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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十五幕】望まぬ邂逅と魔王誕生
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「助かったぜ。後は俺達だけでも大丈夫だ」


 目が覚めたらガストールは既に起きていた。ルベルトから連絡を貰った時は本当に焦ったよ。早くしないとガストールが死ぬ、そう思ったら半ば怒鳴るようにアンネとエレミアを急かしてしまい、迷惑を掛けてしまった。


 その事で二人に謝罪したが、


「それがライルなんだから仕方ないわ」


「そうそう、いちいち気にすんじゃないわよ! 」


 と、こんな感じで一切気にも止めていなかった。有り難い限りだよ。


 ガストールの容態を確認し、俺達はウォーゼルの町に戻る事にした。エドウィン司祭に挨拶も無しに此処へ来てしまったからね。オルトン達神官騎士を残してはいるが、やっぱり一言あった方が良いだろう。それにあの町で待たせている冒険者もいる。


「クレスさん、体の調子はどうですか? 」


「うん、悪くない。ライル君の力は凄いね。あれ程の傷がすっかりと消えて元通りだよ。ライル君も無理して体が動かなくなったとレイシアから聞いていたけど、治って良かった」


 少し寝て魔力がある程度回復し、多少怠さは残るが体も動くようになったので、ずっと放置していたクレスをやっと治す事が出来た。リリィの回復魔術で命の危機は去ったけど、体中には痛々しい傷や火傷痕が残っていたので俺の魔力支配で消しておいた。


「本当に此処に残るんですか? 」


「結局、大規模討伐には参加出来なかったからね。せめて残りのリザードマンぐらいは討たないと。剣と鎧は駄目になったけど、ライル君から予備も貰ったし、帰りはガストールさん達と一緒にインファネースに戻るから、心配せずにウォーゼルの町へ行くと良いよ。エドウィン司祭によろしく伝えて欲しい」


「勿論、私達もクレスと共にリザードマンの残党を討ち取るぞ! ライル殿、今回も本当に世話になった! 」


「…… “例のアレ” はインファネースに戻るまで解析しておく」


 レイシアとリリィとも此処でお別れだ。因みにリリィの言う例のアレとは、転移魔術が施されている魔石が仕込まれたレオポルドの肋骨だ。あの崩れる巣穴の中で、ちゃっかりと持ち出していたとは…… 流石はギル、頼りになるね。


 この術式を解析出来たなら、転移場所が特定出来る。即ち、カーミラのいるあの空飛ぶ山へと行けるかも知れない。そうなれば此方から攻め込む事も可能になる。これはもう否が応でも期待せざるを得ないね。


 クレス達と、何だか妙にスッキリしたというか、吹っ切れたような顔をしたガストールに見送られ、アンネの精霊魔法でウォーゼルの町へ戻る。



「ライル様! 動けるようになったのですね!? 」


 うぉっ!? いきなり大声を出すんじゃないよ、ビックリしたじゃないか。それにしても、オルトン達はどうやって俺達の出現場所を感知しているのだろう? こうもピンポイントで待ち伏せされると怖いんですけど?


「それは…… 勘であります! 」


 …… 勘なら仕方ないか、もう深く考えても無駄だな。それより先ずは冒険者ギルドへ行こう。そこで待たせている人達がいるからね。オルトン達には先に教会へ行って、予め司祭に俺が来ることを伝えて貰う。



 俺とエレミア、アグネーゼ、アンネの四人で冒険者ギルドへと向かい、残りの皆は魔力収納でのんびりと寛いでいる。


『ふっふ~ん♪ ふっふふ~ん♪ 』


『あら? ご機嫌ね…… 何か良いことでもあったの…… ? 』


 ムウナが小さな肉塊姿を揺らしながら鼻歌に興じているのを見て、不思議に思ったのかレイチェルが話し掛ける。


『ふふ…… ムウナ、がんばった! から、ライルが、ごほうび、くれる!! 』


『へぇ、そうなの…… ? じゃあ、わたしも頑張ったからご褒美貰えるかしら…… ? 』


 え? マジかよ。お貴族様が喜ぶような物なんて一介の商人が用意出来るもんじゃないぞ? うぅ…… ムウナ、嬉しいのは分かるが余り言いふらさないでくれよ。


 レイチェルから何を強請ってくるか戦々恐々としながらも冒険者ギルドへと入る。


 さて、彼等はいるかな?


「おっ! ライル、あれじゃない? ほら、彼処のテーブル! 」


 お~い! と手を振るアンネに気付いた冒険者は嬉しそうに振り返してくれた。


「来てくれて安心したよ。これで俺達も心置きなく他へ行ける」


「お待たせしてすみません。色々とありまして…… 」


「みたいだね、噂は聞いているよ。森が半分沈んだとか、魔王が現れたとか。情報が錯綜していて要領が掴めないけど」


 まだ魔王自体確認は取れていないし、教会からの正式な発表はまだなので、噂だけが広まっている状況か。


「それよりもソルジャーアントから回収した魔核なんだけど、独断で悪いが全部換金させてもらったよ。その方が配分もしやすいと思ってさ」


「えぇ、問題ありませんよ」


 早速その場で金を受け取り、これで約束の一つは果たしたが、もう一つあったな。


「すいませんが色々と立て込んでいまして、お酒を奢ってもらう約束はまた今度で良いですか? 」


「もしかして例の噂が関係しているのか? まぁ忙しいってんなら無理にとは言わないが…… それじゃ、俺達はもう行くよ。また何処かで会う事があったら、その時は奢らせてくれ」


 俺は彼等と新たに再会の約束を交わし、オルトン達神官騎士とエドウィン司祭がいる教会へと向かった。

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