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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十三幕】砂の王国と堕落せし王
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「…… 珍しくゲイリッヒから呼ばれて来てみれば、これはどういう状況だ? なあ、ボクに説明してくれない? どうして此処に人間とエルフがいるの? しかもその内の一人は教会に属する者だろ? 」


 身長は俺と同じくらいで体の線も細く、見た目は十五、六歳のような姿の少年が俺達を見て不機嫌そうに顔を歪める。


 あれがアンデッドキング? 何だか想像してたのとだいぶ違うな。もっとこう、髭を生やした威厳のある壮年の男性を想像してたんだけど。


「これはアンデッドキング、態々お越し頂き恐縮です。なに、この者達が貴方に会いたがっていましたので、こうして場を整えた次第ですよ」


「へぇ、ボクにねぇ…… それをしたって事はゲイリッヒ、君はボクを裏切ったと考えていいんだね? 」


「これは異なことを。私は始めから貴方に仕えていた訳ではありませんよ? 私が従うのはあの御方のみと心に決めておりますので。この場も裏切りとかそういうものではなく、ただ面白そうだからと思ったからです」


 あっけらかんとした様子で話すゲイリッヒに、アンデッドキングは俺達に聞こえるようにわざとらしく大きな舌打ちをした。


「あっそ。それで? 君らはボクに何の用があるのかな? ヴァンパイアになりたいの? まさかとは思うけど…… ボクを殺しに来たなんて言わないよね? 」


 その瞬間、アンデッドキングから殺気が溢れる。なんて威圧感だ、目を合わせただけで魂が持っていかれるかと思う程に凄まじい。はは…… 膝が笑ってるよ。情けないけど、怖いものは怖い。


 アンデッドキングが俺達を威嚇していると、魔力収納内からテオドア、アンネ、ムウナが俺の前に出てきた。


「やっと会えたな、クソガキが! 次こそてめぇをぶっ殺してやるぜ!! 」


「あれぇ? 誰かと思ったらテオドアじゃん! なに? 一人じゃ勝てないからって、こいつらに泣きついたの? せっかくボクが見逃してやったって言うのに、馬鹿だねぇ。今度はどんなに無様な命乞いをしたって、助けてやらないからね」


「上等だ! もうあんな真似誰がするかよ!! そうやって余裕かましてんのも今のうちだぜ。俺様の新しい力、その身をもって味わいやがれ! 」


「ハハハ! 魔力を吸う事しか出来ないあんたが何を言ってるんだか…… やれるもんならやってみろよ! テオドアァ!! 」


 アンデッドキングの足下から赤く光る魔術陣が広がり、その中から黒い霧のようなものが吹き出し、館だけには収まらず敷地全体を覆って陽の光を遮り、辺りが薄暗くなる。けど真っ暗闇という程ではなく、例えるなら曇り日の夕暮れぐらいの明るさだ。


「出てこい! ボク自慢の(しもべ)達よ! 」


 アンデッドキングがそう叫ぶと周りに闇が集り、中から禍禍しい鎧を着けた四体の大柄な骸骨が姿を現した。


「どうだい? 凄いだろ? ボクが丹精込めて作ったデスナイトはそこらのスケルトンとは格が違うんだよ。さぁ、デスナイト! こいつらを一人残さず殺してしまえ!! 」


 四体のデスナイト達が手に持っている剣を振り上げ襲ってくる。そこにエレミア、アンネ、ムウナが立ちはだかり、エレミアは蛇腹剣で、アンネは精霊魔法で空間を歪め、ムウナは龍に変化させた腕で、デスナイトの剣を受け止める。


「ライルに近寄るんじゃないわよ! 」


「ほね、まずそうだけど、ムウナ、がんばる! 」


「テオドア! あんたがアンデッドキングを倒すんでしょ? 雑魚はあたし達が相手してやるから、ちゃちゃっとやっちゃいなさいよね! 」


 うおりゃぁぁ!! と、アンネが風の精霊魔法でデスナイト達を纏めて窓から外へと吹き飛ばし、ムウナと共に後を追う。


「ここは俺とテオドアに任せて、エレミアとアグネーゼさんもムウナ達と一緒にあのデスナイトの相手をお願いします」


 エレミアとアグネーゼは、俺から離れることに少し迷っていたが、了承してくれた。


「分かりました。ライル様、ご武運を…… 」


「ライル、無理だけはしないようにね。駄目だと思ったら迷わず私の所まで逃げてくるのよ…… テオドア、ライルを頼んだわよ。もし見捨てたりなんかしたら、私があんたを消してやるから」


 そう言い残して、二人はデスナイトを追って窓から飛び降りた。



 部屋に残るは俺とテオドア、それとアンデッドキングにゲイリッヒの四人だ。


「へぇ、あの妖精、なかなかやるじゃん。でも、そんな人間一人残って意味あんの? 」


 アンデッドキングが小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、ゲイリッヒは興味深そうに俺達を観察している。


「相棒! ()()を使う。魔力の方は頼んだぜ!! 」


 そうか、やっぱり()()を使うんだな。それしかアンデッドキングに勝てる方法はない。俺も覚悟を決めて全力でテオドアをサポートしないとな。


 俺は今繋がっている魔力を全て切り、テオドア一人に集中させた。こうでもしないと、()()を使ったテオドアが消滅する恐れがあるからだ。


「こいよ、テオドア! 所詮魔力の塊に過ぎないお前には、ボクの肉体を傷付けるなんて出来やしない。でもボクの攻撃はお前の魔力ごと削り取る。勝ち目が無いのはもう知ってるだろ? 」


「あぁ、知ってるぜ。あの時、十分すぎるくらいに理解した。だけどな! それは以前の俺様だったなら、だ! 相棒と出会って手に入れた力、今見せてやるぜ! これが、てめぇをぶっ殺す、俺様の奥の手だぁ!! 」


 テオドアが気合いを入れて叫ぶと、自身に刻まれた魔術が発動する。テオドアの体を構築している魔力が魔術によって変質していき、真っ赤に燃え滾る炎へと変わった。


「は? なんだ、その姿は…… 」


 突然のテオドアの変貌で、アンデッドキングが唖然としている所に、炎と化した体で突っ込んでいく。


「なっ!? ぐわぁぁ!! あ、あつい! この、ボクから離れろぉぉ!! 」


 炎の体で纏わり付くテオドアに、苦戦しながらも血液操作のスキルで剣を形作って斬り払う。テオドアが離れた後には、所々火傷を負い、服も焦げているアンデッドキングがいた。その顔は憎悪に歪み、先程までの余裕はもう見受けられない。


「くそ! なんなんだ、それは! 」


「へっ! 言っただろ? てめぇを殺す為に手に入れた力だってな。あの時の恨み、百万倍にして返してやるから覚悟しやがれ! 」


 テオドアは燃える体でニヤリと笑った。


 うん、気分が良いのは分かるけどさ、早めにお願いします。その力、結構魔力を食うから長くは持たないよ?

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