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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十三幕】砂の王国と堕落せし王
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「で? これはいったいどういう状況? なんでスケルトンとゲイリッヒが争ってるの? 仲間割れ? 」


 あ、やっぱりそう見える? そんなエレミアの疑問がレオポルドにはバッチリ聞こえてたみたいで、抗議の声を上げた。


「だからスケルトンではない! 俺はレオポルド、いずれ大陸中に名を馳せる芸術家だ!! 」


「うわ…… スケルトンが喋った。気持ち悪い」


「気持ち悪い? 言うに事欠いて気持ち悪いだと!? これだから芸術のげの字も分からない奴は…… おい、お前達! 先ずはあのエルフから片付けろ! 貴様の肉を全て削ぎ落として俺の作品に加えてやる。泣いて喜べ! 」


「ねぇ、ライル。あれは頭がおかしいの? それとも私を挑発する為の演技? 」


 エレミア、辛辣だね。取り合えずああいう人? だと答えておく。


「やれやれ、私も随分と舐められたものですね。片手間で相手が務まるとでも? 」


 少し苛つきを見せるゲイリッヒの大鎌が、エレミアの辛辣な言葉で気も(そぞ)ろなレオポルドに降り下ろされ、刃に形成された右腕を斬り落とす。


「ぬぁ!? これは油断が過ぎたな。この結界を壊さない限り外には出られそうもないし、出し惜しみしている場合ではなさそうだ。良いだろう、俺の最高傑作を見せやる! 」


 素早く落とされた右腕を着けたレオポルドは、ゲイリッヒとの距離を置き魔術を発動した。すると大柄な骸骨達が全て細かな粒子となり一つに纏まっていく。


 そして、この広い部屋の半分を埋め尽くす程の大きな竜へと形作る。胸の辺りには肋骨が牢のようになっていて、中にはアンデッドキングが囚われていた。


「これぞ俺の自信作、骨竜だ! 人間の骨格も美しいが、やはり竜のそれは格別だな! どうだ、素晴らしいだろ? 」


 骨竜と呼ぶものを、レオポルドは興奮を隠さずに見上げている。悪いけど俺には芸術の良さが理解出来ないみたいだ。こんなのが素晴らしいとは到底思えない。周りを見回すと、誰もが白い目でレオポルドを見つめていたので、俺だけじゃなかったと少し安堵した。


「さあ、骨竜よ! あの魔道具と共にあいつらを壊してしまえ! 」


 おいおい、いくら広いと言ってもこんな部屋の中で暴れられたんじゃヤバイだろ。


 骨竜の大きな腕が振るわれ、魔道具を叩き壊そうとする。


「させませんよ! 」


 しかしアルクス先生が魔道具を持って逃げ回り、その周りをアルラウネ達が囲い守っている。


「アルクス先生! 無茶はしないで下さい! 」


「なに、これぐらい大丈夫ですよ。それよりも早くアンデッドキングを! 」


 アルクス先生はこのまま逃げ続ける気は変わらないようだ。なら犠牲が出る前に終わらせなければ。


 エレミアが雷魔法と蛇腹剣で応戦しているが、あまり効いていないように見える。あの骨竜を倒すよりも、今も肋骨の中にぐったりと横たわるアンデッドキングをどうにかするのが先決か。


 奴の狙いはあくまでもキング種の肉体だ。もうこれ以上カーミラ達に渡してはならない。


「相棒、魔力の方はどうだ? 短時間で良いんだ、アンデッドキングに止めを刺すだけの僅かな時間さえあればな」


「今の俺の魔力だと、一分程しか持たないぞ? 」


「奴はもう虫の息、それだけあれば十分だ」


 それならと、俺はテオドアに魔力を繋げて供給を始める。


 魔力を補充されたテオドアは、アンデッドキングの傍まで飛んでいき、再び燃え盛る炎となって彼の体を包み込もうとする。


「これで終わりだ、クソガキ! 」


「やめろ! く、くるなぁ!! グアァァアァァァ!!! 」


 アンデッドキングの断末魔が部屋全体に響く。いくらヴァンパイアでも見た目が人間の少年と変わらないからか、見ていてとても心苦しい。つい心の中で謝ってしまいそうになるのをぐっと堪える。


 これは俺が選択した結果だ。謝って逃げるような真似なんかしたくない。しっかりと目を逸らさず正面から受け止めなくは。


 魔力が完全に尽きたアンデッドキングの肉体は灰となり、骨竜の肋骨の隙間からサラサラと溢れ落ちていった。


『ふぅ…… これで俺様の復讐は終わった。ありがとよ、相棒』


 通常の魔力の体に戻ったテオドアが感慨深そうに礼を言ってくる。


『お疲れ、テオドア。後はレオポルドを倒すだけだが、まだ動けるか? 』


『いや、わりぃ。もうこれ以上は動けそうもねぇ』


 それは仕方ない。アンデッドキング相手にあれだけ暴れたんだからな。俺はテオドアを魔力収納に入れて休ませる事にした。


 だが今もピンチは続いている。また俺の魔力は少なくなり、レオポルドと骨竜が猛威を振るう。アルラウネ達がついているからと言って、何時までも俺達が逃げられる訳でもないし、エレミアだけでは骨竜の相手は厳しい。


 どうするかと考えあぐねていたら、空が急に明るくなった。アンデッドキングが死んで、敷地内を覆っていたあの黒い結界が消えたのだろう。


 陽の光が降り注ぐ外から元気な声が聞こえてくる。あぁ…… いつもは騒がしい声も、今ここでは救いになるな。


「うりゃうりゃー!! 次はどいつが相手だぁ! 」


「ライル! ほね、カリカリで、いがいと、よかった」


 デスナイトを仕留めてきたと思われるアンネとムウナが、まだまだ元気一杯な様子で戻ってきた。


 アグネーゼの姿は見えないけど、外にいるのかな? まぁ、こいつらはアンデッドではないので浄化魔法が効きそうないから丁度良いか。

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