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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十三幕】砂の王国と堕落せし王
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 あれは何だ? 喋るスケルトン? いや、スケルトンには魂が宿っていないし、意思もないと聞く。あんな生きている人間のように振る舞うなんてのは出来ない筈だ。


 でも実際にあり得ない存在が目の前にいる。これはどう説明すれば良いんだ? 今まで見つかっていなかっただけで、魂が宿っているスケルトンもいるという事なのか?


「あぁ! 俺としたことが、あまりの感動で名乗りを忘れてしまった…… どうも、諸君! お初にお目にかかる。俺の名は “レオポルド” いずれ世界に名を残す芸術家である! 」


 スケルトンにも名前があるんだ…… て、芸術家って何だよ。もう情報が一遍にきて何からつっこめば良いのやら。取り合えず目的だけでも聞いておかないと。


「レオポルド、さん? でしたよね。俺達の邪魔をして、何が目的なのですか? 」


「フフ、そこのアンデッドキングが殺されるのは此方としても非常に困る。しかし、元気なアンデッドキングは俺の手に余るので、こうして弱った所を回収しにきた次第なのだよ! 」


 アンデッドキングを回収? するとこのスケルトン、カーミラの関係者か!?


「はぁ? つぅことはお前、カーミラの手下か? 随分と変わったスケルトンを作ったもんだな」


 テオドアの言葉を聞いたレオポルドは突然激昂した。


「失敬な!! あんな魔物と一緒にして貰っては困る! 良いかね? 魔物であるスケルトンの頭蓋には魔核があり、その光が眼窩から漏れ、目が赤く光っているように見える。それを踏まえてよく見たまえ! 俺の目は赤ではなく青く光っているではないか!! これは俺の魂を入れた魔力結晶の光である。まぁ、この体のお陰でアンデッドだらけのこの国に難なく溶け込めたのは事実だがね」


 成る程、他の奴等と同じようにカーミラから新しい体を貰い、サンドレアに潜伏していた訳だな。


「でも何故骸骨? 」


 あっ、つい思った事が口に出てしまった。


「何故だと? そんなのは決まっている。この骨だけの体こそが、俺の求めた究極の美だからだ!! 見よ! この汚れなき白さを、大腿骨の力強い太さを、肋骨の美しい曲線を、そして一人一人違う個性豊かな頭蓋骨を! 良いかね? 臭くて醜い肉の塊など俺の芸術には不必要なのだよ。余計なものを削ぎ落とした先に残る物こそ真に美しい…… これを芸術と呼ばずして何が芸術か!! 」


 うん、こいつは色々とヤバイ奴だ。出来るなら関り合いになりたくない部類だけど、カーミラの手の者だと分かった以上、見過ごす事は出来ない。


「悪いですが、アンデッドキングを渡すわけにはいきません」


「フッフン、そんなのは想定済みである。俺の魔術で作り上げた愛おしい作品達に敵うかな? 」


 これまでじっと立ち止まっていたスケルトン達が一斉に動き出した。


「このスケルトンは貴方が作ったのですか? 」


「だからスケルトンではないと言ってるだろう! 俺の芸術作品だ!! スケルトンなんかと違って、俺の言うことを良く聞いてくれるし、ずっと美しく仕上がっている。それだから気付かないんだよ、俺の作品達が今まで君達を監視していたのをさ。不本意だけど同じ骨である事には変わりないからね、アンデッド(ひし)めくこの国では随分と動き易かったよ」


 俺達を監視していたって? それじゃ、今まで襲って来ていたスケルトンの中にレオポルドの作品が混じっていたのか。


 まいったな、アンデッドキングとの戦いで魔力がだいぶ減ってしまって回復が間に合わない。テオドアも限界みたいだし、また横取りされてしまうのか。


 悔しくて歯噛みしていると、アンデッドキングを捕らえて運ぼうとしているレオポルドの芸術作品である骸骨達が、突然何かに切り裂かれバラバラと崩れていった。


「お、俺の作品達が!? 」


「なんとも無粋な輩ですね。彼等の素晴らしき死闘に水を差すとは、全くもって不作法極まりない。何が芸術家だ。貴様など、ただの異常者にすぎない」


 血で形成されたと思われる真っ赤な大鎌を構えるゲイリッヒが、冷めた目でレオポルドを見下す。


 あぁ…… この威圧感、かなり機嫌を損ねているようだ。


「ふっ、何を言われようとも結構。革新的な芸術とはそう簡単に受け入れて貰えないもの。だがしかし! どんなに批判されようとも己を貫いて行けば、何時の日か皆が俺の芸術に感動し求めてくると、そう確信している! 」


 あれは完全に自分の世界に浸りまくっていて、此方の言葉が届いていないな。聞こえてはいるが、考えるのを放棄しているようにも窺える。それにしても意外なのはゲイリッヒだ。まさかとは思うが、俺達に加勢してくれるのか?


「ゲイリッヒさん! 俺の魔力がある程度回復するまで、そのレオポルドとか言う骸骨を頼んでも宜しいですか? 」


「えぇ、勿論宜しいですよ。私もこの者の言動に少々癪にさわっていた所です」


 良し、ゲイリッヒは俺達に手を貸してくれるようだ。血の大鎌を大きく振りかぶり、レオポルドに迫って行く。


 切り裂かれた骸骨達をレオポルドは魔術で起こし、元の形へと直した。


「これはこれは、アンデッドキングを守る為とは言え、人間の言いなりかい? 最古のヴァンパイアなどと呼ばれていても、大したものではないねぇ」


「勘違いして貰っては困ります。アンデッドキングを守る為ではありません。それに彼は人の枠に収まりきれない御方。それが分からないようでは、貴方の目は見た通り節穴ですね」


「これは随分と手厳しい。では、その節穴の作品をもっと御覧に入れよう」


 レオポルドがまた魔術を発動させると、骸骨達が粉のように細かく崩れて一つに纏まり、見るからに骨太になった骸骨達が出来上がった。


「今度の作品は頑丈に作ってあるので、そう易々と壊せると思わない事だ」


「どんなに太くしようとも、所詮は骨。貴方はここで完璧に仕留めさせて貰います」


 レオポルドとゲイリッヒが戦っている間に魔力の回復を待つ。今こそアルクス先生が協力してくれた新しい結界魔術を張る時だ。ダールグリフのように、もう転移では逃さないからな。

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