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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十四幕】翼を持つ者の誇りと使命
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20

 

「さて、そろそろ帰ろうか」


 ギムルッドが持ってきた酒瓶が全部空になった頃、イズディアが席を立つ。


 これで終わり? まだセラヒムからの返事はないけど、それでいいの?


「久方振りにワシ等が酒を飲み交わして語り合った。それで充分じゃよ」


「私達が言うべきことは言ったわ。後はセラヒムが決めることよ。もうここにいる理由も必要もないわね」


 ギムルッドとリュティスも席を離れ、家から出ていく。そんな三人をセラヒムは一度も目を向けず、ただじっと空になったグラスを見詰めていた。





「待ってくれ。集落の防衛に協力してくれるのではなかったのか? 」


 転移門で帰ろうとする三人を、ミカイルが呼び止める。


「そうしたいのじゃが、セラヒムがあれではの。あやつが答えを出さん限り、ワシ等は何も出来ん」


 そんな…… とガックリ項垂れるミカイルの肩に、そっとイズディアが手を置いた。


「すまない、今私達がしてやれる事はないんだ。“私達” はね」


 うん? 何その含みのある言い方。嫌な予感しかしないんですけど? それとリュティスさん、俺に向けてウインクしないで下さい。


 そして三人は本当に転移門で帰っていった。あぁ、俺もその門を潜ってインファネースに帰りたかったけど、イズディアが余計な一言を残したせいで帰りづらくなってしまった。


「さて、お前に聞きたい事がある。先程のイズディアの言葉、あれはどういう意味だ? この集落を守る術を、お前は知っているのか? 」


「いや…… それは多分、結界の事を言っていたのではないかと? 」


 俺はミカイルにインファネースやエルフの里、ドワーフの国、人魚の島に張られている結界の魔道具について話した。


「成る程、転移魔術をも防ぐ結界か。それならこの集落を守れる。問題は人間が作った物を族長が受け入れてくれるのか、それと結界を維持する魔力をどうするかだ」


「前者はセラヒムさん次第なので何とも…… 後者の方は、毎日誰かが魔道具に自分の魔力を籠めてさえすれば問題ないと思いますが、それでも辛いと言うならば、魔石や魔核からでも魔力を補充出来ますよ? 」


「そうか、魔核なら狩りの次いでに魔物を倒せば手に入るな。良し、ならば明日、族長に許可を貰いに行くぞ」


 えぇ~…… それ大丈夫なの? 人間が作った物だし、ちゃんと許可してくれるかね?


「集落を守る為だ。それに、今の族長なら首を縦に振って下さるだろう」


 本当に? 何の根拠でそうなったのか分からないけど、信じても良いんだよね?



 翌朝。俺達はまた族長の元に赴き、結界の設置許可を求めた。


「好きにするが良い」


 あれ? 意外とすんなりいけたな。


「宜しいのですか? 」


「あぁ、良い。今の人間達の魔術がどれ程のものか調べる必要もあるからな。だが、何か不始末があるかも知れん。警戒は怠るな」


 早速ギムルッドの言ったことを実践しているあたり、真面目だなぁと思う。でも、この調子でどんどん臨機応変な考えをしていってほしいものだ。


 結界の魔道具は族長宅の庭に設置した。設定も有翼人以外入れないようにしたけど、集落を襲ってきているのも一応同じ有翼人なので結界の対象にはならない。


「子細無い。あの魔物どもさえ我が集落に入れなければ良いのだ。我等有翼人の名に泥をつけたあの愚かな同胞だった者だけなら何とかなる」


 ミカイルがそう言うなら大丈夫なのだろう。有翼人の集落はそんなには大きくないので、魔道具は一つで十分。範囲を最大にして発動すると、魔力の膜が集落全体を覆うのが俺の目に映る。


 これで取り敢えずは安心出来るかな? なんて思っていると、


「さあ、次の集落に魔道具を設置しに行くぞ」


「え? 次のって、有翼人の集落はここだけでは無いのですか? 」


「何を言ってる、そんな筈がないだろ? 第一ここにいる人数だけで広い空を管理など出来るものか。ここの他にも、別の山の頂上付近に我等有翼人の集落がある」


「それでは、後どれ程の集落があるのですか? 」


「ここを含めて、全部で五つの集落がある」


 という事はあと四つの集落をまわらなければならないのか。それも此処とは違う山なので、自ずと空を飛んでの移動となる。


 その方が早いとは分かるけど、どうにも乗り気がしない。しかしここまで来て我が儘を言える筈もなく、覚悟を決めて次の集落がある山へと向かおうとしていたとき、別の山から光が打ち上がるのが見えた。


「あれは何です? 何かの合図ですか? …… ミカイルさん? 」


 返事が無いので横にいるミカイルに顔を向けると、驚きと怒りが入り混ざったかのような表情を浮かべ、その光を見上げている。


「あれは別集落からの救援の合図だ。つまり、奴等が来たという事。俺はすぐに向かわねばならない」


「ふむ、なら我も同行しようではないか。その裏切り者の有翼人も見てみたいのでな」


「感謝致します、ギルディエンテ様」


 その場でミカイルとギルの二人は光が打ち上がった山へ猛スピードで飛んでいく。良く見れば、他の有翼人達も槍を持って救援に向かっていた。


『ほら! 早くライルも飛んで後を追うよ! 』


 魔力収納の中からアンネが急かしてくる。


 あ、やっぱり俺も行くのね? しょうがない、カーミラが関わっている以上看過出来るものではないし、諦めて飛びますか。だけど有翼人みたいなスピードはまだ出せないから文句は言わないでくれよ?

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