表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十四幕】翼を持つ者の誇りと使命
450/812

49

 

 俺達はミカイルとエリアスを連れて直ぐに中央広場にある運営本部のテントに戻り、中で待機しているシャロットに先程の事を報告した。


「そうでしたか。ミカイルさん、その接触してきた者というのは鷲鼻の男で間違いないのですわね? 」


「あぁ、確かに鼻に特徴がある人間だった。俺とエリアスを見た途端、気持ちの悪い笑みを浮かべ近寄ってきては、この街と祭りを罵った後、自分達の領地の方が素晴らしいと自慢し始め、俺達に贅沢をさせてやるから下に付けと言ってきた。最初は我慢しようとしたのだが、あのどうにも神経を逆撫でする態度としつこさ、それと俺達を見る目をあまりにも如何わしかったので、少々キツイ物言いになってしまった。するとその男は突然激昂し、側にいる体格の良い人間二人が前に出てきたので思わず手を出してしまった」


 成る程ね、だからあんなにボロボロだったのか。それにしても奴等の狙いは天使達や他の種族の勧誘? この祭りを滅茶苦茶にして評判を落とし、自分達の領地に引き入れるつもりなのだろうか?


「そうだとしたら、見過ごす訳にはいきませんわ。まだ他にも貴族派の方々がいらっしゃっております。何か行動を起こされる前に阻止致しませんと」


 シャロットは使いを出して代表達を召集し、そのまま対策会議を始める。


「ほぅ? もし其れが本当なら、儂等に喧嘩を売ってるちゅう訳じゃな? 」


「面白れぇ、買ってやろうじゃないさ! ワタシ達の街に手を出したらどうなるか、その身で分からせてやるわ! 」


 滾るへバックとティリアを、困ったような様子でカラミアが宥める。


「待ちなさい、二人とも。まだ臆測でしかないから軽率な行動は慎まないと。情報を集める事が先決よ」


「そんな事している隙に、また何か起こったらどうすんだよ! あいつら全員街から叩き出しちまえば良いのさ! 」


「いや、カラミアの言う通り情報が足りんまま強引な手を使えば奴等の思うツボじゃ。みすみす此方を攻める口実を与える訳にはいかんしの」


 狙いがなんにせよ、あいつらにとってはインファネースは正に目の上のたんこぶ。王族派の力がここまで大きくなったのはこの街が発展したからで、どうにかして排除したい筈だ。


「彼等の狙いが他の種族の方達なら、何かしらの接触を図っていると思われますわ。情報と証拠がない今、此方からは手が出せません。お父様にも伝えて指示を仰ぎませんと」


 いくら領主でも、同じ国の貴族だとしてもそう簡単には対処出来ない。それは街の住人達も同じ。だからこそ、あの場で貴族を撃退したミカイル達に感謝していたのだろう。


 なら住人以外では? 完全に問題にはならない訳ではないが、インファネースを攻める口実にはなりにくい。


「それは、他の種族の皆さんに協力を求めるという事ですの? しかし、わたくし達の問題に彼等は関係ありませんし、これ以上ご迷惑を掛けられません」


 そう遠慮するシャロットに、ミカイルが言葉を掛ける。


「俺達の事なら気にするな。それよりこの街に何かあってからの方が迷惑になる。楽しみにしていた祭りも台無しにされても困るしな。一度手を出した身だ、協力しよう」


「ほら、ミカイルさんもこう言ってくれてます。きっと他の皆さんも同じですよ。だってあれだけ今日のお祭りを楽しみにしていたんですから。決して無理強いや要請はしません。ただそういう人達がいるって事を伝えるだけです。後は彼等の意思にお任せします」


「此方からの指示で無ければ、いくらでも言い訳が出来る訳じゃな? お前さんも中々あくどい事を考えるもんじゃのぅ」


 俺もお祭りを邪魔されて少し腹が立っているのかも。それに、態々協力してくれと頼まなくても、動いてくれると確信している。だって皆この街が本当に好きだと分かっているから。


「今来ている奴等の特徴を流すだけで良いのか? まぁそれだけなら情報を集めるついでに出来るな」


「…… 分かりましたわ。ですが、これはあくまでも注意喚起であり、要請では御座いません。そうですわね? 」


 そう、これは要注意人物が街に入ってきているから気を付けるようにと言うだけ。


 シャロットは領主にこの事を伝える為にマナフォンを取り出し、俺を含めた商店街の代表達は情報を集めるついでに、今街にいるエルフ、ドワーフ、人魚、天使に注意喚起を促す。


 テントから出た俺は、魔力収納からハニービィを飛ばして各々祭りを見回っている仲間達を呼び集めて事情を説明した。


「ふ~ん。つまりはあたし達のお祭りを邪魔する奴等がいるってこと? 上等じゃない! 妖精の恐ろしさを思い出させてやんよ!! 」


「長の邪魔をする者は誰であろうと許しがたい。その狼藉者達はオレ達にお任せ下さい」


「我が主を不快にさせるとは、愚かな者達ですね。そんなゴミは私が片付けておきましょう」


「おっ! なんか面白そうな事になってんな」


「こやつらがいれば、我が直接手を下す必要もなかろう」


「それ、たべて、いいの? 」


 おぅ…… 皆思いの外やる気だね。それとムウナ、人間は食べては駄目だからな。また肉体を乗っ取られでもしたら厄介だ。


「必要以上に手を出さず、街から出ていくようにしてくれるだけで良いです。奴等にこの街はそう容易くはないと思い知らせてやろう! 」


 さて、祭りを純粋に楽しまずに裏工作している奴等にはお引き取り頂こうかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ