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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十七幕】魔王討伐連合軍と反撃の始まり
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9

 

 商工ギルドのマスターであるクライドと一対一の論議も一区切りついた所へ、エルマンから鳥獣人達を集めたとの連絡があり、トルニクスのエルマン邸まで来てみれば、庭に集められた鳥獣人達の数に思わず声を失ってしまった。


 ざっと見ただけで五十名以上はいるな。こんなに行き場を失った者達がいるのか。シュタット王国の難民達といい、戦争の被害が如何に大きいかをまざまざと見せ付けられた思いだ。


 奴隷商のバルトロが言っていたように、鳥獣人の両腕は鳥の羽のようになっているが、その先端には人間でいう親指らしきものが生えている。あれで物を掴んだり出来るようだ。髪は羽毛のようにフワフワで、腰からは鳥と同じような尻尾が伸びている。

 彼等は総じて背が低く、痩せ型である。基本、龍や妖精と同じで魔力を使い空を飛ぶ訳だが、常に飛び続けるほどの魔力量は無く、飛び上がった後は普通の鳥と同じく風や気流を利用して高度を維持するらしい。その為、少しでも体を軽くするよう余分な肉が付きにくい体質なのだそうだ。


 気を抜くとすぐに肉が付く俺としては、何とも羨ましい体質だね。


「どうですか? 集められるだけ集めてみましたが…… 」


「まさかこんなにとは思っていなかったので驚きました。ありがとうございます、エルマンさん。彼等と話しても大丈夫ですか? 」


「えぇ、どうぞ。知り合いの奴隷商と私で軽く説明はしてありますが、事情の詳しいライルさんから話して頂けると彼らも安心するでしょう」


 急にかき集めたからね、さぞかし戸惑っている事だろう鳥獣人達の視線が突き刺さる中、俺は彼等の前に歩いて行く。


「初めまして、私はライルと言います。ここにいるエルマンさんに頼み、皆さんを集めて頂きました。こうして呼び掛けに応じてくれて感謝しております。さて、もう既にお聞きしている事と思いますが、これから皆さんには私と商工ギルドが提携して行っている運送業の配達員として働いて貰いたいのです」


「う~ん…… 良く分かんないけど、住む場所と仕事をくれるって事でいいんだよね? 」


 その時、鳥獣人の少女が前に出て質問をしてくる。いや、少女に見えるけど、もしかしたら成人している可能性もある。見た目じゃ判断つかないんだよね。


「えっと、君の名前は? 」


「ロロアはねぇ、ロロアって言うの! よろしくね!! 」


 元気の良い少女だけど、服が胸と腰を隠すだけの簡素な布だから露出度が高くて目のやり場に困るな。これ絶対下着着けてないだろ。これで飛んだりなんかしたら下から丸見えだぞ…… 何かは敢えて言わないけどさ。


「うん、よろしく。それでロロアの言う通り、私は皆さんに住む場所と仕事を提供致します。なので、今からインファネースまで来てもらい、そこの奴隷商で奴隷登録をしたうえで、商工ギルドと奴隷契約を交わして頂きます」


「うん? なんでそんな面倒な事しなくちゃならないの? ていうかインファネースって何処? 」


 ロロアの疑問に他の鳥獣人達も頭を傾げている。


「まぁ、此方も慈善事業ではなく商売ですからね。奴隷商で登録されている方が信用出来ますし、その方が後々面倒な事にならないんですよ」


 それに、奴隷の証として着ける首輪には発信器となる術式が刻まれている。例え配達途中で姿を眩ませてもすぐに何処にいるか判明出来るので対処もしやすい。そう説明すると、ロロアが不機嫌そうに口を尖らせる。


「むぅ~…… ロロア達は逃げたりしないよ! ちゃんとお仕事するもん!! 」


「うん、そうだね。だけど、殆どの人は初対面でそこまで信用は出来ないものなんだよ。だからさ、ロロア達が如何に真面目であるかをこれから皆に教えてあげてくれないかな? 」


「ふぅ~ん? なら仕方ないね! 」


 ロロアに呼応するように、他の鳥獣人達もウンウンと頷いている。何て言うか、ちょろ過ぎやしませんかね? 大丈夫か、鳥獣人…… ちょっと心配になってきたな。


「んじゃ、これからよろしくね!! えっとぉ…… あんた誰だっけ? そんで何でロロア達はここにいるの? 」


 はい? さっき自己紹介したばかりなのにもう忘れたのか? え、また最初から話さないといけないの?


「大丈夫ですよ。根気よく繰り返し教えていけば彼らもそうそう忘れたりはしませんから…… それまでが大変ですけど」


 こりゃ奴隷商がもて余す訳だよ。はぁ、予定してたより研修期間は長くなりそうだ。



 それからもう一度同じ説明をして、転移結晶を使ってインファネース近くまで移動し、五十四名もの鳥獣人を引き連れて驚く門番を横目に南門を抜け、東商店街にあるフレイデック奴隷商店へと向かう。


 流石にこの人数では俺の馬車に入りきらないので歩いて行ったが、普段あまり見掛けない鳥獣人達をぞろぞろと連れているので好奇の視線が痛かったな。当の本人達はそんな視線を一切気にせず周りをきょろきょろと見回し観光気分だったけど。


 奴隷商に着くと、そこにもバルトロが集めた鳥獣人達がいるので、合わせると七十名を越す大人数となっていた。一先ずこの人数で何処までやれるか様子見だな。


 それより、この人数が住む住居を建てなきゃならないの? 魔力支配の力を使えば楽かと思ったけど、予想外に骨が折れそうだよ。


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