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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第二幕】マナの大樹と眼なしのエルフ
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24

 

「マナが枯渇すると、どうなるのですか?」


「魔力が無くなるのだから魔法、魔術が使えなくなるのは勿論、生き物にも何かしらの影響が出ると予想している。 例えば、全ての生物の弱体化などだな」


 それは困る。魔力が無くなるということは、俺のスキルが役に立たなくなるということだ。 そうなってしまえば日常生活も今のように出来なくなる。


「それだけじゃないよ、マナが無くなったら、わたし達妖精はこの世界にいられなくなっちゃう」


 アンネが珍しく沈んだ様子だった。……え? アンネがこの世界にいられなくなる?


「わたし達はマナや魔力を取り込み生きているの。それがなくなるというのは、空気が無くなるのと一緒なんだよ」


 確かに、世界から空気が無くなったら今の生物は生きていけない。これは大事だな。


「どのくらいでマナが枯渇すると予想していますか?」


 イズディアは宙を見詰め暫し考え、


「今はマナの木が不足している状況だ。マナを生み出す量に対して消費量が上回っている。このまま行けば、七百年程でマナ不足に陥るだろう」


「七百年? 結構ありますね」


 なんだ、数十年後とか思ってた。


「七百年なんて、あっという間だよ! そりゃ、ライルは人間だから寿命で死んじゃうけど、私達は違うんだからね! 存続の危機なの!」


 そうだった、エルフや妖精は長命だからな。 それに、エレミアの眼もまた見えなくなってしまう。 どうにかしないと。


「何か打開策はあるのですか?」


「それを今、アンネと共に探している所だが、なんの進展もなくてな…… 実はこのマナの大樹は弱っていて、このままだと枯れてしまう。 そうなってしまえば、もっと早くにマナ不足になる。原因は分かったのだが解決策が見付からず困っている」


 弱っている? この大樹が?


「原因は何ですか?」


「栄養不足だ。 アンネの精霊魔法で調べて貰った結果、大樹の栄養が何処かへ流れているらしい」


「栄養不足?」


「そうなのよ、大樹に宿る精霊達に聞いたら、ひもじい~、お腹すいた~って嘆んでいたわ」


 アンネの言うことが正しければ、間違いなく栄養不足だな。それを解消するには単純に考えて栄養を与えればいいんだが、こんなでかい樹が満足するほどの栄養を何処から持ってきて、どうやって与えればいいんだ?


「ここで、ライルの出番って訳よ! 恐らく、大樹の栄養不足は自身の栄養を魔力へと変換しているせいよ。精霊達のお腹が空いてるのは大樹の魔力不足が原因なの。 そこでライルのスキルを使って、大樹の魔力に波長を合わせて、送り込めば何とかなるかもしれない」


 ん~? 大樹の魔力が不足しているから自分の栄養から魔力を捻出して、それで栄養不足になっているってことか? ややこしいな。


「でも、何のために大樹は魔力を必要としているんだ?」


「う~ん…… それは分かんないけど、とにかく魔力が必要なの!」


 大樹の波長に合わせる……か。 貴重な一本だからな、枯らす訳には行かない。


「分かった。とにかくやってみるよ」


「すまない、アンネから君なら何とかなるかもと言われていたんだが、部外者を連れてきていい場所ではなくてね。本来なら私達で解決したかったんだが」


 イズディアは眉間に深い皺を刻み、悔しそうにしていた。 そんな彼に「いえ、気にしないでください」と声を掛け、俺は自分の魔力を大樹の魔力に波長を合わせ送り込んだ。


 大樹は俺の魔力をどんどん吸い込んできた――まるで吸引力が変わらない某掃除機のようだ。 物凄い早さで俺の魔力が減っていく、それでも魔力を送り続けていると、突然ギルが叫んだ。


『やめろ!! それ以上はお前の身がもたんぞ!』


 咄嗟に魔力を切ると、とてつもない疲労感が襲ってきた。立っていることが出来ずその場で座り込んでしまう。息が切れ、動悸が激しい。 視界が揺れて、今にも吐きそうだ。 以前にも同じような経験をした事がある。 スキルの検証をして魔力切れで倒れた時と同じだ。


「大丈夫!? ライル、しっかり!」


「魔力切れを起こしているようだ、無理に動かずじっとしているんだ」


 心配した二人が近づき様子を伺っている。


「た、大樹は…… どう、なりまし、た?」


 息も切れ切れで伝えると、アンネが精霊魔法で大樹を調べた。


「やっぱり、あれだけ魔力を注いだのに殆どが無くなってる。 暫くはもつかも知れないけど、定期的に魔力を注いで様子を見るしかないね」


 あれで、万事解決にはならないか。


「ライル君、魔力が回復したらでいいんだが、またお願いしてもいいかな?」


「は、はい…… だ、大丈夫です」


 こうして、俺は定期的に大樹に魔力を注ぎ込むという仕事が増えた。

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