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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十五幕】望まぬ邂逅と魔王誕生
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最後の冒険2

 

 いよいよリザードマンの大規模討伐が始まった。


 上級冒険者は積極的に前へ出て、俺達中級は後ろで取りこぼした奴等を各個撃破していくだけの楽な仕事だ。


 国の兵士は当てにならねぇ。あいつらはリザードマンが国へ侵入するのを防ぐため、あの駐屯所から離れることはないからな。


「ほれほれ! 凍らせちゃうよ!! 」


「少し滑るけど、水よりはいいっすね! 」


 パッケが精霊魔法で周囲の水を凍らせ、リザードマンの動きを阻害し、そこへ俺達が攻撃を加える。


 ルベルトが風魔法の刃をリザードマンに放つが、あの堅い鱗のせいで小さな傷しか作れない。まぁ陽動としては十分だがな。


 それとは反対にグリムの雷魔法を纏わせた槍の一突きは強力で、一撃の下にリザードマンを突き貫く。


「ルベルトもグリムも魔法を使って活躍してんのに、あんたは地味だねぇ」


「うるせぇ、俺の魔法は火だからここじゃ役に立たねぇんだよ」


 そう、こんな水に溢れた湿地帯では俺が使う火魔法は真価を発揮出来ない。だからパッケが言うように、どうしても地味な戦いになっちまう。まぁ、派手に暴れたいわけじゃねぇから別に良いんだが、パッケは気に入らないようだ。


 全く面倒な妖精ではあるが、それを補う程に精霊魔法は便利で俺達の生存確率をぐっと引き上げてくれる。

 パッケ曰く、こんなに水がある所にいる水精霊は少しの魔力を提供するだけで言うことを聞いてくれるそうだ。

 妖精の言う少しはどのくらいかは分からんが、俺達人間からすれば、たぶんそれなりの量なんだろうな。妖精の持つ魔力は人間を遥かに凌ぐ、そしてそれを更に凌ぐのがライルの魔力だ。そう考えると日頃パッケがライルのことを “魔力お化け” と呼ぶのも頷ける。



 ルベルトがリザードマン達を攪乱し、パッケが足下にある水を凍らせ動きを封じ、俺とグリムが堅実に一匹ずつ仕留める。


 俺達の周りにいる冒険者もそれにあやかり、パッケが凍らせて身動きが取れなくなっている他のリザードマンを倒している。


 そんな感じが終日まで続き、日夜交代でリザードマンと戦う日々。しかし、日を追うごとに奴等の数が増えてる気がするのは俺の気のせいか?


「なんか、初日より増えてない? 」


「あ、パッケもそう思うっすか? オレっちもそんな気がしてたんすよ」


 どうやら俺だけではなかったようだ。


『これはどう考えてもおかしい。ここ最近のリザードマンは攻めると言うより逃亡しているみたいな必死さがある』


「グリムの兄貴、それはどういう意味っすか? 」


「つまり、こちら側へ逃げなければならない状況にある訳だな? まぁ誰から逃げているかは大体予想出来るがな」


 俺の言葉にルベルトとパッケが揃って首を傾げる。おい…… ヴェルーシ公国側に誰がいるのをもう忘れたのか?


『特級冒険者がリザードマン共を追い詰めている証拠だ。もしかしたらもうリザードマンキングを討ち倒しているかも知れないな』


 だと良いがな…… ルベルトとパッケはきっとそうだとはしゃいでいるが、希望的観測ってやつは録な結果を招きやがらねぇ。油断は禁物ってことだ。


 此方側にくるリザードマンの数が増え、苦戦を強いられ次々と倒れていく冒険者達。駐屯所にある診療室はもう入れずに宿舎まで使われる始末。


 ちっ、前の奴等は何してやがるんだ。この惨状につい舌打ちしてしまう。たぶんリザードマンが尋常じゃないほどの数で来ているのだろうが、イラつきを抑えられねぇ。


 俺達も他の冒険者も疲労が溜まり、いつ終わるか知らない戦いに不安と不満が溜まっていく。




 そしてついに最悪な状況に陥りやがった。くそったれが…… 可能性はあったが、限りなく低いと思っていたんだがな。


「あ、兄貴、この巨大で凶悪な見た目をしているリザードマンって…… 」


「あぁ、リザードマンキングに間違いないだろう。よりによって俺達の所に来るとはな…… 」


 通常のリザードマンの倍以上ある体躯に、閉じていても鋭い牙が覗く口、自分以外は全て餌だと言わんばかりの視線を俺達に向けてきやがる。奴からは圧倒的強者の気配が漂っている。


「結構ボロボロで弱ってるようにも見えるね。こんならあたし達でも勝てんじゃね? 」


 パッケが言うように、リザードマンキングの鱗は所々剥げ、血が流れて下に広がる水が赤く染まっている。


『恐らくだが、噂の特級冒険者から逃げてきたのかも知れない。どうする? このまま奴を逃がしたら、確実にリラグンド王国に入られてしまう』


 ちっ、言われなくとも分かってるぜ。したくねぇが、ここはオルハルコン級が来るまでこの死に損ないのリザードマンキングを足止めする必要がある。


「おい! 英雄様が追い付くまで、ここで出来るだけ時間を稼ぐぞ!! 嫌なら逃げても構わねぇぜ? 」


 ちらほらと他の冒険者が逃げているのが見える。そりゃそうか、結局は自分の命が何よりも大切だからな。あいつらを責めるつもりは微塵もない。


「兄貴がやるって言うんなら、オレっちはついていくっす! 」


『お前を置いて逃げる訳ないだろ? 分かりきった事を聞くな』


「へぇ、これがリザードマンキングかぁ…… 本当は駄目なんだろうけど、あたし一人なら問題ないよね? ここはいっちょ、やってやんよ! 」


 へっ、それでこそ俺のチームだ。なに、パッケの精霊魔法もある。そう簡単にはやられねぇだろう。


 しかし、前のオーク大規模討伐もオークキングと遭遇しちまって危ない目に遭っちまったな。まったく、ツイてねぇぜ。

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