺が苦労して契約を取り付けたトルニクス産の肉を、北商店街のよりも質が劣る安物だと声を荒らげて営業妨害をしたらしい。確かに、北商店街のレストランで出しているものより等級が若干落ちるが、同じトルニクス産で質は悪くない。いい加減な事を言いやがって。店主達を思えば早く捕まえてやりたいけど、下っ端をいくら捕まえようともまた同じ事を繰り返されるだけで、ここはもう大元を絶つしかない。その為に今は我慢だ。


 漸くポイントカードも軌道に乗ってきたところなのに…… 連合軍への参加否定とか、貴族派ってのは本当に迷惑な事しかやらないな。






 それからまた数日が経過し、今俺の店に北商店街の代表を除いた者達が集まった。本格的にカラミアが孤立しているとアピールする為の演出である。



「ふぅ…… やはり帝国一の茶は上手いのぅ」


「だったら、爺さんもデットゥールから定期購入したらどうだ? 安くしてくれるよう口利きしてやるけど? 」


「いや、今は遠慮しておこうかの」


 こうして集まったは良いけど、今更話し合う事なんて特にないので、応接室は和やかな空気が流れている。外では市民や店主達が商店街の未来に不安を抱いていると言うのに。心配させて悪いとは思っているが、誰から計画が漏れるか分からないからね。知っているのは代表達とカラミアの社員だけだ。


「此方はまだ例の人が来ていますが、其方はどうなんですか? 」


「アタシんとこは、捕まえはしないが出禁にはしたな。筋違いの文句ばかりでいい加減腹が立ってさ、思いっきりぶん殴って店の外に放り投げてやったよ」


「儂の所は悪質じゃぞ。朝に取れた新鮮な魚にケチをつけられての、まぁそれは些細な事じゃからそんなに気にしとらんのじゃが、人魚さんらの店で生魚を食べて腹を壊したと騒ぐ者が出ての」


「は? そんな馬鹿な。川魚と比べれば寄生虫も少ないし、魚の扱いに熟知しているので、食中りなんて考えられない」


「じゃがな、まだ生魚に抵抗を感じる者が殆どでの。そこにあのような騒ぎを起こされてしまっては、敬遠されても不思議ではないんじゃよ。悔しそうな顔をする人魚さんらを見て、儂も心苦しい」


 しょうもない嫌がらせだと思っていたが、段々と調子に乗って悪質になってきたな。これ以上被害が大きくなる前に何とか解決したいところだけど、カラミアの方は上手くいっているのだろうか?

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