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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十五幕】望まぬ邂逅と魔王誕生
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 空洞に冒険者達を待機させ、俺達は目的の中央部に向かい、地図の空白地帯を埋めていく。


 分かれ道、行き止まり、そして狭い通路での魔物達による襲撃を経て、漸く見えてくる光苔の明かり。


 魔力を視てみれば、沢山の魔物が俺達を待ち構えているのが確認できる。


 この魔力反応は、アサシンスパイダーにジャイアントセンチピードル、ボマーアントとグラコックローチまでいるよ。


 ここで一旦アンネの精霊魔法で拠点に戻り、繋げた空間を維持したまま、待機していた冒険者に持ち帰った情報を伝える。それを聞き意気揚々と武器を持って準備を始める冒険者達。臆した様子は見られず、皆やる気は十分だ。


 そして、ぞろぞろと空間の歪みを通って空洞手前の通路まで移動した者から順に、魔物が待っている空洞内へと走り出す。


 待機中に各々の取り分について話し合った結果、いくつもの案が出たが、結局シンプルに早い者勝ちというのに収まったそうだ。


 連携もなにもない数によるごり押しだけど、昨日今日会ったばかりの者達と満足いく連携なんか取れる訳もなく、却って動きづらくなってしまう。ならいっその事、各グループが最低限相手の邪魔にならないよう好きに動いた方が効率も良いと判断したらしい。因みにその判断を下したのが、あの先見のグランだと言う。本人は自分に相応しくない呼び名だと忌避している。堂々としていればいいのに、そんなんだから仲間達にからかわれるんだよ。



 空洞内は魔物と冒険者でてんやわんや。でも意外と皆其々の領域を尊重しあい、衝突を避けている。どんな状況でも戦闘を強いられる冒険者ならではだね。


 魔法と魔術が飛び交い、剣の振るう音と冒険者の怒声が空洞に木霊し、次々と魔物を仕留めていく。俺達が出る余裕がない程に、それは圧倒的で何のピンチも無しに魔物を殲滅していた。


 ジャイアントセンチピードルの弱点を上手くつき、比較的柔らかい箇所を正確に狙う。グラコックローチには範囲攻撃に適した魔法と魔術、アサシンスパイダーには気配察知に優れた者達が奇襲を防ぎ、ボマーアントは近付かれる前に弓で腹部を射って爆発させ周りの魔物を巻き込み、トリモチのような体液に身動きが取れなくなった所へ止めを刺す。


 皆魔物との戦いに熟知していて行動も似ているから、自然と連携が取れているようにも見える。そりゃ細かい打ち合わせは必要ない訳だ。正にテンプレに沿った戦い方というやつだ。


 勿論、俺達もただ見ているだけではない。冒険者達の戦いを参考にエレミア達が次々と魔物を仕留めていく。やっぱり慣れている人の戦闘は勉強になる。クレス達も一応冒険者ではあるけど、殆どが光魔法で片がつくからあまり参考にはならない。



 でもこうして此方も数を揃えると、たいぶ戦闘に余裕が生まれるな。しかし、ムウナやタブリス、レイチェルが魔力収納から出てこれなくなるのは厳しくもある。アンネなら突如現れても妖精だからと言い訳できるが、人が出てきたら流石に怪しまれる。特にグランには何か気付かれてしまいそうだ。


 今はまだ魔力収納やムウナ達を公にはしたくない。唯でさえキング種の出現で世界は荒れ、魔王誕生も近いというのに、これ以上混乱の種を撒きたくはないからね。


『むぅ…… ごちそう、いっぱい。でも、がまん』


『まぁ、オレ達が出なくとも問題はないな』


『せっかくの他国なのに、つまらないわね…… でも、虫の魔物達を観察して新しい闇魔法の着想が得られたから、それなりに満足しているわ…… 』


 魔力収納内では、外に出られず退屈しているレイチェル達がのんびりとお茶をしている。どんな状況になろうとも魔力収納の中は平和そのもの。まったく羨ましいね。それからムウナ、ごちそうってのはあの虫達の事か? もしかして、虫の味に結構はまった感じ?





 今まで苦戦していたのは何だったのか…… 危なげもなく呆気ない戦闘の終わりに、やはり数は重要だと実感する。


 冒険者達が手早く魔物の解体した後、アンネの精霊魔法で臨時拠点から荷物を此処へ移して新たな拠点とする。


 これを何度か繰り返し、今日の探索は終了。ずっと巣穴の中にいるので時間の感覚が掴めない。頼りになるのは時計だけ。


 空洞内で初めての泊まり込みで些か不安はあるが、そこはエレミア達の美味しい料理で気を紛らわせる。時々、料理の匂いに誘われて魔物が寄ってくるが、結界によって弾かれて中には入ってこれない。


 よしよし、ちゃんと結界は仕事してくれているな。これなら安心して眠れそうだよ。冒険者達もそう思ったのか、全体の緊張感が少し和らいだ気がする。


 それでも見張りを立てて一晩を過ごし、冒険者達が待機している中、俺達は奥へと向かって出発した。


「さて、本当にこの先でインセクトキングがいれば良いんだけど…… いなかったら丸っきし時間を無駄にした事になるよ」


「大丈夫です、ライル様。絶対にインセクトキングはいます。そんな予感するのです」


 オルトンの直感力はグラコックローチの一件で、大分信憑性があると証明されているからな。ここは信じてみよう。



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