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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十五幕】望まぬ邂逅と魔王誕生
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 時間は掛かったが、エレミア達の魔法とリリィの魔術によってアリ達を撃破した俺達は、少し休んでから先へと進み始める。


 途中、アサシンスパイダーの強襲もあったがこれを撃退し、ポイズンピルバグズとボマーアントと呼ばれる中型犬程の大きさで異様に腹部が膨らんだアリがいる空洞へと辿り着き、何とかそれも突破した。


 いやぁ、大岩のようなダンゴムシが沢山いたのには驚いたが、あのボマーアントは厄介だった。奴等は素早い動きで此方に近付いて来たと思ったら、いきなり腹部が破裂して中から粘着性のある体液を撒き散らしてくる。まるでトリモチのような液体で足が地面に固定された所を、ポイズンピルバグズの突進が襲ってくるというコンボが炸裂して、危うく轢き殺されるかと思ったよ。


 当然、爆発したボマーアントはそのまま死んでしまうが、そんな事などおかいまく、奴等は次々と俺達の周りで爆発しまくり、周囲はベトベトの体液まみれ、もうやりづらいったらなかったね。


 前情報にあった通り、奥に進めば進むほど敵の攻撃が激しくなっていく。成る程、これなら巣穴の攻略が滞るのも納得だ。こんな場所では人数は限定され、食料が尽きたら地上まで戻らなければならない。アンネの精霊魔法のように瞬時に戻れる術がないとここは厳しいだろうな。


 冒険者達の為に転移門を設置するのも良いけど、逆に利用されそうで危険だし、何とか彼等だけが地上に戻れるような魔道具でも作れないものか。


『確かに、そんな魔道具があればここの攻略速度がぐんと上がるわね…… 後でリリィに相談してみたらどう? 』


 そうだな。それほど時間を掛けずに作れる物だったら作成して冒険者達に配るのも良いかも知れない。まぁ、それは追々リリィと相談するとして、今は先に進む事を優先しよう。


 そして何回目かの空洞を抜けると、遂に俺達は地図に書かれていない箇所まで到達していた。


「此処から先は地図にも乗っていないので、今まで以上に慎重に行きましょう」


 オルトン達神官騎士とレイシアが目を光らせ、リリィが地図に新しい道を書き足していく。


 そうして暫く歩いていると、空洞の灯りが見えてくる。と、その時、突然オルトンが歩みを止めた。


「どうかしましたか? オルトンさん」


「ライル様…… 何やら嫌な感じがあの空洞から漂ってきています」


 兜で顔色は分からないが、その目は警戒の色で染まっていた。オルトンをそこまでにする何かがあの先で待っているという事か。


「どうする? ここは一旦戻って体勢を整えるか、このまま突入するか」


 クレスの言葉に俺は悩む。とにかくもう少し近付いて、空洞の中の魔力を確認したい。それで中にいるのが大体分かるから、それから判断しても遅くはない筈だ。


 そうして確認した魔力は、数こそ今までと比べて格段と多いが、一つ一つは小さなものでそこまで驚異とは思えない。どうしてオルトンはそんなに警戒しているのだろうか?


 これなら時間は掛かるかも知れないが、俺達だけでも突破できるのでは?


 そう思った俺達は空洞へと足を踏み入れる。あの時、オルトンの本能とも言うべき警告に従っていたならば、あの恐怖を回避出来ていたのにと後で後悔する羽目になるとは、この頃の俺達はまだ知らない。




 わしゃわしゃ…… 地面に、壁に、天井に、びっしりと張り付いているその物体に、俺は理性を失いかける。




 で、で、出たぁぁあぁぁ!!! 遂に出やがった、グラコックローチ!! 艶々したボディにカサカサと動く足、そして生理的嫌悪感を誘うその見た目! あの黒い悪魔をそのまんま大きくしただけじゃないか!? どうしてそこで異世界らしくちょっとした変化を加えなかった? 止めてくれよ、気持ち悪い!


 ちくしょう! オルトンの感覚を信じて帰れば良かった!


 でも、もう遅い。奴等は既に俺達を獲物として狙いを定めている。今からアンネの精霊魔法で逃げたとしても、何匹か外までついてきてしまう。こんなの一匹たりとも外に出したくない!


 ふと、周囲が静かだと思い見回してみると、案の定皆言葉を失い立ち尽くしている。こいつの気持ち悪さは異世界でも共通しているようだ。


 アグネーゼなんか真っ青な顔して今にも倒れそうだよ。


「ハッ!? い、いかん! 急いで結界を張るんだ! 」


 いち早く我に戻ったオルトンの指示で、神官騎士達は慌てて結界を張る。それと同時にグラコックローチがあのG特有の動きで素早く襲い掛かってきては、結界にビタリと張り付いてくる。


 い、いやぁぁあぁぁぁ!! 裏側がハッキリと見えて、もう気持ち悪過ぎて全身に鳥肌が!


『ムウナ! 頼むからこいつらをどうにかしてくれ!! 』


『わかった! ムウナに、おまかせ! 』


 まともに奴等を見たくないので、全部ムウナに丸投げだ。こんなとき凄く頼りになるよな。


 魔力収納から飛び出たムウナは、その勢いのまま結界の外へ。そして体中から触手を生やし、迫り来るグラコックローチを捕まえては補食する。


 うえぇぇ…… 目を閉じてもムウナのグラコックローチを食らう咀嚼音が聞こえてきて想像しちゃうよ。もっと静かにお食事してくれませんか?


「う~ん…… そとはバリバリ、なかはネチャネチャ? 」


 止めろ! そんな汚ない食レポは聞きたかないよ!?

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