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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十四幕】翼を持つ者の誇りと使命
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4

 

「神敵ねぇ…… どんどん物騒な世の中になっていくな」


「そっすね。サンドレアでもあんな事があったっすから、オレッち達の知らない所で何かとんでもない事でも起きてるんっすかね? 」


「だとしたら、このまま知らなくていい。知ってしまったらまた面倒に巻き込まれそうだからな。そういう訳だからライル、何も言うんじゃねぇぞ? どうせお前も一枚噛んでいるんだろ? 」


 店にあるテーブル席に着き、涼んでいるガストールがジロリと俺を睨み、ルベルトも両耳を塞いで首を振っていた。グリムは何時もの如く何も喋らないかと思いきや、


『俺達は自分の力量を弁えている。今噂になっている神敵とやらには、すまないが役にたてそうもない』


 と、魔力念話で話し掛けてきた。どうやら最近こうやってコミュニケーションを図っているらしい。口で喋るよりずっと楽だと喜んでいた。


「まぁ、確かにそうですけど。どうしても力が必要になった時は頼っても良いですか? 」


「内容と金次第だな。あんまり無茶はしたくねぇ」


 ほんといい性格してるよ。この先どんな事になったとしても、ガストールのような奴がしぶとく生き残りそうだ。


「最近よく来てくれますよね? 仕事はしなくて良いんですか? 」


 紅茶のお代わりを持ってきたキッカが、店に入り浸っているガストール達に疑問を感じて聞いてくる。


「ん? そりゃ、サンドレアの一件でたんまりと金が入ったからな、暫く仕事は休みだ。しかし、こうも暑いと外に出るのも億劫でよ。だからと言って部屋にいても暑いだけだし、こうしてライルんとこで涼みに来ている訳だ」


「なに堂々と冷やかし発言してるんですか! クーラーなら冒険者ギルドにもあるのでは? なんで此処に? 」


 思わず声を荒らげた俺に、ガストールはやれやれと困ったように髪の無い頭を乱暴に掻く。


「なんで休んでんのにギルドに行かなきゃならねぇんだよ。それにな、あそこは人が密集してっから幾らクーラーがあったとしても、暑苦しくて落ち着かねぇ」


 何だそれ? どいつもこいつも人の店を避暑地かなんかだと思っているらしく、終いには狭いから店を拡げてくれないかと言ってくる。まったく、そうして欲しかったら商品を沢山買って貢献してくれ。それなら考えなくもない。


 結局、ガストール達は日が沈むまで居座り、酒を買って帰っていった。これから自分達の部屋で飲み明かすのだそうだ。羨ましい生活だよ。



 夕食を済ませた頃、俺の分の食器を下げてくれているゲイリッヒにエレミアが近付き、頼みごとをしていた。


「ほぅ? 私に鍛えてほしいと? 」


「そうよ。サンドレアでは私の力不足を実感したわ。これじゃライルを守りきれる自信がないの。二千年生きてきた貴方なら、剣術の一つや二つ習ってるんじゃないの? それを私に教えて欲しい」


「我が主の為ですか…… 承知致しました。私の拙い武芸でよろしければ喜んで」



 それからゲイリッヒによる稽古が始まった。流石に中庭では目立つので、魔力収納内に訓練所を作り、そこで店を閉めた後にエレミアは特訓を受けている。


『もっと素早く、的確に! 武器の特性を理解し、最大限に活用するのです! まだまだその武器を操れているとは言い難いですよ!! 』


 ゲイリッヒが振るう血で形成された大鎌を、エレミアは蛇腹剣で防ぎ反撃に出るが、どれも相手には届かない。


『今日はここまでと致しましょうか? エレミアさんの動きはまだまだ無駄が多く、そのぶん体力も消耗しやすい。先ずはご自身の武器を良く知ることです。その蛇腹剣、一見便利そうではありますが癖が強い。伸ばした剣身を戻す時に大きな隙が出来てしまいますので、その時の立ち回りが重用となるかと』


『でも、どうすれば? 』


『申し訳ありませんが、私はその武器を使うような武術は知りません。なので、エレミアさん自身がこの訓練で模索するしかありませんね。私が知り得る限りをお教え致しますので、その中でご自分の戦い方を固めて行きましょう』


 中々に苦戦しているみたいだけど、諦める様子は見えない。普通の剣に変えようかと提案もしてみたが、仁辺もなく却下されてしまった。


「ライルが私の為に作ってくれた武器だから、完璧に使いこなして見せるわ」


 そう言うエレミアの瞳に浮かぶ魔術陣が、燃えるように蒼く輝いていた。


 幸いな事に、魔力収納にはゲイリッヒを始め、ギルにムウナもいるので訓練相手には事欠かない。こんな強者達と訓練を重ねられるのなら、エレミアが今よりもっと強くなるのにそう時間は掛からないだろう。


 一心不乱に剣を振るうエレミアを見てると、俺もこのままではいけないと思った。せめて足手まといにならないくらいにはしておきたい。


 だが、この体では鍛えてもたかが知れている。なら魔力操作を中心に鍛えて自分のスキルを使いこなせるようにした方が良い。


 敵はカーミラ一人ではなく、強力な再生力と身体強化を持つダールグリフ、強化され新たな肉体を手に入れたキラービィとそのクイーン、そしてサンドレアで出会った骸骨のレオポルド。他にもまだそういう奴等がいるかも知れない。


 ゴブリンキングと同じように、アンデットキングが奴等の手に渡るのは阻止出来たが、既にオークキング、オーガキングと二体のキング種がカーミラ達に捕らわれている状況だ。ギルとアンネの話では、残りのキング種はあと三体はいるとのこと。もうこれ以上はキング種を渡す訳にはいかない。



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