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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十四幕】翼を持つ者の誇りと使命
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 まずいな…… どんどん此方が劣勢になっていく。集落の人達を守る為に、心を支配されているだけの有翼人を殺さなければならないのか?


 〈ぬぅ、我等だけでは抑えきれんか…… 〉


 〈ひぇぇ、ちょっ、これ以上は魔力が持ちそうにないんですけど? まだなの、ライル~ 〉


 〈あぁくそったれが! 空をちょこまかと逃げ回りやがって、魔力が全然吸えねぇじゃなねぇか!! 〉


 〈ふぅ…… 守りながら戦うのは骨が折れますね。魔法で掩護してくれている集落の皆さんもお疲れのようですし、中々に厳しい〉


 旗色が悪そうな皆の様子がハニービィから送られてくる。


 悩んでいる暇はもうない。すぐに決断しなければ、どちらも救えない事態になってしまう。それだけは避けなければ。


 黒翼の有翼人達には悪いが、集落の人達の為にここで死んで貰う。そう思いを固め覚悟しかけた時、転移門を設置している方角から複数の魔力反応があった。


 もしかして…… 期待に胸を膨らませ、ハニービィからの映像を確認すると、転移門から続々とドワーフ、エルフ、人魚が現れるのが見える。


「ライルさん! お待たせしました!! 敵は一匹も逃がしませんよ! 」


 一緒に封印の遺跡で負の思念に乗っ取られたムウナの肉体と戦ったドワーフの兵士長ルドガーが、獰猛な笑みを携えて複数の部下を率いてきた。


「ライル、エレミア。よく頑張ったな。後は俺達に任せろ」


 エルフの若者達を連れてやって来たのは、エレミアの兄であるエドヒルだ。彼の姿を見て、エレミアがホッと顔を弛ませ安堵している。


「女王の名にかけて有翼人達を守る。して、敵はあの黒い翼の奴等か? 」


 人魚達を率いてきたのは、近衛隊長のリヒャルゴだった。近衛なのに島から離れても大丈夫なのか? でも心を強いのは確かだ。


「皆さん! 急な要請にも関わらず、こうしてお集まり頂き、本当にありがとうございます。早速ですが、五つの班に別れて其々の集落を守って貰えませんか? 」


 挨拶をそこそこにしてそう告げると、ものの数分もしない内に編成が完了する。流石は手慣れてらっしゃる。


 その間、侵入してきた黒翼の有翼人達は、突如やって来たドワーフ、エルフ、人魚の混成部隊に警戒しているのか、遠目で様子を窺っていた。


 さて、問題はどうやって各集落に彼等を送るかだな。アンネは向こうにいるので精霊魔法は使えないから、結界の効果で集落の中に入れない。


「アンネ様がいる集落へ、有翼人達に頼んで運んで貰うのはどうだ? 」


「兄さん、結界の外にはガーゴイル達がいるのよ? そんな中で簡単に移動出来ると思う? そもそも結界が張ってあるから有翼人以外は外から集落に入れないわよ」


 エドヒルの提案にエレミアは呆れ気味だけど、今の所それしか方法がない。


「それなら、いっそ結界の範囲を縮めるのはどうです? 我々ドワーフは近接でしか戦えませんからね。あのガーゴイルとか言う魔物が近付いてくれないと、対処のしようがありません」


 成る程、結界の範囲を集落の人達が集まっている周りだけにして、ガーゴイルを近くまで来させるって訳か。エルフには弓があるしに人魚は短時間だけど腰に纏わせている水のリングで空を泳ぐ事も出来るが、ドワーフには斧だけ。あの遺跡で使用した弩砲は大きいので、転移門では運べなかったらしい。


「ならば、俺達があの魔物共を抑えるから、その間に有翼人達に運んで貰えば良いのではないか? 結界に関しては有翼人なら問題ないのだろう? それなら此処にいる者達に先に向かってもらい、ルドガーが言ったように結界の範囲を縮めて貰えば俺達も集落に入れる。危険は伴うが全滅よりかは良いだろう」


 少しまとめてみよう。人魚達が外にいるガーゴイルを抑えている間に、先ず数人の有翼人が東の集落に赴き、結界の範囲を調整する。そして別の有翼人達にエルフとドワーフを運んで行って貰う。向こうにもガーゴイルはいるが、エルフの弓や、人魚の魔法でサポートしつつ潜り抜けると。そして運んだエルフとドワーフに守りを任せ、アンネには俺達の所に戻ってきてもらって、精霊魔法で残りの集落にもエルフ、ドワーフ、人魚達を送る。


 色々と不安要素はあるけど、時間が惜しい。すぐに取り掛かろう。


 俺は族長宅の庭にある結界の魔道具を使い、範囲を調整する。どんどん小さくなっていく結界に侵入者達は怪訝な表情をするが、知性の低いガーゴイルはこれ幸いにと一斉に飛んでくる。


 そこを水のリングを腰に巻いた人魚達が宙を泳いで迎え撃っている間に、スピードに自信がある有翼人の若者達が南の集落に飛んでいく。


 それから時間を少し空け、避難している有翼人達に協力の下、エルフとドワーフを運んでいってもらう。


 その様子を侵入してきた黒翼の有翼人達が見つけて邪魔しようとしてくるが、人魚達と俺とエレミア、それから解放した黒翼の有翼人で阻止する。


 アンネさえ自由になれば、後は精霊魔法で一気に部隊を配置出来る。魔力は俺が補充するので問題はない。だからもう少しだけ耐えてくれ。


 ダールグリフの―― いや、その裏にいるカーミラの思惑通りにはさせない。集落の有翼人も、支配されている黒翼の有翼人も全員救ってみせる!

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