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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十五幕】望まぬ邂逅と魔王誕生
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「魔物の種類はどうなんですか? 冒険者達から何か情報は? 」


「そうだね…… 巣穴ではソルジャーアントにアサシンスパイダー、ポイズンピルバグズ、それとジャイアントセンチピードル。森ではマーダーマンティスと畑や農場を荒らしているサーヴァントフライが確認されているよ」


「…… クレス。忘れてはならない奴、グラコックローチの存在は無視出来ない。あれは一匹見付けたら百匹はいると言える程の繁殖力に、その凄まじい食欲で町一つ容易に滅ぼせる。この町がまだ無事なのは奇跡に近い」


 巣穴を広げているのはそのソルジャーアントだろうな。それに蜘蛛とダンゴムシ、前にも相手をしたムカデ。森には蟷螂、移動中に見掛けていた虫の魔物は蝿だったのか。そして出ました黒光りするアイツである。名前からしてそうだしリリィの説明で確信した。やっぱりこの世界でも猛威を振るっているようだ。


 そんな奴等が近くの巣穴にいるというのに、まだ町に被害がないのはおかしいとリリィは言う。


「それともう一つ不可解な事を聞いてね。なんでも、魔物達は巣穴に進入してくる者には容赦なく襲ってくるんだけど、撤退していく者には追撃を加えないそうなんだ。まるで興味を無くしたかのように何もしてこないと冒険者達が言っていたよ」


 この話で町や人間を襲ってこないのは意図的なものだとほぼ証明したようなもの。ここまでにくると何かしらの明確な目的があるのは確定だな。


 其々の魔物の特徴や弱点等を聞き対策を講じていると、気づくけばとっぷり日が沈み、窓から見える外は暗くなっていた。


「大体の事は決まりましたので、今日はここまでにしましょうか? 引き続き各自情報収集をして、明後日には出発できるよう準備を済ませておいて下さい」




 その後、目新しい情報もなく時間は過ぎていき、いよいよ森へと向けて出発する日となった。


「ライル様。我等四十名、出立準備は整っております」


 町の門前に並ぶ神官騎士達の姿は壮観であり、なんとも言えない迫力がある。


 クレス達とも合流して町を出る訳だが、四十人からなる馬に乗った騎士の行列はけっこう目立つようで、外にいる住民と冒険者が何事かと驚いているのが馬車の中から見える。


 神官騎士達を連れて進むこと数時間。森付近に到着した俺達は、森へは入らずに野営の用意を始める。森の中は見通しが悪くて不意を突かれる恐れがあるらしい。


 神官騎士達が木を切り倒し、それを俺が魔力支配のスキルで加工して柵を立てる。その中でマジックテントと結界の魔道具を設置すれば概ね完成だ。


 高い柵に囲まれた中にテントが複数並ぶ光景は、小規模な村のようにも見える。


 朝から出発して町からここまで来た時には昼近く、野営の用意を済ませた頃には日も沈みかけていた。今日はもう森には入らない方が良さそうだな。


 エレミアとアグネーゼが夕食の準備をしている中、俺とオルトン、それにクレスの三人はテントの中でこれからの事を話し合う為に集まった。


 因みにリリィとレイシアとレイチェルは、エレミア達の手伝いをしている。神官騎士だけで四十人もいるから食事の用意も大変だね。



「それで、何処から入りましょうか? 」


「何処も進行具合いは似たようなものだから、予定通り近い所から入ろうと思うけど、どうかな? 」


「異論はありません」


 巣穴への入り口は判明しているので三つ。ギルドから買った地図を見る限り何処から入っても、未踏の所までの距離は同じ。それなら近い方を選ぶのは当然と言える。


「ところで、神官騎士というのはどの様な魔法が使えるのですか? 」


「はい、神官と同じように回復や浄化魔法は勿論の事、神官騎士には結界魔法を神から授かっております」


 結界魔法―― 名前の通り結界を張る魔法で、攻撃を防いだり逆に敵を閉じ込めたり出来るらしい。攻撃魔法は一切なく守りに特化している感じだ。これから行く巣穴のような動きを制限される場所には頼もしい。




 野営地で一晩過ごし、クレス、レイシア、リリィ、それとエレミアとアグネーゼに、オルトンを入れた十名の神官騎士達を連れ立って森へと入る。


『これだけいれば道中我の出番は無さそうだな』


『ま、ピンチになったら助けてあげっから、それまでのんびりと蜂蜜酒でも飲んでよっと』


『ムウナ、むし、たべたい! 』


 ギルは暢気に構え、アンネに関しては蜂蜜酒を飲み始める始末。ムウナは興味本位で虫の魔物を食べたいだけ。まったく、頼りになる仲間達で嬉しくって涙が出てくるよ。


 でも、ムウナなら巣穴でも触手を使ってれば他の人達の動きを阻害することなく補食出来そうだ。


『申し訳ありません、我が主よ。私も外に出てお守りしたいのですが、ヴァンパイアである私が姿を現せば神官騎士達との関係に軋轢が生じる恐れがあります』


『それは仕方ないよ。ゲイリッヒには何時も世話になってるからね、インセクトキングへと辿り着くまでゆっくりしてるといいさ』


『勿体なきお言葉…… では、ご厚意に甘えさせて頂きますが、我が主に危険が迫るような事あれば、何を差し置いてでも御身をお守り致します』


 ほんと、ゲイリッヒの配慮には脱帽ものだよ。俺達の中で一番の戦力であるギルとゲイリッヒには、インセクトキングとの戦いに備えて力を温存して貰わないとね。

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