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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十四幕】翼を持つ者の誇りと使命
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24

 

「エリアスは今どこにいる! 本当に無事なんだろうな! 」


「あぁ、お前が大人しく俺についてきてくれるのなら、な。だが、そこの人間とギルディエンテ様は残ってもらう。来るのはミカイル、お前一人だけだ」


 考えなくても罠だと分かる。それに言うことを聞いたところで本当にエリアスを返してくれるなんて限らない。


「分かった。何処へなりとも連れていくがいい。だかな、もしエリアスに危害を加えていたのなら、その時は覚悟しておけ」


 俺はコルネウスに気付かれないよう、細くした自分の魔力をミカイルに繋げて念話を送った。


『良いんですか? 絶対に罠ですよ? 』


『む? これは魔力で意思を伝達しているのか。いつ魔力を繋げてきたのか分からなかった。俺の指導の賜物だな』


『そこは感謝してますが、今はそんなことを言ってる場合ではありませんよ』


『フッ、問題ない。それよりも俺が奴についていった後、族長にこの事を知らせてくれ』


『分かりました。お気をつけて』


 エリアスを人質に取られている以上、従うしかない。俺とギルは飛び去っていく二人を黙って見送るしかなかった―― と思うなかれ。


『クイーン、ハニービィ達に尾行を頼みたい』


『了解、主様』


 数匹のハニービィが魔力収納から出て、ミカイルの後を追う。


「では、セラヒムの所へ行こうか。転移魔術でも使われたら厄介だ」


 ギルの懸念は尤もだ。カーミラの仲間になっているのなら、転移魔術が刻まれた魔石ないし魔核を所持しているかも知れない。結界の外に出ている今、転移を使われでもしたら足取りが掴めなくなってしまう。


 俺は急いで来た道を戻り、族長のセラヒムへ報告した。


「成る程、奴が何を企みミカイルを連れていったかは分からぬが、これを機に奴等を一網打尽にしてくれようぞ。おい! 他の集落にも呼び掛け、人を集めろ。今度は此方から打って出る! 」


 命令を受けた有翼人が慌てて家から出ていくのを見て、俺は少し焦った。


「いや、あの…… エリアスさんはどうするんですか? 」


「あやつも誇り高き有翼人の一人。我等の足手まといになるくらいなら死を選ぶだろう」


 それってつまり見殺しにするって意味か? それじゃ、何のためにミカイルは一人で敵地に向かったんだ? そんなのってあんまりじゃないか。


「お前の仲間が尾行しているんだったな。奴が何処に向かっているか分かるか? 」


「えぇ、分かりますが…… 」


 コルネウスとミカイルが向かっている方角を聞いたセラヒムは軽く頷いた。


「成る程、その方角だと恐らくはマスナル山へ向かっているな。確か麓は深い森になっていた筈だ。奴等が潜むには丁度良い場所だ」


 セラヒムの言う通り、コルネウスとミカイルは麓が森に囲まれた山に降り立った。ここから結構な距離はあるが、有翼人の飛行速度ならそんなに時間は掛からないだろう。


 セラヒムが大勢の有翼人達を引き連れていけば、相手を刺激しエリアスがどうなるか、最悪殺される事も有り得る。


 ん? クイーンを経由してハニービィから映像と音声が送られてきた。


 〈エリアスは何処にいる? お前についていけば解放するのではないのか? 〉


 〈私はただついてこいと言っただけで、解放するとは言ってないがな…… まぁそんな怖い顔をするなよ。今頃はあの人間がセラヒムに報告している頃だろう。奴の事だ、どうせ人を集めて此方に向かう筈。時間がないから手短に言うぞ? ミカイル、私と共に来い。他の連中は新たな神に仕えようと考えているが、もう誰かの言いなりになるのは御免だ。私と一緒に新しき世界で自由に暮らそうではないか。何者の支配も受けず、私とお前、二人で生きて行こう〉


 〈悪いが、俺はこの世界で神の為に働き、エリアスと共に生きていくと誓ったのだ。お前とではない! 〉


 〈そうか、また私を拒むのだな。そんなにあいつが良いのか? あんな翼が二枚だけの者より、私の方が何倍も美しいではないか! 私の何が不満だと言うのだ!! 〉


 あれ? 何だか修羅場っぽくなってきたな。これってもしかしなくても痴情のもつれ?


『うわっ、ライル! なんか面白そうな事になってんね。この後どうなんの? どうなっちゃうの!? 』


『それは普通にミカイルがコルネウスを振っておしまいでは? 会話から察するに、既に一度断られてるようですし、エリアスさん一筋みたいなので』


『でも、愛する者を守る為に望まぬ相手を選ぶかもよ? ミカイルならそんな選択をしそうじゃない? 』


 俺の魔力を通してハニービィから送られてきている映像を見たアンネ、アグネーゼ、エレミアの三人は謎のテンションで盛り上がっていた。


 おいおい、恋愛ドラマを見ているんじゃないだぞ? もう少し危機感を持ってくれよ。コルネウスがミカイルを想っているのなら、エリアスは邪魔者になる訳だから、かなり危ない状況にある。


『クイーン、ハニービィ達で麓の森を捜索してくれないか? それで何か見つけたら俺に報告してほしい』


『了解、すぐに向かわせる』


 エリアスを無事に解放するとは思えない。セラヒムも助ける気はないみたいだし、ここは俺が救い出さないと。



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