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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十四幕】翼を持つ者の誇りと使命
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33

 

 此処に集まっている有翼人達は戦闘に不慣れではあるが、魔法は使えるので別段戦えない訳ではない。しかし今から来るのは狩りを生業としていた者達で、戦闘経験も技術も圧倒的に勝っている。遠くから魔法の掩護だけしてもらおう。


 支配されている黒翼の有翼人達は途中から六人ずつに別れて各集落に向かっていった。全ての集落を一度に叩くつもりか。三十人あまりの人数を一度に相手をしなくて済むのは正直有り難い。向こうの戦力を分散してくれるのなら守り易いしな。


 そしてとうとう肉眼でも確認出来る距離にまでガーゴイルを率いた黒翼の有翼人達が近付いてきたが、結界の効果でガーゴイルはそれ以上進めないようで、空中で待機していた。


 しかし六人の黒翼の有翼人達は結界をすり抜け、どんどん迫ってくる。


「あの面倒な結界の発生源がこの近くにある筈だ、見つけて壊せ! 」


「そうはさせん! ここは絶対に死守してみせる! 」


 解放された者と支配されている者が睨み合う。こうして見ると本当に自然体で操られているとは思えない。これが魂従魔術ってやつか。


「一人で前に出過ぎないように、あくまで俺達は守りに徹します。相手は六人でも、魔道具を破壊された時点で多かれ少なかれ、必ず犠牲者が出てしまいます」


 今にも飛び出しそうな彼を何とか宥め、相手の出方を窺う。


「彼処から魔力のうねりを感じる。恐らくあの場所の何処かに結界の発生源がある。行くぞ! 」


 六人の侵入者が一気に此方へ飛んでくる。それじゃ、戦闘開始といきますか!


「皆さん、まだですよ! もっと引き付けてから…… 今です!! 」


 アグネーゼの合図と共に、エレミアを含めた集まっている有翼人達の魔法が一斉に放たれる。魔力が無くなれば俺が補充するので、そうそう魔法射撃が止むことはない。これで時間を稼ぎ、近付いて来たら、俺とエレミアと解放した黒翼の有翼人の三人で迎え撃つという算段だ。


 休み無く放たれる魔法の数々に、侵入してきた有翼人達は中々進めないでいる。この調子なら暫くは大丈夫だろう。


 その間に他の集落の様子を確認しよう。


 ギルの所は、比較的まともに戦える有翼人達を率いて、龍の姿になったギルが乱暴に侵入してきた黒翼の有翼人達を叩き落としている。いくら死ににくい体だからといって、ちょっとやり過ぎじゃない?


 アンネは、精霊魔法で結界を作ってひたすらに攻撃を耐えている。アンネの鉄壁の守りに、侵入者達も攻めあぐねているようだ。


 ゲイリッヒの所は、俺と同じように集めた有翼人達に魔法を放ってもらい、解放した黒翼の有翼人と一緒に侵入者達の相手をしている。


 一番心配なムウナとテオドアは…… まぁ、そうだよな。いつもの如く、巨大な肉塊へと変貌したムウナが触手を伸ばして絡めとろうとし、それを必死な形相で逃げ回る侵入者達。テオドアも魔力を吸収しようとしているが、不意討ちではないので尽く避けられて思うように吸えずにいた。そんな二人の戦いに、守られている筈の有翼人達は、恐怖に顔を歪ませ震えている。


 とにかく、今の所ちゃんと守れているみたいだ。ムウナとテアドアの所なんてもしかしたら倒してしまえるんじゃないかと思う。まぁ、それならそれで良いんだけどさ。


「ライル! 一人こっちに来るわ! 」


 エレミアの呼び掛けに意識を戻すと、一人がむしゃらに突っ込んでくる有翼人がいた。この魔法が飛び交う中でよくやるよ。


「ここは任せろ! 」


 すかさず此方側の黒翼の有翼人が迎え撃つ。同じ黒い翼なので、遠目から見たら仲間割れしているようにも見える。紛らわしいからって間違って魔法を当てないでくれよ?


 うん? 何だか魔法の数が目に見えて減ってきているような?


「いくら魔力がありましても、こうずっと魔法を撃っていれば疲れてしまいます。それにこの人達は生活に魔法を使ってはいても、このような戦いで使った者はいないのでは? 慣れない戦場で神経を磨り減らし、何時もより疲れやすくなっていると思います」


 アグネーゼの推察を聞いて、魔法を放ってくれている有翼人達を見回す。


 皆、緊張と不安を綯い交ぜにした表情をしている。成る程、アグネーゼの言う通り、慣れない状況と集落が攻め込まれているこの現状に、かなりの心労が蓄積しているようだ。


 掩護射撃が薄くなった事で、徐々に侵入者達は近づいてくる。


「疲れた者からこの場から離れて、それから子供を早く奥に避難させて下さい。大丈夫です。皆さんの安全はライル様が保証して下さいます。だからどうか、慌てずに家の中へ! まだ余力がある者はこのまま続けて魔法をお願いします! 」


 アグネーゼ、また勝手に無茶な事を…… 有翼人達を安心させる為と分かってはいるが、安全を保証するだなんてプレッシャーが物凄いのだけど?


 て、そんな事を考えている場合じゃない! ヤバイな…… この調子ではいずれ奴等の接近を許してしまう。


 そうなったら有翼人達を全員守りきる自信がない。こうなればもう四の五の言わずに殺すしかないのか? くそ、何処かでダールグリフがほくそ笑んでる気がするよ。



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