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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十四幕】翼を持つ者の誇りと使命
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 今現在、街にいると判明している貴族派の者達は十名程だ。そこに護衛や手下を加えるとそれなりの数になる。その全てが何か企んでいるのかはまだ情報不足で分からないが、警戒するに越したことはない。


「あ~、なんか偉そうな人間が色々と自慢してたよ? しかも姉さん達を是非召し抱えたいなんて言ってきてさ。断ったら顔を真っ赤にして喚き散らすもんだから商品に唾が飛んで迷惑だったよ」


 ヒュリピアが困った様子で串に刺した海鮮を焼いている。やっぱり人魚達にも接触していたのか。


「それは鷲鼻の男性だった? 」


「ううん、目が細くてつり上がった人間だったよ? このままじゃ商売にならないから魔法で水浸しにして頭を冷やしてあげたの。そしたらどっかに走って行っちゃったけど、不味かったかな? 」


 あ、此方が頼まなくても既に撃退していたね。俺は人魚達に事情を説明して、リストのコピーと共にそこに書いてある人間が接触してきたら十分に気を付け、また過度な勧誘や暴力を振るってきたならば遠慮はしなくても良いと伝えた。


「そんな連中がいるのね。分かったわ! とにかくここに書いてあるような人間が来たら皆で溺れさせてやるわよ!! 」


「いや、そこまでしなくても…… とにかく注意して下さい。自分達の手に余るようなら本部か近くの人に助けを求めるようにお願いします」


 過剰防衛で訴えられたら困るからね。ヒュリピア達は早速他の人魚達にも情報を共有して警戒してくれるようだ。


「やっと皆が安心して街の中まで来れるようになったのに、そんな人間がいると困るのよね。このお祭りで結構街の事が好きになってきたのに、これじゃまた海から出なくなっちゃうよ」


 警戒心の強い人魚が漸くインファネースに心を許しかけている状況に水を差す者が出てきたと知り、ヒュリピアは憤慨していた。


 派手にやり過ぎると周りに迷惑になるので程々にと念を押して、次へと向かう。


「なんじゃと? そんな奴等がいるんか…… 馬鹿な人間は何時の時代にもいるもんじゃ。そんなに心配せんでもワシ等ドワーフは慣れてるから、あしらい方も心得ておる」


「ガハハハ! ドルムの言う通りじゃわい! 千年前から、ちょくちょくと人間の街に酒を買いに行っとったからの。そういう人間もよういたもんじゃ。まぁその場合、この拳で黙らせてきたがの! 」


 酒場の前で設置されている屋台で酒を買って飲んでいるドワーフのドルムとその仲間達がなんでもない風に笑っていた。他の種族が人間達を遠ざけてきた時でも、ドワーフだけはお酒欲しさにたまに街まで来ていたので結構良くある事なのだそうだ。力ずくで黙らせるって言うのは少し気になる所だが、その辺は加減を弁えているだろう。


 ドワーフ達は問題無さそうなのでこの場を離れ、出会った者達へ口頭で注意を促して行く。


「いらっしゃ~い! 南商店街名物の揚げパンだよ~、砂糖タップリで甘いよ~! それとあたし考案の粒々チョコパンも美味しいよ! うさぎの糞なんて言う奴は後で悪戯しちゃうからね!! 」


 南商店街で繁盛しているパン屋の前に設置している屋台に、住み込みで手伝いをしているエルフの女性と妖精が一人、元気に呼び込みをしていた。


「おっ!? 女王様と一緒にいる人間じゃん! ねぇ、買ってってよ。お代はあの甘い酒でも良いよ! 」


「もう、それじゃお店の儲けになりませんよ? いらっしゃい、エレミアちゃん、ライル君。お一つどうかしら? 」


 俺とエレミアで揚げパンとキョコパンを買い、エルフの女性と妖精に事情を説明する。


「女王様が動いてんの? こりゃ楽しくなりそうな予感がするわ! あたしもちょっくら行ってくんね!! 」


 そう言って妖精は勢い良く飛んで行ってしまった。おいおい、店番は良いのかよ。


「妖精は気まぐれで自由奔放だから、そんなに珍しくないわ。それより心配してくれてありがとう。フフ、エレミアちゃんもすっかり外に慣れたわね。ライル君のお陰でエレミアちゃんの目が見えるようになっただけじゃなく、里も豊かになってとても感謝しているわ。ここはエルフが安心して過ごせる唯一の人間の街ですもの。その注意が必要な人間を排除したいのなら、イズディア様に言えば直ぐにでも戦士達を送ってくれるわよ? 」


「いや、それは有り難いのですが、そうなると後程色々な問題が生じる恐れがありますので…… とにかく、この紙に書かれている人達が何かしらの接触を図ってきた場合、無理をせずに周りに助けを求めて下さい」


 俺の言葉に、心外だとエルフの女性が軽く頬笑む。


「あら? こう見えても魔法の腕には自信があるのよ? そう心配しなくてもその人間達を追い払うくらいは出来るわ。それに妖精達も動いているみたいだから、そんなに慌てる程ではないわよ」


 それが一番の不安要素なんだけど…… エルフ達の妖精に対する信頼感は過剰だからな。まぁ今は大丈夫だと言う彼女の言葉を信じよう。


 天使達に関してはミカイルが伝えているだろうし、街にいる他のエルフ、ドワーフ、人魚達にも代表達が報せて回っている。


 今までの聞き込みによって分かった事は、リストに載っている貴族派の者達は挙って他種族を自分達の領地や家に引き入れようとしているようだ。これはやはり結託した計画的な犯行かも知れないな。残りの連中の所在も確認して監視をするために、ハニービィ達を飛ばす。


 しかし、ハニービィ達では人間の細かい特徴を覚えきれないので、とにかく偉そうな者を見つけ次第報告するようにと頼む。そこからクイーンを通じて送られてくる映像を確認して、目的の人物ならそのまま監視してもらう。これで何か仕掛けてきたならば早めに対応出来るな。


 はぁ…… 祭の初日からこんなトラブルが起きるとはね、余計な仕事を増やしてくれたもんだよ。

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