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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十五幕】望まぬ邂逅と魔王誕生
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9

 

「ブフゥ、妖精達が来ていたのでもしやと思ったが、やはりライル君であったか」


「妖精さん達がいて、とても賑やかなパーティになりますわね」


 会場内で騒いでいる妖精達を見掛けて、領主とシャロットが態々俺達を探してくれたようだ。


「此方からご挨拶に伺えず申し訳ありません」


「グフ、これはグラトニス卿が主催するパーティであるからして、そう気にせずに楽しめば良い」


「お心遣い、誠に感謝します」


 俺と領主がそんな会話をしている横で、シャロットとエレミア、アグネーゼの三人が、何やらお互いのドレスで話が盛り上がっていた。


「エレミアさんの深紅のドレスも、アグネーゼさんの純白のドレスも良く似合っておいでですわ。アグネーゼさんはイメージ通り保守的な感じですけど、エレミアさんは結構攻めてますわね」


「そう? 動きやすくて割りと気に入ってるの」


「私はどうもエレミアさんやシャロットさんのように、あまり肌は露出させたくはありませんので、どうしてもこういうドレスになってしまいます。それより、シャロットさんのドレスも素敵ですよ」


 この様子ではまだ暫く続きそうだな。領主もそれを察してか、困ったように笑う。


「お嬢さん方が楽しめているようで何より。では、私は他にも会っておきたい者がいるので、これで失礼するよ。ライル君も楽しんで行くと良い」


「はい、ありがとうございます」


 公爵は挨拶回りへと去っていく、主催者なのに色々と大変だな。


「ブフ、そろそろ吾輩達も行かねばならない。まだ挨拶が終わっておらぬのでな…… シャロット、楽しんでいる所すまないが、次に行くであるぞ」


「分かりましたお父様。それでは失礼致しますわ」


 公爵と領主達も去っていき、少しホッとする。何故なら中立派の実質的トップの公爵と、今話題のインファネースの領主が揃って俺の所に来るなんて、そんなの絶対に目立つに決まっている。


 アグネーゼも注目されているのが気付いているらしく、少し恥ずかしそうにしていた。


「おぅ! 領主様達との挨拶も終わったようだね」


「あら? 二人とも良いドレスね。似合ってるわよ」


「ふぅ、料理が豪勢なのは良いんじゃが、油っこいのが多くて儂にはちっとばかし重いのぅ」


 俺達が公爵と領主との挨拶が終わるのを待っていたらしく、タイミングよく各商店街の代表であるティリア、カラミア、へバックの三人が話し掛けてきた。彼等もこのパーティに招待されていたのか。


「儂らだけではないぞ? ほれ、彼処には商工ギルドのマスターも来ておる」


 へバックが見詰める先には、ギルドマスターであるクライドが数人の貴族と話をしている姿があった。彼の話を聞く貴族達は何処か真剣な様子だ。


「あやつは儂ら以上に鼻が利くからのぅ。何を話しているのか大方予想出来るわい」


 成る程、クライドにとっては此処は絶好の商談の場という訳か。


「それより! この場にいる貴族達がインファネースを支援してくれんだろ? じゃあ、前から挙がっていた街の拡張工事の費用もあいつらに出させるんだよな? 」


「そう焦らないの、おチビちゃん。まだ全員がそうと決まった訳じゃないのよ? 今はまだ見定めている最中、私達の対応次第でどれだけ残るか…… あまり失礼のないようにね」


 そうか、あの貴族達の判断材料として俺達が呼ばれたのか。つまりはインファネースが支援するに値する街だとアピールするのが俺達の仕事って事だな。


「分かってるよ、オバさん。それにしても、相変わらず派手なドレスだな。化粧も何時もより濃いし、そんなに若作りしないとパーティにも出られないわけ? 」


「はぁ? そう言う貴女は一向に身長が伸びないわね。もしかして逆に縮んでるんじゃないの? そのドレス姿だって無理して大人ぶっている子供みたい。そんなんだから特殊な性癖の男性にしか相手にされないのよ」


 今さっき下手な姿は見せられないと言ったばかりなのに、大丈夫か? あぁ…… 今度は別の意味で注目されているよ。早くこの場から離れた方が良さそうだ。


 呆れているへバックに軽く挨拶をして、そっとその場を後にする。


 すると、その時を待っていたかのように貴族達が俺達に群がってくるではないか!


 なんだ? 何か失礼な事でもしたかなと思ったが身に覚えはない。たけど焦る俺を尻目に、貴族達が見ているのは俺の横にいるエレミアとアグネーゼだった。


 頻りに色々と聞いてくる貴族達に、二人ともげんなりしているご様子。是非とも妻になってほしいとか、妾になれとか、自分の所にくれば今よりもずっと贅沢させてやるとか、インファネースに関係無い事ばかり持ち掛けてくる。


 確かに、俺から見てもエレミアとアグネーゼは美人だ。それがドレスを着て更に魅力が上がったのだから、言い寄る気持ちも分からなくはない。二人もあからさまな態度を抑え、無難に対応している。


 こんな奴等でも一応は支援者だ。ここで失礼があっては支援の取り止めもある。それが分かっているからこそ二人は我慢しているのだろう。


 それでも、なんだろう? 言い寄られている二人を見ていると、胸の奥がこうムカムカして心臓の鼓動が激しくなる…… この歳で不整脈か?

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