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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十四幕】翼を持つ者の誇りと使命
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35

 

 少し時間は掛かったが、何とかエルフとドワーフ達がアンネのいる東の集落へ着いたみたいだ。


 〈やっと来た! もう遅いよ~〉


 〈遅れて申し訳ございません、アンネ様〉


 〈これでも急いで来たと言うのになんて言い草、これだから妖精は…… 〉


 悪態をつくアンネに、エルフの若者達は素直に誤り、ドワーフの兵士達は不機嫌に呟く。


 エルフから事情を聞いたアンネは、分かったと頷き精霊魔法を発動する。


 〈そんじゃここは任せた! ちゃんと守りなさいよね!! 〉


 エルフとドワーフに東の集落を任せ、空間の歪みからアンネが元気良く飛び出てきた。


「やっほー! お待たせライル。早速だけど魔力を補充してくんない? 今のでもう殆ど残ってないよ」


「お疲れ、アンネ。すぐに補充するから、あともう少しだけ頑張ってくれないか? 」


「あいあい、これが終わったらデザートワインに炭酸入れて飲みまくってやる! 」


 魔力を回復させたアンネは精霊魔法で其々の集落に編成されたドワーフ、エルフ、人魚の部隊を送っていく。彼等には予め黒翼の有翼人達は魔術で支配されていると伝えてある。そして出来れば支配から解放させたいので、殺さずに捕らえてほしいと頼んだ。


 ギル、ムウナ、ゲイリッヒの所にも救援部隊が到着し、守りが安定してきた時を見計らい、アンネの精霊魔法でテオドアをここに呼び戻す。


「どうした、相棒? 」


「テオドア、見ての通り救援が来てくれたお陰で集落の守りが盤石になった。今なら俺達がここを離れても問題はないんじゃないか? エルフやドワーフ、人魚達には出来れば黒翼の有翼人達を殺さないでほしいとは言ったものの、空中を自在に動き回る相手では厳しいだろう。そこで俺とテオドア、アンネの三人であの有翼人達を捕らえて回ろうかと思ってさ」


「へぇ? 面白そうじゃねぇか。やってやろうぜ! 」


「なに? まだ働くの? 妖精使いが粗いわね~。これが終わったら長期休暇を要求するわよ! 」


 良し、先ずは目の前にいる黒翼の有翼人達を捕らえてしまおう。


 エルフの弓と人魚の魔法が空を飛び回るガーゴイル達を地に落とし、そこへドワーフが自慢の斧で叩き斬る。如何に堅い皮膚を持つガーゴイルであろうとも、ドワーフの剛腕から繰り出される斧の一撃には耐えられないようだ。


 そんな彼等の横でテオドアに魔力を繋げる。


「テオドア、アンネにも魔力を渡さないといけないから、そんなに時間は掛けられないぞ? 」


「となると、ここはあれでいくか」


 繋がっている魔力を通して、俺の魔力がごっそりと減っていくのと同時に、テオドアの体がバチバチと明滅し始める。


「ハッハァ! 鳥野郎共め、俺様の体で痺れちまいな!! 」


 その身を雷に変えたテオドアが、目にも止まらぬ速さで迫り、体に触れた瞬間、ビクビクと痙攣して落ちてゆく黒翼の有翼人達。


 テオドアの魔力吸収だが、その発動条件はテオドアの体の一部が相手に触れていなければならない。そう、雷に変化していてもそれは体の一部と認識され、相手を痺れさせながら魔力も吸い取る事が可能なのだ。


 気絶している黒翼の有翼人達を一旦魔力収納へと入れ、アンネの精霊魔法で次の集落へと向かう。


「それじゃ、行ってくるから後は頼んだよ」


「はい、ここは私達にお任せ下さい」


「本当は私もついていきたいけど…… 仕方ないわね。アンネ様、ライルをお願いします」


 アグネーゼとエレミアにこの集落を任せ、アンネが作り出した空間の歪みを潜って次の場所へ。


 そこではドワーフの兵士長ルドガーが全体の指揮を取っていた。


「これは我が主様。此処へ来られるとは、どうかなさいましたか? 」


 いち早く俺を発見したゲイリッヒが近寄り頭を垂れる。


「いや、テオドアの魔力吸収であの支配されている有翼人達を捕らえていこうと思ってね」


「それは素晴らしいお考えです。ガーゴイルはまだ何とかなるのですが、あの有翼人達を生きて捕らえるのは難しく、苦戦していた所」


 ゲイリッヒのおべっかもここまでくるといっそ清々しいね。


 ここでもテオドアが魔力でできた体を魔術で雷に変化させ、支配されている黒翼の有翼人達の魔力を奪っていく。これで十二人か、残り三つの集落で十八人。思ったよりきつい…… 魔力、持つかな?


 次はムウナの所に向かう。ここでは人魚の近衛隊長リヒャルゴが指揮を取っているようだ。


 ムウナは…… 肉塊の姿で体から伸ばした触手を支配されている有翼人達の体に絡めて動きを封じていた。よしよし、言いつけ通り食べてはいないな。


「ライル、みて! 一口も、かじってないよ。えらい? 」


 掴まえた有翼人達をこれ見よがしに持ってくる。


「あぁ、偉いぞムウナ。いい子だな」


「いいこ! ムウナ、えらい! 」


 はしゃぐムウナとは対照的に触手に囚われている有翼人達は何もかも諦めたようにぐったりとしている。


「俺様の出番はないようだな」


「いや、魔力を吸う仕事が残ってるぞ? 」


 テオドアに魔力を吸ってもらい、意識を失った有翼人達をムウナから受け取り、次の集落へ。


 ここはアンネがいた南の集落だな。指揮を取っているのはエレミアの兄エドヒルだ。


「ん? ライルか。どうした? 何か問題でも起きたか? 」


「いえ、そういう訳ではないのですが」


「今、あたし達であの黒い有翼人を捕まえてんのよ」


 俺とアンネがエドヒルに説明している間にも、雷の体に変化させたテオドアが次々と黒翼の有翼人達を落としていく。


「まったく、あんなレイスまでも仲間に加えるとは、お前の常識外れは相変わらずだな。アンネ様も苦労をなさっておいででは? 」


「あ、分かる? あたしも結構苦労してんだよね~。まぁ色々と大変だけど、それ以上に楽しいから別にいいんだけどね♪ 」


 そう言って笑顔を浮かべるアンネに、そうですか―― と何とも微妙な顔で口角を上げるエドヒル。俺と一緒にいるエレミアを心配する気持ちと、楽しいと言うアンネに安心する気持ちが、ない交ぜになっているのかも。


 さて、次はギルがいる最後の集落だ。

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