表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十三幕】砂の王国と堕落せし王
393/812

78

 

 さて、城付近には着いたけど、どうやって中に入ろう? 正面から強引に押し通るか? でもそれだと忍び込んでいる殿下達に迷惑が掛かるかも。


「ねぇ、何ならあたしが先に行ってさ、ライル達を入れてあげよっか? 」


 成る程、アンネなら小さいし空も飛べるから気付かれにくい。それで城の中を確認して精霊魔法で空間を繋げば、俺達も侵入出来るな。


「うん、その案でいこう。頼むよ」


「うっし! そんじゃぱぱっと行ってくんね~」


 まるで散歩にでも行くように、アンネはスイスイと城へ飛んで行く。


 ふとゲイリッヒとテオドアの事が気になり、王都を囲んでいる防壁に顔を向ける。ちゃんとリビングアーマーを止めているだろうか?


「心配なのは分かるけど、今は信じるしかないわね」


 そうだな、エレミアの言うように信じるしかないか。


「私も心配です。戦場に紛れて人々を襲ってなければ良いのですが」


 アグネーゼの心配も当然だ。何せ救援に向かったのは本来なら敵であるアンデッドの二人なのだから。教会の者としては、安易に信じちゃ駄目なんだよね。


 まぁ、何かあったらテオドアから連絡が来るだろう。それにしても遅いな。もう城の中に入ってる筈なんだけど、アンネの身に何かあったのか?


『アンネ? もう城には入ったよな? 』


『うん、城には入ったんだけど、なんか様子が変なのよね~。皆その場で座り込んでぐったりしてんのよ』


 魔力念話で呼び掛けると、アンネからの返事があったので安心したが、別の不安ができてしまった。


『皆ってことは、使用人や警備の人達が? 』


『そう、皆だよ。なに? 城の人間ってこんな風にお昼寝すんの? 』


 いや、しないと思うよ。とにかくアンネに頼んで俺達を城の中に入れてもらった。


「確かにこれは異常ですね。でもアンデッド特有の穢れは感じません。ただ気を失っているようにも見えます」


 アグネーゼが通路で倒れている使用人の一人を調べ、そのように判断した。


「気を失っている? 何だかレイスを追い出した後の症状に似ているね。でも、殿下達は神官を連れていなかったしな」


「その殿下達に聞けば良いんじゃない? 」


 ごもっともな意見をありがとう、エレミア。さて、その殿下達は何処かな?


 集中して魔力を探ると殿下達らしき魔力を感知したので、それを頼りに城の中を進んだ先に、大きく重厚な扉の前に着いた。


「ここは謁見の間かな? 」


「だとしますと、この先にヴァンパイアとなった王がいるのでしょうか? 」


「そう思うけど、魔力を視るにそれらしい人はいないんだよね」


 謁見の間なら王がいても不思議ではないが、ユリウス殿下達の魔力しか視えないことに、俺とアグネーゼは揃って首を捻る。


「ここで考えたって仕方ないでしょ? 早く入りしょう」


 エレミアが扉に手を掛け開け放ち、歩いていく。慌てて俺とアグネーゼも後を追った。


「あれ? ライル君、どうしてここに? 確かゲイリッヒに会いに行ったのでは? 」


 謁見の間の中央に、クレス、レイシア、リリィ、それと目が赤く腫れたユリウス殿下がいた。もしかして、泣いてた? なんて言える訳もないので、そっとしておく。


「えぇっと、どう説明したら良いのか…… とにかく、一気に色んな事が起こりまして…… クレスさん達の方はどうです? 」


「あ、あぁ。此方は、ユリウス殿下が王を討ち取ったよ。まぁ、手放しで喜べないけどね」


 クレスの言葉を聞いて、レイシアとリリィも何だか微妙な表情を浮かべている。


 そうだよな、ヴァンパイアになったからと言って、実の父親をその手に掛けたんだ。素直には喜べないよ。


「ここに来るまで、多くの人達が気を失い倒れていたけど、あれもクレス達がやったの? 」


「え? それは本当かい? エレミア。いや、何もしていないよ。それに僕達が城に侵入した時は皆普通に働いていたんだけど」


 クレス達ではないとすると、いったい原因はなんなんだろう?


「あれじゃない? アンデッドキングが死んじゃったから、レイスが逃げ出したんじゃないの? 」


「アンネ、アンデッドキングが死んだって分かるもんなの? 」


「そりゃ同じ種族のキングが死んだら分かるわよ。そういう風に出来てんだから」


 へぇ、スキルか何かの影響なのかね。その辺りはアンネも良く分かっていないようだ。とにかく、アンデッドキングが死んだ事は、全てのアンデッドが既に把握しているらしい。


「い、今なんと言った? 私の聞き間違いでなければ、アンデッドキングが死んだと聞こえたのだが? 」


 それまで元気の無かったユリウス殿下が物凄い速さで詰め寄ってくる。顔が近いです殿下、今から説明しますから落ち着いて下さい。


 俺は殿下達に、ゲイリッヒの邸を訪ねた所から、今までを簡潔に説明した。


「はぁ、ライル君…… 君って人は、アンデッドキングの居場所を聞き出すだけだったのに、まさか倒してしまうなんて…… 何処まで予想を越える行動をしてくれるね」


「しかも、敵であるヴァンパイアを懐柔するなど、いったい何を考えているのだ! だが、よくぞアンデッドキングを討ち倒した! 」


「…… 結界の効果は問題なかった。後は耐久面の強化が必須」


 いや、そんなこと言われたってさ、突然だったんだ。此方も死ぬかと思ったよ。


 それとゲイリッヒに関してはその…… ぶっちゃけ連戦で疲れていたから、仲間に出来るのなら戦うより楽だと思ったんです。


 あとリリィ、結界の魔道具の件、よろしくお願いします。それと教会から託してもらった術式の改良もしなくちゃならないので、それもお願い。


「ア、アンデッドキングが死んだ…… 私達を、国を苦しめた元凶がいなくなったのか。ここは喜ぶべき事なんだろうが、今は何と言うか、色んな感情が沸き起こって混乱しているよ」


 えっと…… まぁ取り合えず、頭と気持ちの整理をしてから、この先どうするか考えましょうよ、殿下。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ