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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十四幕】翼を持つ者の誇りと使命
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25

 

 着々と準備を進めていくセラヒムよりも早くエリアスを助け出さないと、コルネウス達との戦闘が始まってからでは無事でいられる可能性は低い。


 今、ミカイルとコルネウスはまだ言い争っているが、いつそれが肉体言語に変わってもおかしくない。それでもミカイルから手を出さないのは、エリアスの安全を考慮してるからだ。


 このままではミカイルに勝ち目なんてない。攻め込もうとしているセラヒムよりも、ミカイルを引き入れようとするコルネウスが痺れを切らすよりも早く、エリアスを探し出して救う。


 その為に、ハニービィ達に麓の森を捜索してもらっているが、実際に俺もその場所に赴かなければならない。でも俺の飛行速度ではすぐに準備を終えたセラヒム達に追い抜かれてしまう。


「ならば我がライルを運んでやろう」


「え? ギルが俺を? 」


 確かに、遅いのなら速く飛べる者に頼めばそれで済む問題だ。良し! そうと決まれば早速出発だ。俺自身で飛ぶ訳ではないから楽だよな―― なんて思っていた時期が俺にもありました。



「アババババ!! は、速い! 速すぎるよ!! く、空気が! 圧が!! 」


 俺は人化しているギルの小脇に荷物のように抱えられ、猛スピードの中で悶絶していた。


 誰だよ! 自分で飛ぶ訳じゃないから楽なんて言った奴は! はい、俺でしたすいません!!




「大丈夫? ライル」


 目的地であるマスナル山の麓に広がる森の中でぐったりしている俺に、魔力収納から出てきたエレミアが心配そうに声を掛ける。


「あれぐらいでだらしがないぞ? 有翼人の子供でさえあの速さで飛べるというに」


 此方は飛び始めたばかりで、ずぶの素人なんだよ! お前達と一緒にするんじゃない!! なんて言えたらどれだけスッキリするか……


「…… ぜ、善処します」


 その時、山の方から大きな音が聞こえてくる。監視しているハニービィからの映像には、ミカイルとコルネウスが激しい戦闘を繰り広げていた。


 あぁ、遂に肉体言語で語り合い始めたか。お互いに武器は無し、ミカイルは魔法で、コルネウスは…… 魔術か? を使って戦っている。


 ミカイルの背中にある六枚全ての翼の先に光が収束し始め、六本の筋となりコルネウスへ伸びていき、奴の腹部、顔、肩、太腿、黒い翼を貫いた。


 高温の光の筋に傷口は焼かれ、微かに煙が上がっている。普通ならあの傷ではもう助からないだろう。だがしかし、コルネウスはニヤリと笑ったかと思うとたちどころに体に開いた穴が閉じていく。


 〈ハハハハ! どうだ? 素晴らしいだろ? 私の魂は魔力結晶により保護されているから、例え頭を潰されようとも死ぬことは無い。この体で新しき世界で共に永遠を過ごそうじゃないか〉


 〈化け物め、そんな体になど誰がなるものか。魂を保護? そんな事をすれば世界の理から離脱してしまう。その証拠に魔法スキルが無くなったんじゃないか? 神の恩恵である魔法を捨てる程の価値がそれにはあるのか? 〉


 へぇ、あの肉体にはそんなデメリットがあるのか。じゃあ、カーミラもダールグリフも、サンドレアで会った骸骨のレオポルドも魔法は使えない訳か。


 〈魔法? そんなものはもう必要ない。私には魔術があるからな。人間は好かんが、この魔術を開発したことだけは認めてやる。この力を利用すれば何だって出来るぞ! 有翼人の未来は偽りの神の支配から抜け出し、新しき世界で新たな主を得るのだ!! 〉


 意気揚々と両手を高らかに広げるコルネウスを、冷めた目で見詰めるミカイルが口を開く。


 〈利用だと? 哀れだな。人間に与えられた力で己が利用されているとも気付かないとは…… そこまで愚かになってしまったか〉


 〈フッ、何とでも言うが良い。すぐにお前もこの良さが分かるだろう。さぁ、これで私を殺すのは不可能だと理解したよな? もう一度問う。私と共に来る気はないか? まぁ断ればエリアスがどうなるか、想像に容易いだろうがな〉


 自信満々な態度で聞いてくるコルネウスに、ミカイルは鋭く睨み付けて答えた。


 〈卑怯者め。有翼人の気高き誇りすら忘れた貴様に、俺が賛同する筈もない。お前達の仲間になるくらいなら、エリアスと共に死を選ぶ! 〉


 〈まったく、お前がそこまで理解に乏しい奴だとは思わなかったよ。これはもう少し体で分からせる必要があるな〉


 二人は再び激しくぶつかり合う。魔術を行使して攻めるコルネウスに、ミカイルの顔色は宜しくない。何だか戦いにくそうにしている感じに見受けられる。


『恐らくは、エリアスさんが気にかかって集中出来ないのでしょう。先程彼はああ言いましたが、大切なお方ですから、出来るならば救いたいと思うのは当然かと? 』


 魔力収納内で俺と一緒に二人のやり取りを見ていたゲイリッヒが、ミカイルの心情を推察する。


 ハニービィ達からの報告はない。まだか? まだ見つからないのか? このままでは、ミカイルもエリアスも死んでしまうかも知れない。いや、それだけならまだましだ。最悪、カーミラの実験材料にされてしまう恐れがある。


 気持ちばかりがはやる中、クイーンから報告が上がった。


『主様、見付けました』


 流石ハニービィ達、でかした! 場所は? 早く助けに行こう!

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