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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十五幕】望まぬ邂逅と魔王誕生
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5

 

 アンネも加わり、領主の館での食事は騒がしいものにはなったが、公爵は妖精と共に食事が出来てご満悦だった。


「いやぁ、こんなに楽しい食事は久しぶりだ。良ければアンネ君もパーティに出席しないかね? 」


「いいの!? いくいく! 他の子達も連れてって良い? 」


「あまり大人数にならなければ構わないよ。妖精達とのパーティとは楽しみだ」


 いやいや、妖精の恐ろしさを子供の時から教えられてきた貴族達にとっては悪夢のようなパーティになりそうだな。


 その後、騒がしくも賑やかな夕食は終わり、公爵は別荘へと帰っていった。それじゃ、俺達もそろそろお暇しようか。


「ブフゥ、急な事で迷惑をかけた。しかし、そろそろ吾輩だけではライル君の存在を隠しきれなくなっていたのは事実なのだ。君の働きは予想以上だったのでな。別に責めているのではないぞ? 嬉しい誤算と言うやつである」


「ライルさんも、これから貴族社会に関わる機会が出来ると存じますが、わたくし達が全力でサポート致しますのでご安心下さい」


 領主とシャロットはすまなそうにしているが、いずれこんな時が来るのではと思っていた。


「いえ、此方こそ今まで矢面に立って頂き大変感謝しております。これからも国と街の発展の為に尽力する次第ですので、よろしくお願いいたします」


 さて、この先色々と忙しくなりそうだな。それでも優先すべき事は変わらない。先ずは明日、キング種の調査についてカルネラ司教に連絡だ。




「態々連絡して頂きすみません、ライル君。いま調査しているキング種なのですが、一ヶ所に留まらずに各地を飛び回っているようで、まだ正確な位置が特定出来ずにいます」


 翌日の早朝、マナフォンの向こうでカルネラ司教の困った声が聞こえてくる。


「飛び回っている? どんな種族かもう分かっているのですか? 」


「はい、それはもう判明していますよ。 “インセクトキング” という虫型の魔物の王で、前に出現したのは二千年くらい前だと記憶しています。各地で虫の羽音と共に上空を覆う黒い霧のような虫の集団が目撃されていますが、何処に向かって飛んでいるのか、またそこに規則性はあるのかはまだ調査中です。今の所、町や村に被害は出ていませんが何時牙を向いてくるか…… 」


 インセクトキング―― 虫の王、か。空を自由に飛んで居場所が特定出来ないのは厄介だな。まだ人間を襲っていないのは各地で仲間を集めているからとも考えられる。何とか奴等の航路を予想出来れば先回りして待ち構えられるのだけれど、それも難しいところだ。


 カルネラ司教から得た新たなキング種について対策を思案していると、クレス達が店を訪れては重要な話があると言う。此方もインセクトキングについての話がしたかったので丁度いい。店番をキッカとゲイリッヒに任せて、二階の応接室へと移動する。


「成る程、そのインセクトキングというのが残り二体の内の一体なんだね? ライル君の予想通り、仲間を集めている最中なのだと僕も思うよ」


「それで、クレスさん達の話とは? 」


「実はね…… 冒険者ギルドの調べで、各地にいるリザードマンがカルカス湿原に集まっている事が判ったんだ」


 それって、もしかして……


「…… リザードマンキングが出現した可能性が高い」


 リリィの声は小さなものだったが、静まった部屋の中ではハッキリと聞こえた。これで二体のキング種が判明した事になる。問題はこれこらどうするかだ。勿論二体とも倒すのは変わらないけど、どちらを先にするべきか。


「ここは居場所が特定してるリザードマンキングにすべきだ! 彼奴等が集まりきる前にキングを討たなければ、どんな被害を被るか分からん! 」


「レイシアの言う事は尤もだけど、まだ確認は取れていないし、インセクトキングは後回しにして平気なのかい? ライル君の話ではかなりの数が集まっているらしいじゃないか」


 レイシアとクレスが悩むのも分かる。どちらのキングも続々と仲間を集めている。片方を倒しに向かっている間に、もう片方の準備が整い本格的に攻めてきたら一体どれ程の被害になるのだろう。


「…… ここは二手に別れて、同時に攻め落とすしかない」


「だけどリリィ、それは危険では? 」


「…… なにも私達だけで相手をする訳じゃない。ギルドはリザードマンに対して警戒体制を敷いている。オークと同じようにキング種を確認出来たら大規模討伐が行われる筈。それに私達が参加して、ライル達にはインセクトキングを倒してもらうのはどう? 」


 リザードマンをギルドに任せるとは良いけど、俺達だけでインセクトキングの相手が出来るのか?


「それなら、聖教国に助力を求めてはどうです? ライル様が必要としてくれるのなら、私達は喜んで戦地へと赴きますよ」


「しかし、聖教国は無闇に戦いには参加しないと聞いていますが…… というか戦えるんですか? 」


「それなら問題はありません。神に選ばしライル様のお力になるのは私達にとっては天意と等しい。それに、魔王の誕生は既に定められているとは言え、その陰には神敵であるカーミラがいます。決して見過ごせるものでは御座いません。戦闘に関しては神官騎士がおりますので、心配無用です」


 あぁ、そう言えばゴブリンキングの時にカルネラ司教が鎧に身を包んだ神官達を連れていたのを覚えている。あれなら戦力としては十分だな。


「意見は纏まったようだね。僕達は冒険者ギルドに掛け合い、リザードマンの大規模討伐を早目に実行してもらう。ライル君達は、聖教国と共にインセクトキングの討伐を目指す。でいいのかな? 」


「はい、それで良いかと。アグネーゼさん、お手数ですがカルネラ司教にインセクトキングが向かいそうな場所を予測して貰うようお願いして下さい」


「畏まりました。では早速連絡致します」


 俺達がキング種の情報を掴んだように、カーミラ達も動いている筈。今度は何を仕掛けてくる気なのか……

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