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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十三幕】砂の王国と堕落せし王
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 単純に数だけで言えば、アンデッドの方が多い。だがその殆どがグールやスケルトンだから、質では此方の方が上だ。


 魔力で繋がっているクレス達やガストール達の耳を通して周りの声が聞こえてくる。その声には怖れる者はおらず気合いは十分。アンデッド討伐の依頼を進んで受けた者達だから当たり前か。


「おっし! ちょっくら全力で相手しちゃおうかな? 」


「ムム! やる気に漲っておられるな、アンネ殿。私も負けてはおられん! 」


「周りには味方の冒険者達がいるから、巻き込まないように頼むよ」


「…… 魔力はライルが補給してくれる。研究に専念したいから始めから全力でいく」


 やけに好戦的な三人にクレスは困ったいるみたいだけど、上手く舵取りしてくれよ。


「ふぅ…… 何だか緊張するっすね。こんな大勢で戦うのは、レグラス王国のオーク討伐以来っす」


「なに? 怖いの? あたしがいるんだから大丈~夫! しかも今回は魔力使い放題よ、負ける要素が見当たらないわね! 」


「あぁ、ライルが魔力補給をしてくれるからな。前に一度経験したが、ありゃ凄かったな。まるで無限の魔力を手に入れたような気がしたぜ」


 ルベルトが緊張しているなか、妖精とガストールがアンデッドを目前に余裕で構える。グリムは無言なのでよく分からん。


「おい、あんな奴いたっけ? あいつも冒険者なのか? 」

「防具も着けずに、大剣一本だけとは…… 余程自分の腕に自信があるんだろうな。それか只の無謀な馬鹿のどっちかだ」


 冒険者達に混じっているギルに違和感を覚えた者の声がちらほらと聞こえてくる。周りがガッチリと装備を固めているのに、一人だけラフな格好して身の丈程ある大剣を担いでいたらそりゃ浮くよな。でもそんな事を微塵も気にする様子がないギルには脱帽するね。



 アンデッド達がある程度近付いたところで、クレスが剣を抜くと、それを見た他の冒険者達が次々と武器を構えていく。


 先に動いたのはクレス達だった。迷いなくアンデッドに走っていくのを皮切りに、他の冒険者達も我先にと走る。魔物の討伐依頼を受けた冒険者には号令など無用、先頭が動けば後に続き戦いへと赴いていく。


 クレスの剣が一体のスケルトンの頭蓋を砕いたのを合図に、そこかしこから武器を打ち合う音が響いてくる。


「…… 臭いのには焼却処分が一番」


「うむ、リリィは私が守るので、気兼ねなく焼き払ってしまえ! 」


 炎の魔術でアンデッド達を焼いていくリリィを守りながら、グールを斬り伏せるレイシア。


「クレス、打ち合わせ通りに行っくよー! 」


「あぁ、分かった! 」


 アンネも光の精霊魔法で、クレスと一緒になってレーザー光線を放ちまくる。おいおい、俺が魔力を補給してるからって、幾らなんでも初っ端から飛ばしすぎなんじゃないかい? て言うかいつの間に打ち合わせなんかしたの?


「おぅおぅ…… 派手にやってんな。俺達は安全第一だ、無理せず確実に仕留めていくぞ! 」


「了解っす! 」


「えぇ~、あたしも女王様みたいに派手にぶっ放した~い」


 妖精を含めたガストール達四人は、堅実にアンデッドを倒していく。三人の連携に妖精が加わる事によって、より安定した感じがする。これなら心配しなくても良さそうだな。


「す、すげぇぞ、あの大剣の奴」

「ありゃほんとに人間か? あんなデケェ剣を持ってる奴の動きじゃねぇ」


 アクロバティックな動きで大剣を振り回しながらスケルトンとグールを砕き斬り裂くギルに、周囲の冒険者は驚きつつも攻撃の手は緩めず目の前のアンデッドを倒している。流石、プロだね。



「来ました! 皆さん、宜しいですか? …… 今です!! 」


 空からはレイスが冒険者や神官の魔力を吸い取ろうと迫りくる。それをセドリック司祭の合図で神官達が一斉に浄化魔法を放ち、レイス共を消し去る。その光の余波で近くのアンデッドの動きが鈍くなり、他の冒険者に難なく倒され数を減らしていく。


 これは思ったより順調だな。まぁ急いで寄せ集めたみたいなので、数も質も中途半端だ。これならそんなに身構える事もなかっか? いや、まだヴァンパイアが残っているので油断は禁物である。



 確認出来ているだけで、ヴァンパイアは三人か。どれも元人間のようだ。まぁエルフやドワーフのヴァンパイアがそうそういては困る。



 血の弾丸を飛ばす者、血のナイフを作り出す者、自分の腕を血でコーティングしたりと、ヴァンパイア達は其々の血液操作を駆使して冒険者に襲い掛かる。


「悪いけど、それはもう見ているんだよ」


「同じ手が通用すると思うなよ~! 」


 光を纏い光速で動くクレスが、血の弾丸を躱してヴァンパイアの首を刎ねる。そこへ間髪入れずにアンネの精霊魔法による光の矢が頭と体に突き刺さり、ヴァンパイアは灰となって崩れた。


「フンッ! 踏み込みが甘いぞ! ドワーフのヴァンパイアの一撃はもっと重かったぞ!! 」


「…… 浄化魔法や光魔法が無くとも、魔力が尽きるまで燃やし尽くせば、ヴァンパイアは殺せる」


 ヴァンパイアが血でコーティングされた腕でレイシアに攻撃を加えるが、逆に盾で弾き返される。あのゴルドバと比べれば、元人間のヴァンパイアの一撃なんて軽く感じるのだろう。

 よろめき体勢を崩すヴァンパイアに、リリィは魔術で炎の渦を発生させて閉じ込めてしまう。高温の渦の中で再生に必要な魔力が尽きるまで燃やされ続けたヴァンパイアは、苦しみ踠きながら灰も残さずに消えてしまった。


 うわぁ…… あれは酷い。容赦ないね、リリィ。心なしか周囲の冒険者が引いているように見えるよ。


 一方で最後の一人となったヴァンパイアは、ギルの大剣に絶賛斬り刻まれ中である。


「どうした? お前の実力はその程度か? ならば再生が出来なくなるまで斬り刻み続けてやろう」


 ギルからは逃げられないと悟ったのか、ギルの視覚を通じてヴァンパイアの表情が絶望に染まるのが分かる。心中お察しします。ギルに目をつけられたのが運の尽きだったね。



 一度相手をしたからか、三人のヴァンパイアを苦もなく倒してしまった。あれが普通だとすると、塔を守っていたヴァンパイアは別格だったんだな。それでも、クレス達以外の者が相手をしていたら苦戦していたかも知れない。


『俺様がキングだった頃には見なかった顔だな。たぶん新入りだと思うぜ? 』


 テアドアが見覚えのないヴァンパイアだと言う。成る程、なりたてだったから自身の能力を使いこなせておらず、それであの程度だったのか。とにかく、防衛の最大の難関であるヴァンパイアは仕留めたので、後は残りのアンデッドを殲滅するだけだな。

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