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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十三幕】砂の王国と堕落せし王
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53

 

 深夜。今日は月が大きく欠けていて周囲は暗く、兵士や神官、冒険者達が持つ松明と篝火(かがりび)が周囲を照らす。


 少し先は闇が広がり、その中から(おびただ)しい程の足音が聞こえてくる。距離は近い、これが昼だったなら既に目視出来ている距離まで来ている筈。俺には暗闇でもハッキリと奴等の魔力が視えているので分かる。何時ものスケルトンにグールとヴァンパイア。ん? 地中にも何かいるな。あれはサンドワームか? 砂の中で生息しているサンドワームが此処まで来るのはおかしい。たぶんレイスが取り憑いているのだろう。


 それにスケルトンも人だけではない。犬のような四足の獣に似たものもいる。それを魔力で繋がっている面々に視せると、あれはザントウルフというサンドレアに生息している魔獣なのだと言う。やはりヴァンパイアと同じように、スケルトンにも人以外のがいるみたいだ。あ、バンプリザードのスケルトンまでいるよ。


『なに、問題はない。どんな形をしていようと、所詮は骨だ。我の大剣で頭ごと魔核を砕けば良い』


『そう、ギルディエンテの言う通りだ。何時ものように冒険者として魔物と魔獣を討伐するだけ。それが僕らの仕事だからね』


『うむ! そうだな、クレス! 』


『…… 今度は別の魔術を試そうかな? いつも燃やしてばかりでは飽きる』


 魔力念話を通じてクレス達とギルが話している。成る程、確かに骨は骨だ。弱点も変わらず頭にある魔核なら、そんなに怖れる必要もない、のかな?


『馬鹿言うな。そんな事を言えるのはお前らだけだ。俺は普通の冒険者なんでな、そんな楽観的にはなれねぇよ』


『そっすよね! オレッち達は他の冒険者と一緒になって対処しましょうぜ、ガストールの兄貴にグリムの兄貴! 』


『あぁ、そうだな。それにしても、妖精女王だけでなく龍までも従えるとは…… ライルはどれだけの力を隠し持っているのか』


 おぅ、本当に魔力念話では普通に喋れるんだね、グリム。


 ガストール達は、中の良い妖精からアンネが妖精女王だと聞かされていたようで、ついでだからギルと魔力支配についての説明をした。

 ルベルトは本物の龍だとテンションが上がり、グリムに至っては珍しく驚いたように目を見開いた。だけどガストールだけは合点がいったと一人で納得していたな。


『別に我はライルに付き従っている訳ではない』


『なにを今更、あたし達はライルの魔力収納から離れられない体になっちゃったじゃない? もう従ってるのと同じよ! 』


 それで良いのか? アンネ。女王としてのプライドは無いのか? …… 無いんだろうな。


『皆さん、お話はこれでおしまいのようですよ? 』


「ライル、始まるわ」


 アグネーゼが皆に注意を促し、エレミアの義眼が闇の先にいるアンデッド達を見据える。


 足音が次第に大きく早くなっていくのを感じ、冒険者達と兵士は武器を構える。緊張がピークに達したその時、後方に控えていたセドリック司祭が号令をかけた。


「さぁ! 我等の浄化の光で闇を明るく照らすのです! アンデッド共に聖なる鉄鎚を!! 」


 セドリック司祭と神官達が空へ向けて一斉に浄化魔法を放つ。虹色に煌めく光球が上空に撃ち上がったところで爆発的に強く輝き出した。


 凄い…… 松明なんかいらないくらいに周りが明るくなり、アンデッド達の姿が露になる。初日に攻めてきた只の寄せ集めではないと一目で分かるくらい、しっかりとした装備を着けていた。


「皆の者!! この光の下ではアンデッドは弱体化する! 輝きが消える前に一気に攻めよ!! 」


 へぇ、浄化魔法にこんな使い方があったんだな。ユリウス殿下は既に知っていたようで、冒険者達と一緒に攻め走る。ユリウス殿下、あまり前には出ないようにお願いしますよ。またマリアンヌさんに泣かれても知らないからね。


 ――ウオォォォオォォォ!!!


 冒険者とグールの叫びが混ざり合い、空気を震わせた。心は熱く、背筋が冷えるという摩訶不思議な現象に戸惑いつつ、皆の戦いを見守る。


 神官達が放つ浄化魔法の光によって、闇に染まっていた夜は昼のように明るく視界がクリアに、且つアンデッド達はその光で動きが衰える。そこへ冒険者達の無慈悲な一撃がグールとスケルトンを襲った。


 冒険者達の攻撃は驚く程にすんなりとグールとスケルトンに当たり、空で輝く虹色の光によって灰となる。その呆気ない手応えの無さに冒険者達は肩すかしを食らうが、直ぐに立ち直り次の獲物へと向かっていく。


 これはいけるか? そう思ったのも束の間、地面からサンドワームが躍り出て冒険者達を食らおうと迫り来る。


 あわや食われる寸前、白い霧がサンドワームを包み込んだと思ったら、サンドワームの体が躍り出たまま凍り付き、地面に激しくその体を打ち付けた。


「…… 如何にレイスに操られようとも、凍ってしまえば動かせない」


 あれはリリィの魔術だったようだ。炎の次は氷ときたか、リリィの魔術の威力と多才っ振りには舌を巻くよ。


 凍って動かなくなったサンドワームを周りの冒険者が粉々にして討伐完了。しかしこれで警戒したのか、地面の中から出てこなくなり、冒険者達の足元から襲うスタンスに切り替えた。これにはさしもの冒険者も中々攻撃を当てられずに苦戦している。


「此処は私に任されよ!! 土中に潜むとはなんと卑怯な! 正々堂々と姿を現せ! 」


 いや、サンドワームなんだから地面に潜るのは常套手段なのでは? 理不尽な憤慨をするレイシアが地面に剣を突き立て土魔法を発動させると、サンドワームごと地面が盛り上り、勢いよく爆ぜた。


 空を舞うサンドワームに、今度はリリィの風魔術がサンドワームの体をバラバラに切り刻む。ボトボトと落ちる血と肉塊にもう気分は最悪。グロすぎるよリリィ、凍らせるんじゃ駄目だったの?

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