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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第三幕】鉱山町の夢追う坑夫
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6

 

 茫然自失のサーシャの肩をアマンダがそっと抱き、二階へと連れていく。 そんな二人の背中を見送ると、エレミアが不思議そうに聞いてくる。


「何だったんだろうね…… これからどうする? この町にはギルドは無いみたいだし、別の町に行く?」


 そうだな、はっきり言って此処に残る理由は無いので、早く次の町に行ってギルドに登録したい。 だけど何だろう、胸の辺りがモヤモヤする。 この町の行く末が気になるが何時までも留まる事は出来ない。


「もう少しだけ居ようと思うんだけど、どうかな?」


 結局、放って置くことが出来ずに何も決められないまま、先送りという形にしてしまった。


「はぁ~、仕様がないか、それがライルだもんね」


 呆れたように息を吐き、エレミアは微笑を浮かべる。


「でも残るのはいいんだけど、どうするつもりなの?」


 そうなんだよな…… 俺も彼等に混じって採掘作業をするか、食料の援助をするぐらいしか出来そうもない。 しかし、それでは根本的な解決にはならない。重要なのは、あの山にまだミスリルが有るのか、無いのか。 それが分かれば良いのだが。


「う~…… 山にミスリルが残っているのかが分かる方法が有ればな」


 魔術で特定の鉱石を探し当てるようなものは無いだろうかと考えていると、


『む? ミスリルの有無が知りたいのか? ならばそこの羽虫に頼めば直ぐに分かるぞ』


 ギルがしれっと重大な事を言った。 何? アンネに頼めば分かるって?


『アンネ、あの山にまだミスリル鉱石が残っているか調べる事は出来る?』


『ほへ? 出来るよ。そんなもん土の精霊に聞けば簡単に分かるよ』


 そうか、アンネは精霊の声が聞けるのをすっかり忘れていた。 簡単に分かると言われ、悩んでいた自分が馬鹿らしくなりガックリと肩を落とした。


「どうしたの? 具合でも悪いの?」


 心配するエレミアに先程の事を説明すると、


「アンネ様のお力でなんとかなるのは分かったけど、もしミスリルが残ってなかったら、どうやってあの人達を説得するの?」


 それが一番難しい所だけど、先ずは調べてみないと。思い立ったが吉日とも言うからな。俺達は採掘場に行ってアンネの精霊魔法で調査して貰おうとの考えでまとまった。すると、二階からアマンダが降りてくるのが見える。


 アマンダが俺達を見つけると、苦笑しながら近づき席に着いた。


「すまなかったね。 驚かせちまってさ」


「いえ、それよりサーシャさん、でしたっけ? 大丈夫なんですか?」


 ふぅ、とアマンダはため息をつき、一旦目線を二階に向けてまた此方に戻す。


「ああ、二階の部屋で休ませてるから大丈夫さ」


「そうですか…… グラントさんの娘さん、なんですよね?」


「そうさ、今年で十八になる。似てないだろ? 目元以外は母親似さ。 優しい子でね、家族の仲も良くていつも笑っていたのを覚えているよ」


 アマンダは遠い目をして、追想に耽っている。


「アマンダさんは、何故ここに残っているんですか?」


「そうさね、ここが私の居場所だから、かな? 私には子供もいないし、夫にも先立たれちまった。 もうここしかないのさ、だからあの連中と一緒にここで骨を埋めるのも悪かないと思ってね」


 にこやかに笑ってはいるが眼は真剣そのもので、アマンダの覚悟の固さが垣間見える。 夕食の準備の為、厨房の奥に入って行ったので、俺達はミスリルの調査をしに採掘場に足を運ぶ事にした。


「何となくだけど、分かる気がする」


 歩を進めてる中、エレミアはぼそりと独りごちる。


「分かるって、なにが?」


「自分の故郷と運命を共にするって気持ち、私もあの森が滅びるとなったら、ここの人達と同じように残って最期まで抗う道を選ぶかな」


 死んでもいいからその場所に居たい――か、少し羨ましく思う。前世にも、今世にも、俺にはそんな風に思える場所なんてないから。

 前世では就職先から近くて家賃が安いという理由で住む場所を決めて、アパートと会社を行き来するだけ。自分が住んでいた町もよく知らないまま過ごしてきたので愛着も何も無い。だから俺には理解出来ないのだろう、故郷ですら嫌で離れた俺なんかでは。

 なのに、何で彼等を放って置けないんだろう。生まれ変わってから、やたら前世の事を思い浮かべてしまう。死ぬ前は過去なんか振り返る事なんてなかったのに。



 採掘場に着き、早速アンネに調べて貰うよう頼んだ。


「おっしゃ! まかせて! 土の精霊さん、教えてちょ~だい!」


 アンネは何も無い空間に向かって、うんうんと頻りに頷いている。何だかシュールな光景だな。 聞き終わったのか、アンネは此方へ飛んできて、親指をぐっと立ててサムズアップした。


「土の精霊が言うには、まだ沢山あるってさ!」


「沢山あるって、ミスリルが?」


「うん、なんかね全然検討違いのとこ掘ってんだって」


 そうか、別の場所にまだミスリルはあるのか。これで問題は解決したも同然だな。この情報をグラント達に伝えればいい、アンネにはその場所まで案内して貰って、後は坑夫達に任せればミスリルは採れる。


「ねぇライル、あの人達になんて言うの?」


「え? 普通にミスリルを見つけましたで良くない?」


「信じて貰えるかな? ほら、私達部外者だし、馬鹿にしてるのか!って怒られそうだよ」


 そう言われたら不安になってくる。妖精の言うことも彼等は信じてくれないのかな?


『羽虫に期待するのは止めておけ。古来より妖精とはイタズラ好きでいい加減という伝承が人間達に広まっている。却って懐疑的になるやもしれぬ』


 ギルの言うことが本当ならアンネを出すのは逆効果か。


「じゃあ、どうすればいいんだ?」


 よくぞ聞いてくれたと言いそうな顔でエレミアは腰に手を当てフフンと笑うと、


「それはね、私達で先にミスリル鉱石を手に入れるのよ! 現物を見せれば疑いようがないでしょ」


 確かに、彼等にミスリルを見せれば取り敢えずは話を聞いて、付いてきてくれるかもしれない。俺達が発見した鉱床に案内出来ればミスリルを見付けたと証明できる。


「危険だけど、その手が確実かな。 今日の夕食後、ばれないようにまた此処に来よう」


 そう決意すると、来た道を戻りアマンダの宿屋へと足を進めた。


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