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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十四幕】翼を持つ者の誇りと使命
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36

 

 北西の集落では、ギルが龍の姿で侵入してきた黒翼の有翼人を抑え、ドワーフ、エルフ、人魚でガーゴイル達の数を徐々に減らしていっている。


「おらぁ! てめぇらで最後だ! 」


 テオドアの雷に変化した体が黒翼の有翼人達を襲う。


「む? テオドアか? ライルもいるようだな。何故ここへ? 」


 ギルは自身の大きな龍の頭を傾ける。何その仕草、意外と愛嬌がある。


「けっ! 何よそのポーズ。可愛いと思ってんの? それとも有翼人達に持て囃されて調子に乗ってんの? 」


 アンネがギルに悪態をつくが、話が進まないのでここはスルーさせてもらう。


「あの侵入してきた有翼人達を魔術から解放する為に、捕らえて回ってるんだ」


「成る程、それでテオドアがいる訳だな。我の所で最後か? 」


「あぁ、今魔力収納の中で一人ずつ術式を消している途中だよ。ここにいる人達を含めたら、後三十分くらいで全員を解放出来ると思うよ」


 かなりコツは掴んだからな。魂従魔術と呼ばれている術式はもう覚えたから見つけやすくなっているので、一人に掛かる時間は大分短縮できる。


「ねぇ、最近あたしを無視する事が多いんでない? そろそろ泣いちゃうよ? 」


 あっ、アンネが凄く気落ちしている。ごめん、時間を無駄にはしたくなかったんだよ。後で前世のお菓子を作ってあげるから、それで機嫌を直してくれ。


「ライルが視せてくれたあのクレープってのがいい! あとパフェってやつもね! 」


 はいはい、これが終わったらね。


 テオドアが魔力を吸収して気を失っている有翼人達を魔力収納に回収して、その場で魔術の解除をする。


 魔術で支配されていた有翼人達がいなくなった事で、ガーゴイルを指揮する者がいなくなり統率は失われた。まぁ元から統率されていたと言えるようなものではなかったけど、更に勝手気儘に暴れている。


 いくら空が飛べて頑丈で数が多くても、ちゃんとした指揮の下で戦っている者達の敵ではない。


 エルフの弓が、ドワーフの斧が、人魚の魔法が、ガーゴイル達を少しずつだが確実に仕留めて行く。もう勝敗は決まったのも当然だ。


 ハニービィからの映像でも、どの集落も安定してガーゴイルの数を減らしている。


「しかし、解せぬな…… 」


 ここまで順調にいっていると思うのに、ギルが不機嫌に喉を鳴らす。


「何が解せないんだ? 集落も無事、支配されていた有翼人達もこうして皆解放出来るし、順調そのものじゃないか」


「今回の集落の襲撃には不可解な点が多い。先ずは、何故奴等は魔術で支配した者共を隠さず自ら姿を晒すような真似をしたのだ? 今襲ってきた者共みたいに、狩りに出ていた有翼人を捕らえ隠しておき、後で一気に集落を攻めれば楽に滅ぼせただろうに。そして、何故ダールグリフは我等に集落の襲撃を教えた? 恐らくだが、奴は確信していたのではないか? 我等がその事を知ったら必ず集落を守りに向かうとな」


 え? 全部ダールグリフの目論み通りだと言いたいのか? でも、邪魔な有翼人達の数を減らして空の管理を満足に出来なくするのが目的だと……


「ライルよ、敵が馬鹿正直に本当の目的を話すと思うか? 多少は真実が混ざっているかも知れんが、大半は此方を騙す嘘だと認識した方が良いぞ」


「だとすると、カーミラ達がこの山脈に来た本当の目的って? 」


「さてな…… セラヒムを含めた有翼人の実力者を集落から離し、足止めし、我等もまたこの襲撃でこの地に繋がれている。今自由に動ける者はいない。これが奴等の計画なのか、仮にそうならばこの先どう動く? 」


 確かにギルの言う通り、俺達が来るまでは支配した黒翼の有翼人で嫌がらせ程度にしか集落を襲わず、ミカイルが助けを求めてからは、慌てたかのような急展開。コルネウスが勝手に動いて計画が上手く行かなかったのが事実としても、有翼人達を狙ったにしてはかなりお粗末な感じがする。


 何処かわざとらしいというか、目立とうとしているような? でも何で態々そんな面倒な事を?


「まるで見せ付けているみたいね。なんか遊ばれているようで気分は最悪だよ! 」


 横で俺とギルの海輪を聞いていたアンネが憤慨している。


 ん? 見せ付けている? 今まで有翼人達を殺そうとはせず、軽めのちょっかいだけ。だからこそ、族長のセラヒムはまだ自分達で何とかなると思い、他の種族には助けをを求めなかった。

 しかし、セラヒムの反対を押し切り、ミカイルがインファネースに向かい救援を要請した。結果、俺達がこのコウリアン山脈に来る事になり、急遽計画を進めたとなると……


「…… 有翼人以外の者が此処に来るのは奴等にとって不都合だった? ギルが言ったようにダールグリフが嘘を教えたのならば、本当の目的を俺達から隠す為だけに有翼人を拐い、集落を襲わせた? 」


「うむ。そう考えると、この襲撃を隠れ蓑にする程だ。大層な目論見があるのか」


「ちょっと~、不安になるような事言わないでよ。考え過ぎだって! 単純にあたし達の方が上手だったんじゃない? 」


「貴様は考えなさ過ぎるのだ。常に危機感を持たないとその内取り返しのつかない事態に陥るぞ」


「んなのその時に考えれば良いじゃん? どんなに疑問に感じようが、危機感を持とうが、なるようにしかならないよ。だったら余計な事は考えずに今を楽しく過ごそうとするは間違いなの? これだから頭でっかちは…… 図体ばかりでかくて心がちっさいのよ」


「そう言う貴様は心も姿も小さいくせに、口だけはでかいな」


 あぁ、また始まったよ。どんな状況でもこの二人のスタンスはブレないね。


 う~ん、カーミラ達はこの山脈で何をしようとしているのだろう? まぁ取り合えず今は、支配されている有翼人達を解放してしまおう。コルネウスとガーゴイルに囲まれ足止めされているミカイル達も心配だし、早く援護に向かわないと。

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