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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十四幕】翼を持つ者の誇りと使命
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16

 

「族長、セラヒム。これはもう有翼人達の問題では収まらぬのだ。この世界の危機に、有翼人の立場などに拘っている場合ではない」


 魔力収納から出てくるギルを目の当たりにして、セラヒムに動揺の色が見えたが、何とか平静を維持した。


「これはギルディエンテ様。封印が解かれた事、誠に喜ばしく思います。確かに、カーミラと名乗るあの人間は世界を脅かす存在であるとは認めますが、今此方を度々襲撃にくる輩は、その人間に誑かされ、一族の誇りを汚した我が同胞であった者達。ですから、これに関しては有翼人だけの問題とも言えます。ギルディエンテ様のお心使いには感謝致しますが、どうか手出しは無用でお願いします」


 言葉とは裏腹に、ギルを見詰めるセラヒムの目は厳しいものだった。


 そんなセラヒムの態度にギルはやれやれと呆れた様子で首を振り、族長宅から出ていく。俺とミカイルも後を追って外に出た所で、ギルが大きな溜め息を吐いた。


「まったく、どうしてあやつはあのように物分かりが悪いのだ」


「申し訳ありません、ギルディエンテ様。セラヒム様も他の種族と協力するのは否定的ではないと思うのですが、この問題を我等だけで解決しなければ、他の者達に示しがつかないとお考えなのです」


 一族から裏切り者が出てしまった負い目からか、何としてでも自分達でけじめをつけなれば、他の種族に会わせる顔がないと言う事なのか? 自分の子供が悪さして、近所で有名になったから恥ずかしくて外に出られないみたいな?


「それで? これからどうする? 」


「もう日も暮れますので一旦我が家に向かい、そこで今後の相談を致しましょう」


 族長宅からまた空を飛び、ミカイルの家に向かう。有翼人達の家は綺麗にカットされた岩の壁に屋根と扉は木製のシンプルなものだ。他の種族との交流がないと言っていたので、全部有翼人達が作ったのだろう。


「我々の豊富な知識と魔法の腕があれば、このくらい造作もない」


 さも当然だと言うミカイルだったが、その顔は何処か誇らしげであった。


 そして俺達はある一軒の家の前で降りる。どうやらここがミカイルの住んでいる家のようだ。


「今帰ったぞ」


 玄関先でミカイルがそう言うと、二枚一対の翼を持つ一人の有翼人が出迎えてくれた。


「あぁ、おかえり。思ったより時間が掛かったね。心配したよ、上手くいかなかったのかい? 」


「いや、他の種族の長達とは会えたのだが、色々とあってな…… 詳しくは家の中で話そう」


 途中、言葉を切って此方にちらりと視線を向けるミカイルにつられ、その有翼人も俺に目を向ける。


「そう…… 確かに色々とあったみたいだね。ミカイルが僕達の集落に人間をつれてくるなんて」


「すまないな」


 やはり此処でも人間というだけで敬遠されてしまう。でもそれよりも気になるのは、この有翼人とミカイルとの関係だ。一緒に住んでいるから家族なのかな? リビングのような広い部屋に案内され、木製の椅子に座った所で取り合えず自己紹介をしておく。


「あの、初めまして。ライルと申します」


「僕はエリアスだ。人間が此処まで来るなんて初めての事だよ」


「はぁ、そうなんですね。それであの、ひとつお伺いしたいのですが、お二人の関係はどういったもので? いえ、少し気になったものですから」


 不躾ではあるけど、やっぱり好奇心には勝てなかったよ。


「エリアスは俺の連れ合いだ」


 うん? 連れ合い? それって妻とか夫とかの意味だよな? え? エリアスって女性なの? でもそう言われれば女性に見えなくもない。何で有翼人ってこうも見た目で性別が判断しづらいんだ。


 ミカイルの答えを聞き、軽くパニックに陥る俺を見てエリアスは苦笑していた。


「まぁ、今の人間は僕達の事をあまり良く知らないから、驚くよね? 僕とミカイルはね、お互いに妻でもあり、夫でもあるのさ」


「えっと…… すいません。ますます分からなくなってきました」


「つまり我等には性別が無いのだ。いや、厳密に言うと男性と女性を併せ持つ存在とでも言えば良いか」 


 それって、もしかして……


「つまり僕達は、どちらも子供が産めるし作れるって事だよ」


 雌雄同体というやつか。だから有翼人は皆男性とも女性とも取れる顔付きをしてるんだな。どうりでミカイルの性別が見た目で判断出来なかった訳だ。なんか、有翼人って凄いな。


「で? いったい何があったのか説明してくれない? 」


 ミカイルはインファネースに来てからこれまでの大まかな事情をエリアスに伝えていく。


「まさか、この人間が神に選ばれたって言うの? でも、その膨大な魔力は確かに人の身ではあり得ない。本当の事なんだね。それとギルディエンテ様、ご挨拶が遅れて申し訳ありませんでした。封印からの復活、心よりお喜び申し上げます」


 恭しく頭を下げるエリアスに、ギルは満足げに頷く。


「あの、それで転移門の設置はどうすれば? 」


「それなんだがな、セラヒム様には了承が得られなかったが、先も言った通り時間が惜しい。よって俺の敷地内で勝手に置こうかと考えている」


 え? それって大丈夫なの? 絶対後で怒られるやつだよ。

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