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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十四幕】翼を持つ者の誇りと使命
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 もうどれ程戦っているのだろう。いっこうにガーゴイル達の数が減っている気配はない。こいつら後どれだけいるんだ? 流石に疲れてきたよ。


 コルネウスを相手にしているミカイルとタブリスは、ハニービィから送られてくる映像を確認するに、まだ奮闘している。


 ギルの方は、ダールグリフの防御を崩せずに大分苛ついていた。力任せに何度も大剣を上から降り下ろし、その度にダールグリフの見えない壁に遮られてしまう。


 しかも奴はただ防御に徹している訳でもなく、魔術で強化した体でメイスをギルに叩きつける。


「どうしました? 私を殺すのでしょう? いつまでその姿でいるつもりですかね」


「そんなに見たければ見せてやろう。我の本気の姿を! 」


 人化しているギルの体が漆黒の鱗に覆われ、赤い模様が血管のように全身を巡る。背中には龍の翼、腰には雄々しい尻尾が生え、黄金色の眼に浮かぶ瞳孔は縦に割れる。これがギルの龍人形態である。


「そうです! その姿ですよ!! あの時の失態、貴方の敗北で払拭させて頂きます」


「残念だが、それは叶わぬぞ? お前はまた同じ失態を繰り返すのだからな! 」


 龍人化したギルの一振りで周囲の木々が斬り倒され、ガーゴイル達が下敷きになる。


 圧倒的なギルの力に押されているというのに、ダールグリフの余裕な態度は崩れない。


 何かおかしいぞ? 何で奴は態々俺達の前に出てきた? 何故ガーゴイルだけをけしかけ、まだいるであろう黒翼の有翼人は出てこないんだ? そして、今だにコルネウスを一人で戦わせている理由は?


 言い様のない不安が胸に込み上げてきたその時、別のハニービィからセラヒムが率いる有翼人達が来たと報告があった。


 普通ならこれで安心だと思う所だけど素直にそうなれないのは、あの余裕綽々なダールグリフがいるからだ。


「どうした! 逃げるだけでは我は倒せんぞ? 貴様の精進とは逃げ方が上手くなっただけを言うのか? 」


「これは手厳しい。しかし、相手を倒すだけが勝ちではありません。勝敗には様々な形があるのですよ? 」


「ほう? 興味深いが、その別の形とやらを見る機会はない。何故ならここで貴様は死ぬからだ! 」


 ますます激しくなるギルの攻めに、今回初めてダールグリフの顔が歪む。流石に今のはきつかったみたいだな。


 と、丁度そこへセラヒム達がミカイルと合流を果たした。


 〈ミカイルよ、これはどういう状況だ? 何故お前と其奴が共にコルネウスと戦っている? 〉


 〈セラヒム様、彼等は我々を裏切ってはいなかった。全てはコルネウスとカーミラの策略だったのです! 〉


 要件だけを手短に伝えるミカイルの話を聞いたセラヒムは、成る程と呟く。


 〈しかし、どんな理由であろうとも我々に矛を向けたのは事実。その罪は償わなければならない〉


 〈はい、承知しております。この戦いが済んだら、他の者達と共にどんな罰でも受ける覚悟は出来ております〉


 タブリスの神妙な様子に、セラヒムは無言で頷いた。


 〈では、最も罪深き者を断じようではないか。覚悟は出来ているな? コルネウスよ〉


 セラヒムが持つ槍の穂先がコルネウスに向けられる。だが当の本人は動じている様子が見受けられない。


 〈やっと来たか。待ちくたびれたよ〉


 ん? 先程のコルネウスの言葉から察するに、セラヒム達の到着を待っていた?


「ライル! ガーゴイル達が!? 」


 エレミアの呼び掛けでハニービィから送られてくる映像から目を離すと、ガーゴイル達が一斉に何処かへ飛び立っていく最中だった。いったいあいつらは何処へ?


「ぬお!? 何だこれは! 」


 そんなギルの声が聞こえ、そちらに顔を向けると、半透明の球体に包まれて身動きが取れなくなっているギルの姿が目に入る。


「貴方方が開発した結界魔術を参考にさせて貰いました。この中からは簡単には出られませんよ? あぁそれから、有翼人達をどうするのかという質問にまだ答えてませんでしたね。これがその答えです…… さぁ、お前達! 集落にいる者達を一人残さず殺してしまいなさい!! 」


 ダールグリフの号令と共に体から魔力が吹き出し、何処かへ伸びていくのが視えた。


 〈なっ!? こやつらは、狩りに出ていって行方をくらませていた者達ではないか! 〉


 セラヒムの驚愕に染まる音声が聞こえ、映像を確認すると、そこには三十人以上はいる黒翼の有翼人と無数のガーゴイル達が飛び去り、別のガーゴイル達がセラヒム達を取り囲んで動きを封じていた。


 というかカーミラに支配されている有翼人は少数だと言っていたけど、あれのどこが少数なんだ? 行方不明者がいたなんて聞いていないぞ。セラヒムの事だから外聞をはばかり黙っていたのか。


「多少計画は狂いましたが、その都度修正すればいいだけです。我が君の大望を果たすには有翼人は非常に邪魔なんですよ。いえ、有翼人だけではなく、世界を守護する他の種族も邪魔になる。ライル君には少なからず感謝しているのですよ? エルフ、ドワーフ、人魚を一つに纏めてくれたお陰で有翼人が孤立する事になり、彼らの数を減らす絶好の機会に恵まれたのですから! まぁ、貴方達に助けを求めてあの街に行ったのは予想外でしたがね。さて、今まで少しずつ支配してきた有翼人の数はこれで十分でしょう。ここからは彼等に手薄になっている集落を叩いてもらいます。これで有翼人達は空を管理しきれなくなる」


 有翼人の数を減らし、空の管理という神からの使命を果たせなくするのが目的か。このままでは集落が危ない!


 今設置している結界では、魔物の侵入は防げても、あの魔術で支配されている黒翼の有翼人には適応されない。もし侵入されて結界の魔道具が壊されでもしたら、あのガーゴイル達を阻むものが無くなってしまう。主力の殆どはセラヒムが連れてきているので集落にはまともに戦える者は残っていないだろう。

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