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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十五幕】望まぬ邂逅と魔王誕生
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34

 

 此方へ向かって来ているリザードマンは計六体。その内の一体が先頭にいるレイシアへと攻撃を仕掛ける。


 瞬時にレイシアは左腕に装着している逆三角形型のスモールシールドに魔力を通すと、盾に仕込まれたマナトライトが拡がり、レイシアの身を隠す程のタワーシールドへと変貌した。


 突如現れた大きな盾にも怯まず、リザードマンは鋭い爪を降り下ろすが、レイシアのタワーシールドに防がれてびくともしない。


「ふん、なんのこれしき! サンドレアで出会ったドワーフのヴァンパイアの一撃と比べれば大した事もない!! 」


 そのままタワーシールドを前に突き出し、リザードマンの体勢が崩れたところにレイシアが剣で胸を突き刺すが、固い鱗のせいであまり深くは刺さらなかった。


 警戒したリザードマンは、すぐにレイシアから離れて様子を伺うようにゆっくりと距離を詰めてくる。生半可に知能が高いから結構戦いづらそうな相手ではあるな。


 他のリザードマン達はレイシアの戦う様子を見て、一番弱そうな見た目をしているリリィとレイチェルに狙いを定めて走り出す。


「む? そうはさせんぞ! ウオォォォ!!! 」


 激しい雄叫びと共に、レイシアから魔力が溢れ出す。その声と魔力にリリィとレイチェルに向かっていたリザードマン達が思わず振り向き、小さな隙が生じたのを見計らったクレスが光魔法を纏わせた剣でリザードマンの一体を袈裟斬りで切り裂く。


 成る程、その声と魔力でリザードマン達の意識を一時的に自分の方へ誘導したのか。レイシアも盾役として成長しているようだ。


 すかさずリリィの魔術で発現した複数の氷の杭が空から降り注ぎリザードマン達に襲い掛かる。見た目ダメージはそんなに食らっているようには思えないが、氷の杭が突き刺さった箇所からリザードマンの体が凍っていき、動きが鈍くなっていく。


 そう言えば爬虫類って変温動物だから寒い場所では動きが鈍くなるって聞いた事がある。あれ? でもそれってたしか科学的に正しくはなかったような? ただ単純に凍って動きづらくなっただけか。


 そこへレイシアとクレスが近くのリザードマンを切り伏せ、残りは三体。


 数ではリザードマンが若干有利ではあったが、あっという間に半分にまで減らしたな。ゲイリッヒとタブリスに警戒してもらっていたが、無駄に終わりそうだ。



 体に張り付いた氷を無理矢理に剥がした三体のリザードマンが再びリリィとレイチェルに向かって走り出す。


「おっと、それは駄目だよ」


 クレスは光をその身に纏い、光速でリザードマンの首を切り落とす。そのまま残りの二体もと体勢を整えた先に見たものは、黒い縄のようなものに足を取られて転倒するリザードマン二体の姿だった。


「次はわたしの番ね…… 」


 微笑を携えたレイチェルがそう呟くと、前のめりに転んだリザードマン二体の頭上に黒い靄が掛かり、その中から筋骨隆々な馬の脚が現れてはリザードマンの頭部を踏み潰す。


 うわぁ…… これはひどい。闇で作られた馬の蹄に潰されて、リザードマンの頭はもう見るも無惨な事になっている。あの馬の脚ってもしかしなくてもルーサのを参考にしたよね?


『どう? 兄様。わたしの闇魔法は…… 』


『えっ? あ、うん。凄く上達したんじゃないかな? 吃驚したよ』


 そんな俺の言葉に気を良くしたのか、レイチェルの顔が綻んでいるけど、隈が濃いうえにその鋭い目つきでは悪役が何か企んでいるようにしか見えない。


 しかし、魔法はイメージと言うけれど、闇魔法の自由度は他の属性と比べてかなり高そうだ。使い手が稀少なのも頷ける。


「闇魔法…… 噂では聞いてはいたけど、実際に見たのは初めてだよ。これ程の威力だとはね」


「うむ! だが、クレスの光魔法も負けてはいないぞ!! 」


 クレスは初めて目の当たりにする闇魔法に驚愕しているようだけど、レイシアの言うように光魔法も大概だよ。やっぱり光と闇属性は他のと比べて特別な感じがするな。


 危なげもなくリザードマン達を仕留めたクレス達は、死体から魔核を取り出し、残りは丸ごと俺の魔力収納で保管する。リザードマンの鱗は防具に適していて、ギルドへ持っていけばそれなりの値段で買い取って貰えるらしい。因みに肉は固く筋張っていて旨くはないそうだ。まぁ例え旨くても、人間のような二足歩行の生物を食べようとは思えないよ。なので鱗意外はムウナのおやつだな。


『とかげ、にく、やった! 』


 リザードマンの肉が嬉しいのか、ムウナは小躍りして喜びを全身で表現していた。


 クレス曰く、先程のリザードマン達はまだ若い固体だったらしい。もっと年を経て経験を積んだリザードマンはあれの比ではないと言う。


「鱗は鋼のごとき硬さで、鉄装備では役に立たない。そして冒険者や武器商人から強奪した鎧や武器を扱うので、かなり厳しい相手ではあるね」


「そうなんですか…… ガストールさん達は大丈夫かな? 」


「む? ガストールがリザードマン討伐に参加しているのか? 駐屯地で何か問題を起こさなければよいのだがな」


 相変わらずレイシアはガストールに対して厳しいね。


「……レイチェル、闇に実態を持たせるにはどうすれば良いの? 」


「こればかりは言葉で伝えるのは難しい…… 後で魔力念話を通じて実体化させる感覚を送るわ…… 」


 年が近いからか、レイチェルとリリィはだいぶ打ち解けて来ている。


「リリィばかりズルいぞ! 私もレイチェルと親交を深めたいのに。そうだ! 剣を教えてやろうか? たまには外で体を思いっきり動かした方が健康的だぞ」


「いやよ…… それにわたし、暑苦しい人って好きじゃないの…… 」


 あらら、振られてしまったね。そんな…… と、ガックリ膝から崩れ落ちるレイシアに、クレスが同情して優しく肩に手を置き慰める。



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