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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十五幕】望まぬ邂逅と魔王誕生
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25

 

 翌日。朝から店番をキッカとシャルル、母さんに任せて、俺達は家の応接室でキング種に対する話し合いを行う。


 メンバーは俺、アンネ、ギル、エレミア、アグネーゼ、レイチェルの六人、それとスピーカーモードにしたマナフォンの向こうにはクレス達もいる。


 ムウナとテオドアは興味がないのか魔力収納内で傍観を決め込み、ゲイリッヒはゴブリンキングの素材の行方を調べに冒険者ギルドへ向かった。


「―― という訳で、クレスさん達と一緒に大規模討伐に支援物資として参加しながら陰でカーミラ達を抑えるか、俺達だけでインセクトキングを討つかで迷っているのですが」


 マナフォンからクレスの声が聞こえてくる。


「成る程ね。一つ質問いいかな? オークキングはどちらのキング種の下へ来ると思う? 」


「インセクトキングの所だと考えられるわ…… 公国と王国から大量の冒険者達が集まるカルカス湿原よりも、障害が少なく比較的安易にキング種の確保が出来る…… 」


 だからレイチェルはリザードマンキングの討伐を勧めている訳か。単純に考えてキング種三体もしくは四体の力を得ているオークキングを、俺達だけで相手をするのは些か不安がある。


「そうか、出来るならリザードマンキングは他の冒険者達に任せて、僕らでオークキングを討ち取りたいと思っていたんだけどね」


 あぁ、前の大規模討伐の時に逃げられてしまったのを気にして、自分の手で責任を取ろうとしているんだな。


「ふむ、それはお前達が我等と共にインセクトキングを討つと言うのか? 」


「それもアリなの? ねぇ、レイチェル。そこんとこどうよ? 」


 クレスの言葉を聞いたギルがポツリと呟き、アンネがレイチェルに意見を求める。


「その場合でもインセクトキングとオークキングの二体を相手にすることは変わらない…… 貴方達がどれ程の実力があるのかまだ知らないけど、たった三人増えた所で此方が有利になるとは思えないわ…… 」


「ハハ、ライル君の妹は中々に手厳しいね」


 マナフォンの向こうからクレスの引きつった笑いが聞こえてくる。まぁ、クレス達が加わったとしてもインセクトキングとその配下達、それとオークキングの他にもカーミラが造った魔物もいるだろう。それを踏まえると、レイチェルが言ったように不利なんじゃないか?


「じゃあ、冒険者による大規模討伐が始まる前に私達がインセクトキングを偵察するのは? 上手くいけば、オークキングが来る前に倒せるかも知れないわ。その後でカルカス湿原に行ってリザードマンキングの討伐に参加するのはどうかしら」


「エレミアさんのその提案だと下手すれば連戦になりかねません。流石に体力的に厳しいのではありませんか? 」


 アグネーゼにやんわりと否定されて、エレミアは少しだけ不機嫌になり、同意を求めるかのように俺へと目を向ける。


「ライルはどう思うの? 」


 う~ん、数にものを言わせて安全にリザードマンキングを討つか、それともクレス達と別れて二体同時討伐にするか、はたまたクレス達と共に大規模討伐が始まる前にインセクトキングを討ち、リザードマンキングとの連戦に持ち込むか。


 エレミアの案だとオークキングと鉢会う事になるかもだから、最悪三体のキング種と連続で戦わなければならない。それはちょっと無謀ではないだろうか。だからと言ってクレス達抜きでインセクトキングとオークキングを相手にするのなら、エレミアの案を採用した方が幾分かマシか。


 最も堅実なのはレイチェルの案で、リザードマンキング一体を集中して倒す。その代わりインセクトキングがカーミラの手に落ちるのを容認する事になってしまう。だけど、インセクトキングで更に強化されたオークキングが魔王となったら、その強さはいったいどれ程のものなのか。そしてその場合、人類が被る被害はどれだけ拡大してしまうのか、想像もつかないよ。


「欲を言えば、もうこれ以上オークキングを強化させたくはないんだよね。魔王となった後の被害が心配でさ」


「だったら皆でインセクトキングの所へ行ってみたら良いんじゃん。エレミアが言ったように、どうせリザードマンキングの討伐が始まるのはまだなんだからさ、連戦でもいけるか実際に行って確かめようよ。そんで、こりゃキツいなって思ったら逃げちゃえばいいのよ」


「アンネさん、インセクトキングがいる巣には虫の魔物が大量にいると思われます。いくらなんでもそれは無謀ですよ。せめて聖教国から神官騎士が集まるのを待ってからじゃないと」


 そう言えば、インセクトキングを討つのなら聖教国から神官騎士達を送ってもらえるとアグネーゼが前に話していたっけ。


「巣の内部構造とインセクトキングの実力が分からない内は慎重になるべきよ…… それに、巣は地下にあると聞いてる。そんな見通しの悪い所に兄様を連れていきたくはないわ…… 」


「気持ちは分かるがな、我等が付いているのだ。そう易々とライルに害は及ばない。それでもまだ不安だと言うのなら、お前が守れば良い。巣は地下にあるのだろう? ならば光も届かぬ暗闇に包まれてる筈、闇はお前の領分ではないか」


 人化しているギルが余裕の顔を浮かべるのとは逆に、レイチェルの表情は曇る。


「確かに…… 闇魔法が使えるわたしにとっては有利な場所ではあるけど…… 」


「ん? ちょっと待って。もしかして、レイチェルも一緒に来るつもりなのか? 」


 俺の疑問を聞いた皆が、今更何を言ってるんだと言いたげな顔で見詰めてくる。


 いや、俺は初めからアドバイスだけをしてもらうつもりだったよ。そもそも、レイチェルは伯爵の娘で貴族だぞ? 勝手につれ回したりは出来ないんじゃないのか?


「それに関しては問題はないわ…… 既に手は打ってあるから。だからわたしも兄様達と行く…… そろそろ魔法の実践練習もしたいし、丁度良かった…… 」


 おぅ、思いのほか好戦的な妹だね。

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