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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十七幕】魔王討伐連合軍と反撃の始まり
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12

 

 う~ん…… 海路限定に結界を張って各国の交易船の安全を確保する―― か。


 言うなれば海に道を作るということ。それは難しいんじゃないかな? マグマ付近に溜まっている魔力を利用したとしても、それほどの結界の魔道具を用意するのも、それを管理するのも大変だ。


 そもそもインファネース周辺の海中に張っている結界は魔王の影響を防ぐだけで魔物が人間を襲わなくなる訳ではない。


「そこまで求めておりゃせんよ。せめて魔王が現れる前の海に戻れば良いんじゃ」


 カウンターをキッカに任せた俺は、三人がいるテーブル席へと着いて唸る。


「ねぇ、どうにかなんないの? 聞けばサンドレアからの交易船も来れなくなっている状況らしいじゃない? 今改良しているリンスには、あの国にあるサボテンのエキスが必要なのよぉ」


 デイジーのリンスという単語を聞いた王妃様の様子が一変した。あれは本気になった目だ。


「何事も試してみないと分かりません。先ずはサンドレアとの交易を安定させる事を目指しましょう。サンドレア王と連絡を取り、交易船が通る海域を調べてそこに魔道具を仕込みます。それで暫く様子を見てみましょう」


 取り合えず試験的な意味で実行しようという訳か。


「ですが王妃様、サンドレア王との連絡はどうするのですか? ギルドの通信魔道具を利用するので? 」


 ヘバックの問いに王妃様は頬笑みを浮かべ、問題ありませんと言っては紅茶を飲む。


「サンドレア王とは独自の連絡手段がありますので、ご心配なく」


 そして王妃様は二人に見えないよう俺にウインクを送る。


 ん? もしかして俺がするの? 確かにサンドレア王になったユリウス陛下にはマナフォンを渡してあるので、すぐに連絡は取れると思うけど…… 向こうだってやっとアンデッドの支配から開放されて国を立て直そうとしているのに、魔王の出現で色々と忙しくしている所へ、いきなり連絡をしては迷惑にならないか?






 王妃様達が帰り、閉店作業を済ませた俺は、気が進まないけどサンドレア国王であるユリウス陛下にマナフォンで連絡を取る。日も落ちてきたこの時間なら多少はユリウス陛下と話せるかね? いや、新婚だからな…… 今ごろは王妃となったマリアンヌと愛を語り合っているかもしれない―― 良し邪魔してやろう。



「ライル君? こうして話すのも随分と久しいね。最近忙しいのではないのかい? インファネースの発展ぶりはこのサンドレアまで届いているよ」


「いえ、領主様と商店街の代表達が頑張っているからですよ。私なんかそれほど力になってはおりません」


 またそんな謙遜を―― とユリウス陛下は言う。この人はインファネースの事なら全て俺が関わっているとでも思ってるのかな?


「それより、今日はどうしたんだ? 何か困った事でも? 約束したからね、私で良ければ力になろう」


「ありがとうございます。実は、陛下にご助力を願いたくこうして連絡を取った次第でございます」


 俺はサンドレアとインファネースの貿易路として利用している海域に、結界の魔道具を仕込んで安全を確保するようにとの王妃様の考えを伝えた。


「それは此方としても願ってもない申し出だが、どうして此処なんだ? 自分で言うのもなんだけど、まだこの国は立て直しの最中で、他の国を優先した方が有益だと思うけどね」


「ディアナ王妃様の髪を美しく保つために、そちらの国にあるサボテンのエキスが必要なんですよ」


「なるほど、相変わらず色々と苦労しているようだね。分かった、此方としても損はない話だから喜んで協力するとリラグンド王妃に伝えて欲しい」


「感謝致します。それに伴い、ディアナ王妃様のマナフォンにユリウス陛下の連絡先を登録させて頂いてもよろしいですか? そうすれば私を通さなくとも直接話し合えますよ? 」


「リラグンド王妃にもマナフォンを渡しているのか? あぁ、構わない。それじゃあ、よろしく頼むよ」


「此方こそ、よろしくお願い致します。それでは、失礼致します」


 ふぅ…… 見知った仲でも、やっぱり一国の王と話すのは緊張するもんだね。


『何を仰るのですか、貴方様の方が優れた王であります。緊張する必要も、あのように卑下する必要もありません。対等な立場として堂々としておられれば良いのです』


 バルドゥイン、勝手に人の心を読むんじゃないよ。それに俺は自分を王だとは思っていないからな。そんな偉い人物なんかじゃないし、偉くなりたいとも思わない。


『フフ、そんな我が主だからこそ、私は使えているのです。あの御方も常々自分は王の器ではないと仰っておられました。懐かしいですね…… 』


 俺とバルドゥインの会話に、ゲイリッヒが感慨深そうに目を細めては遠くを見つめていた。


『むぅ…… このオルトン、ヴァンパイアなどに遅れを取ってなるものか! ライル様、じぶんに出来る事があれば何でもお申し付け下さい!! 』


『ありがとう。でも、インファネースにいる限り危険はないからオルトンに守って貰う必要がないんだよなぁ…… 』


『くっ! ライル様が安全に過ごされるのは喜ばしいのに、そうなるとじぶんの存在意義が…… なんと言う矛盾!! 』


 最近インファネースから出ないから、オルトンが魔力収納内で置き物となっている事に嘆いていた。あの見た目と身長で客が怖がるから店にも出せないし、仕方ないんだよ。


『気持ちは分かるぞ。オレも他の堕天使が仕事をしているなか、一人ここでのんびりと過ごしているのは何とも気不味いものだ』


『おぉ! 分かってくれるか、タブリス殿!! 』


 何か分からんけど、オルトンとタブリスが仲良くなった。

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