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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十七幕】魔王討伐連合軍と反撃の始まり
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10

 

 インファネースの奴隷商に集めた鳥獣人の奴隷登録と商工ギルドとの契約も多少時間が掛かったものの、特に問題もなく済ませた。


 予想外の人数にさしものギルドマスターも口元が引きつっていたな。


 取り敢えず鳥獣人達には暫くの間、奴隷商で寝泊まりして貰って、その間に俺は彼等の住むマンションを建てないといけない。堕天使達も運送業の先輩として指導しなくちゃならないし、これから結構忙しくなる。


 先ずは領主から鉄とコンクリートを譲って貰い、魔力収納の中で鳥獣人達が住むマンションを建てる。縦に長い高層マンションで、部屋はそんなに広くはしてない。彼等に聞いたところ、住居が広いと落ち着かないと言う。それと鳥獣人は空を飛べるので玄関だけでなく窓からも出入り出来るようベランダを少し広めに作った。


 近代化が著しいインファネースでも、高層マンションは大いに目立つ。しかも、商工ギルドが用意してくれた南地区の一角に突然現れたらインファネースの住民達も流石に怪しむだろう。なので、シャロットからゴーレムを何体か借りると、良くある工事現場にある仕切り板と足場を建て、そこに布を被せて如何にも工事途中ですよと言うようにカモフラージュをした。


 本当はもう完成間近ではあるけど、もう少し時間が経ってから布を外してマンションが出来上がった事にしよう。だからそれまで奴隷商の敷地内でマジックテントを張り、そこで暮らして貰う形になる。

 堕天使達が住んでいるのは横長の木造アパートで、三十名ならそれでも問題無かったけど、鳥獣人は今のところ七十名。しかもこの先増えるかも知れないので限られた土地を最大限に活用するには高層マンションが最適だった。


 そのアパートから休日中の堕天使が一人、疲れた顔で出てきたので鳥獣人達の働き振りについて聞くと、


「その、明るく元気なのは良いんです…… しかし、何か新しい事を教える度、その前に教えた事を忘れてしまうのは問題ですね。奴隷商の人間も言っていたのですが、何度も根気強く教えていかなければなりません。それとは逆に飛行経路は数回一緒に飛んだだけで覚えてくれます。後は業務内容を忘れさえしなければ完璧なんですがね…… 」


 鳥獣人達に仕事を教えるのは、肉体的には疲れなくとも精神的疲労が大きいようで、体力に自信がある堕天使でも疲れきっていた。これは休みを増やした方が良いのかな?



 でもまぁ、繰り返し教えていけば覚えるらしいので、鳥獣人を雇うという考えは一応成功としておこう。



「―― と、そんな訳でただ今堕天使達と商工ギルドの職員が必死になって鳥獣人達に指導している所です。一月もあれば、堕天使達がいなくとも国内は鳥獣人だけで回せるとギルドマスターが言っていました」


「そうですか…… お手数をおかけしてすみません。でも、これでトルニクスとの本格的な貿易に踏み込めます。ありがとう、ライル君」


「いえ、インファネース―― 強いてはリラグンドの為ですからね。このぐらい当然ですよ」


 王妃様に、マナフォンでここまでの経過報告をしようと思ったら、直接伺うという事で態々店までご足労頂き、応接室で俺の話を聞いた王妃様は一先ず納得してくれた。


「しかし、南地区にある建設途中の建物は目立ちますね。あれほど大きい建物は彼の帝国にも無かったと記憶しています。天高く聳える鳥獣人の住み処、完成すればインファネースの名物になりそうですね」


 まぁ百人人以上が住めるようにと設計したマンションだからね。でも、前世にあった億ションと比べればまだまだ小さいもんだよ。


「あのような土地の活用法があるとは帝国の建築物を見て知っておりましたが、ここまで高いものは初めてです。もしあれが完成して問題が無いと判断出来ましたら、他の地にも建てるのも悪くありませんね。あれなら、狭い敷地でも多くの人を住まわせる事が可能となり、インファネースの人口も増えるでしょう」


「…… ? あの、インファネースに住む人を増やしたいとお考えなのですか? 」


「フフ、これはまだ計画段階で確定してはいませんから詳しく話す訳にはいきませんが、そうですね…… 決してインファネースに不利益が生じる事にはなりませんのでご安心を」


 はぁ…… ? また何か企んでいらっしゃるようだ。この人は何れだけ先を見越しているのだろうか。でも、損にはならないとの王妃様の言葉を今は信じるしかない。



 レグラス王国にいるクレス達も問題なく防衛に励んでいるし、シュタット王国からの難民達も良い働き手としてインファネースで暮らしている。南商店街もポイントカードの導入で客も増えて、アラクネが織った布地で作る服は商人、冒険者、市民、難民、貴族、他種族にも好評だ。


 これで魔王の驚異が一刻も早く解消してくれれば言うこと無しなんだけどなぁ。


 とにかく、帝国が無事に連合軍を結成出来るよう祈るしかない。今は人類存亡の為、国と国が手を取り合い協力しなくてはいけないのだけど…… そう上手くいかないのが政治の世界である。


 貴族派の重鎮達が今なお連合軍結成について渋っていると、目の前で紅茶を飲む王妃様が疲れた声で呟いた。


 またあいつらか…… 王の決断に一々難癖つけてきてるけどさ、国を守りたいのか滅ぼしたいのか、もう訳が分からんね。王族のやることなすこと全部が気に入らないのだろうな。


 こればかりは物理で殴って解決! って訳にはいかないからね。本当に面倒だよ。

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