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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第一幕】望まれぬ子
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3

 

  魔力の魔法や魔術以外の使い道、何故それを考えたか、俺だって若い時はマンガやアニメくらいは観ていたんだよ、その中でファンタジー物もある。

  それにはもちろん魔法もあったが魔力そのものを使って何か色々とやってた気がする。

  同じような事ができるかもしれないので試そうかと思う。


  先ずは手を使わず魔力で物を動かす、これが出来れば食事も風呂もトイレも自分一人ですることが可能になる。

  これは最優先事項である。さすがにこのままでは危険だ、主に俺の精神的に。 


  俺は体から魔力を出す、一度成功したからだろうか、スムーズに出す事ができた。

  そして魔力を触手の様に伸ばし椅子へと近づけそのまま掴もうとしたが、すり抜けてしまい一ミリも動かせなかった。


  う~ん……魔力は物質を透過するのか、魔力で物を掴むのは無理そうだな、今度は椅子全体を魔力で覆ってみよう。


  しかし、あまり手応えは感じない。やっぱり魔力は魔法や魔術以外では何も出来ないのか?

 

  ん?なんだ……魔力が椅子に……まるで染み込んでいくみたいだ。


  覆っていた魔力の一部が椅子の中へと入っていったその時、俺の頭の中に何かが流れ込んできた。


  なんだ?これは……情報……か?この椅子の?使われている塗料や付着している細菌まで解る。またあの不思議な感覚だ、それによって理解した……いや、理解させられたと言った方がいいのだろうか。

 

  俺は今、この椅子を完全に“支配”している。


  支配には色々な意味はあるがこの場合は俺の意のままに動かす事ができる。すなわち最優先の目標を達成したと言っても過言ではない。


  では、さっそく動かしてみよう。先ずは椅子を手前に少し引く。この時、力加減を間違えたみたいで勢いよく椅子がぶっ飛んできた。

  ぎりぎりで躱したけど危なかった、なかなか難しいぞこれは、練習あるのみだな。

 ・

 ・

 ・

 ・

  ここ数日は、物を動かす練習ばかりしている。椅子を始め、様々な物を動かした。


  対象の質量に比例して必要な魔力量が変わるみたいだ。しかし、本当に便利だなこれは。

  動かすだけでなく、空中に浮かべたりもできる。調子にのって椅子に座ったまま空中遊泳して遊んだりしてたら魔力切れで倒れそうになってしまった。

  また一つ学んだな、魔力切れは危ないと。


  クラリスにはこの事は伝えてある。驚くかと思ったけどそんなことはなかった。


  「確かに、魔力でそのような事ができると聞き及んでおります。盲点でした、ライル様にはとても有用な手段ですね」


  俺は魔力を使い、自分で夕食を食べながら話しを聞いていた。


  「あまり一般的ではないんだ?」


  「そうですね、ライル様の前でなんですが………わざわざ魔力を使わずとも物を運ぶくらいは出来ますし、魔法や魔術、魔道具なんかに使いますね」


  「そっか………確かにその方が効率的だよね……」


  少し舞い上がっていたみたいだ、そりゃそうだよな……他の人は普通に運べばいいだけの話しだもんな…、俺と違って両腕があるのだから。

  だけど無駄だとは思わない。漸くこれで皆と同じスタートラインに立つことができたと思っている。

  だいぶ出遅れたけどね。ここからなんだ、ここからやっと始まる。


  「申し訳ございません、ライル様。私の言葉で不快な思いをさせてしまい……」


  俺が思案に耽っている顔を見て、機嫌が悪くなったと思ったのか、クラリスが謝ってきた。


  「ううん、謝ることはないよ。クラリスのおかげでもっと頑張らなきゃなと気が引き締まったよ、ありがとう」


  「ライル様………私も全身全霊お手伝い致します」


  「うん、いつも頼りにしているよ。でも、ほどほどにね」


  「はい、ライル様もほどほどにお願い致します。無理だけはなさらないように」


  「まぁうん、善処します」

  ・

  ・

  ・

  ・

  あれから一週間が過ぎ、ついに今日、こちらが雇った家庭教師がやって来る。

  たしか、現役の魔術師だったな。どんな話しが聴けるか楽しみだ。

 

  自分の部屋でそわそわしながら待っていると、ノックの音が部屋に響いた。


  「失礼します。家庭教師の方をお連れ致しました」


  クラリスがそう言って扉を開け、家庭教師を中へと案内した。

  部屋へと入ってきたのは年若い青年だった。

 

  青年は俺の姿を見て一瞬目を見張ったがすぐに普段の顔に戻った。

  俺のことはあまり聞いていなかったのかな?でもすぐに何事もなかったように取り繕うのは流石だ、第一印象は悪くない。とても誠実そうな人だな。


  「ライル様。こちらが魔術師のアルクス様でございます」


  「こんにちは、ライル君。アルクスです、よろしくお願いしますね」


  「はい、ライルです。こちらこそよろしくお願いします」


  お互い自己紹介を済ませ、クラリスは部屋から出ていった。

  今、この部屋には俺とアルクスさんの二人だけだ。


  「さて、ライル君。さっそく始めようか」


  「はい!よろしくお願いします。先生」


 

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