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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十五幕】望まぬ邂逅と魔王誕生
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 三つある巣穴の入り口から伸びる道は、全て地図上の中央に広がる空白部分へと続いている。俺達と冒険者達は此処にインセクトキングが潜んでいる可能性が高いと踏んで調査を開始するがこの五日間、思うように進めずいた。


 もう通路だろうが空洞だろうがお構いなく襲ってくる魔物達によって、巣穴攻略は滞っている。


 これは不味い、カルカス湿原のリザードマン大討伐もかなり状況は進行している筈。もう冒険者達と俺達の目指す場所は同じなのだから、個々ではなく同時に動く必要がある。


「それで俺達が呼ばれたって訳か…… 」


 今俺のマジックテントにはクレスとオルトンの他に、あの冒険者―― 名前は確かグランと言ったっけ? ―― と他の冒険者グループのリーダーが数人集まっている。



「我々の目指すべき場所は同じ。しかし、既に各々だけでは進めない領域に達している。そこで諸君らに提案したい事があって、こうして集まって貰った次第だ」


 グランは俺達の様子を観察するように見詰めると、徐に口を開いた。


「大体は予想出来る。つまりは俺達と一緒に巣穴へと潜り、一つの道から一点集中してこの中央に攻めるんだろ? 」


 おぉ、話が早くて助かるね。


「概ねその通りです。具体案を説明しても? 」


「あぁ、頼む」


 他の冒険者達も肯定の意味を込めて首肯くのを確認した俺は、細かな説明をする前に先ずは彼等に紹介しなければならない者がいるので、そこから始める事にした。


「最初に皆さんへ紹介したい者がいます。その者こそ、今回の作戦の要となる重要な存在です…… アンネ、出てきてくれ」


「あいよ! どもども、先程ご紹介にもあった重要人物のアンネちゃんだよ~! 」


 魔力収納から突如現れた妖精のアンネに、グランを含めた冒険者達が目を丸くする。魔力収納を知らない彼等には、アンネが何もない空間から出てきたように見えたので、さぞ驚いたことだろう。


「巣穴で妖精に町まで送って貰った冒険者がいると噂で聞いていたが、本当だったのか…… 」


 うん? それってもしかしなくても、ソルジャーアントに襲われていたあの冒険者達の事かな? まぁ別に口止めもしていなかったので良いんだけどさ。そう言えばお酒を奢ってもらう約束をしていたな。この件が片付いたら町の冒険者ギルドを訪ねてみるか。


「アンネは精霊魔法で空間を繋ぎ、記憶にある所なら、どんなに遠く離れていても瞬時に移動できる術を持っています」


 それを聞いた冒険者達はまたもやざわつく。しかし、グランだけは何やら難しい顔を浮かべて思案しているようだった。


「確かに便利ではあるが、俺達が進めない原因は魔物の妨害によるのが大きい。まさか此方も数で押し切ろうなんて考えではないんだろうな? 」


「簡潔に言えばそうなります。アンネの精霊魔法で俺達が今進めた空洞まで貴方方を連れて一気に移動し、そこでテントと結界の魔道具を設置して一時的な拠点とします。そして通路を通り次の空洞へと進み、そこを制圧した後、今度はそこに拠点を移し少しずつ先へと進んでいく算段です」


 もう野営地に戻る余裕はなく、ここいらで強引にでも確実に進んでいくしかない。結局のところ、数で苦戦している訳だから此方もその分人を増やそうという話である。


「空洞での戦闘ならそれで問題はないけど、あの狭い通路をこの大人数で進むのは無理があるぜ? だから俺達は少数で巣穴に潜っている訳だし、そこはどうするんだ? 」


「先ずは俺達が空洞まで先行します。途中の魔物襲撃は此方だけでもなんとかなりますので。問題は空洞で待ち構えてる魔物の集団です。奥へ進む程多くなる魔物には、そろそろ対処が追い付かなくなってしまい、非常に時間が掛かってしまいます。そこで、空洞の明かりが見えた時点で、アンネの精霊魔法を使って臨時拠点にいる皆さんを安全に次の空洞まで送ります」


「それなら俺達はあの通路内で襲われることなく、万全な状態で挑めるって訳か」


「勿論、空洞内にいる魔物を皆さんだけに押し付けることはしません」


 流石にそれは気が引けるからね。


「食料等の物資はその妖精がいれば何時でも外から補充できる。俺達はずっと巣穴に籠っていられるのなら、確実に今までより速度は上がるよな。おまけに移動中の危険は皆無に等しい。正に至れり尽くせりってやつだ。都合が良すぎて逆に不安になるが、この話に乗らない選択肢はない」


「では、協力して頂けるので? 」


「悪いが今この場では返答出来ない。仲間と相談して来ていいか? 俺の一存で決めていい話じゃないからな」


 それもそうだ。他の冒険者達も皆同じようで、取り合えず一旦持ち帰ってもらい、俺達の提案を受ける者だけが明日またここに集まるようにお願いする。


「さて、どのくらいの人達が来てくれるのかな? 」


 テントから出ていく冒険者達を見送りながら、クレスは微妙な表情をしていた。期待半分って顔だね、その気持ちは分かるよ。もし明日、誰も来なかったらどうしよう。


「ご心配なく。そうなれば我等神官騎士が総出で攻め込むまでです! 」


 いや、守りだけ固めてもねぇ? 心強くはあるんだけど、それだと少し攻めが弱い気がするんだよ。


 冒険者のように日頃から魔物の相手をしている人達と力を合わせれば、きっとこの空白となっている中央部分に到達できる。


 インセクトキングまで辿り着けるか否か、全ては明日の結果次第だな。

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