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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十三幕】砂の王国と堕落せし王
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「レストン!? レストンじゃないか! 何で此処に? 」


 ルファスと思わしき男性が驚きと喜びが混じった声を上げながら走り寄ってくる。


「ルファス!? あぁ…… やはり君でしたか! 何で此処には私のセリフですよ!! 今まで何をしていたのですか? とにかく、無事で良かった。私はもう、とっくに死んでアンデッドにされているのかと」


「正直危なかった。冒険者の人達がいなかったら、そうなっていただろうな」


 ルファスは人当たりの良さそうな笑顔でレストンとの再会を喜んでいた。歳もレストンと近そうだ。一頻りお互いの無事を確認し合うと、ハッと何かに気付いたみたいに俺の方を向き、ばつが悪そうな顔を浮かべる。


「すいません、ライルさん。彼と此処で会えるとは思ってもみなくてつい…… 紹介しますね、彼はルファス。私とは同期で、同じ新人としてインファネースの商工ギルドに配属されたんです。私の前にサンドレアの調査に向かい消息を絶っていたのですが、こうして無事に再会出来ました」


「初めまして、ライルと申します。インファネースの南商店街で小さな雑貨屋をしています」


「初めまして、ルファスです。噂は聞いていましたよ。インファネースに来て、あっという間に南商店街の代表になった有望な若者がいると」


 そんな噂が…… だったらもう少し客が増えても良いとは思うんだけどね。


「ライルさんには、私の補佐という事で同行して頂いております。彼がいなければ、私はここまで来られなかったでしょう」


「噂以上の人物って訳か…… レストンが世話になったようで、ありがとうございます。こいつと一緒で何かと手を焼いたのでは? 」


「いえ、レストンさんは真面目で誠実なお方でしたので、色々と勉強させて貰いました」


「そうですか? 真面目だけが取り柄の男ですからね。まぁそれが良い所でもあるけど」


 同期として共に仕事をしてきた二人は、プライベートでも親交が深いのだろう。お互いに信頼し合っているのが傍から見て取れる。


「ライルさん。私はこれからルファスとお互いに得た情報をすり合わせようかと思っております。なので私の事は気にしなくて結構ですよ。クレスさんに何か頼まれたのでしょう? 」


「お気遣いありがとうございます。では、お言葉に甘えさせて貰いますね」


「はい。私には何も出来そうもありませんが、ライルさんなら…… お願いしましたよ」


 レストンとルファスの元を離れて部屋に戻った俺は、余っている鉄とミスリルを使って転移門の作成に着手した。それからも頻繁にクレスとユリウス殿下の元へと伺い、細かい打ち合わせを重ね、準備を進めていく。


 そして瞬く間に二日が経ち、俺達はレイシアの案内でこの国を覆う結界の発生源である一つに下見として向かう。


 朝方、町の門前でレイシアが俺達を待っていた。


「準備は良いな? 良し! では出発と行こうか!! 」


 エレミアが手綱を握るバンプリザードに俺が乗り、レイシアのバンプリザードにはアグネーゼが乗って、目的地へと走り出す。


 目指すはオアシスの町から北西に位置する結界の魔道具が設置されているという場所。


 町が見えなくなるまでバンプリザードを走らせるが、そこからエレミア達を魔力収納へ入れ、魔力飛行で飛んで行く。その方が断然速いし安全なのだ。それに下が砂だから、もし落下したとしても死ぬことはないだろうと思うと、高所への恐怖心も少しは和らぐ。それとも飛ぶ行為自体に慣れたか?


『やはり貴様も来ていたか! テオドアよ』


『何だ、来ちゃ悪いのか? 』


 レイシアが魔力収納にいるという事は、当然テオドアとも会ってしまう訳で。相性が悪いこの二人の衝突は避けられない。


『いや、キングには自分と同じ種族に対して絶対に逆らえない命令を下せると聞く。アンデットである貴様もキングには逆らえぬのかと思ってな』


『はぁ? 俺様は元アンデットキングだぜ? あのクソガキのちんけな強制力なんて俺様に効くわけねぇだろぉが! 』


 まぁそうだろうとは思っていた。そもそもアンデットキングの強制力が効くのなら、テオドアはキングに戦いすら挑めない筈だ。


『ふむ、それなら良いだろう。せいぜい敵と間違われて浄化されぬよう気を付けるんだな』


『へぇへぇ、ご親切にどうも。そんなヘマ誰がするかよ』



 レイシアの言う方角に全速力で飛ばすこと数時間。何やら遠くに細長い建物が見えてくる。どうやら彼処が目的地のようだ。ここからは高度を下げて、慎重に近付いていく。


 砂漠の真ん中にポツンと、石造りの塔が建っている。まだ陽が昇っている時間帯なので塔の周りにアンデッドは見当たらない。しかも何かに遮られているのか、塔の中の魔力も感知出来なくなっていて中の様子も伺えないけど、アンデッド達は塔の中にいるのだろうと予測する。


 さて、下見ついでにどう攻めるか考えてみよう。こういうのは塔の最上階に魔道具が置かれているものだ。そう考えれば、態々下から行かずとも、魔力飛行で直接上に攻めて魔道具を壊してしまえば良いのでは?


『ライル、良く見て。塔自体に魔力が流れているのが視えるわ。あれは、何かしらの魔術が掛けられているんじゃない? 』


 エレミアの義眼が塔に流れる怪しい魔力を捉えた言うので、俺も注意深く視てみると…… 成る程、確かに。これは侵入を防ぐ魔術か、それともアラームのような伝達系のものか。何れにせよ、塔の入り口から攻めた方が良さそうだ。何があるか分からない内は軽率な行動は控えないと。一つでも作戦が失敗したなら、国を救うのが困難になってしまう。


『あの、私達だけでも今から塔に攻め入って結界の魔道具を破壊してしまうのは駄目なんですか? 』


『…… 確かに、私達だけでもそれは可能かも知れない。でも、それだとアンデッド達に警戒され、港町奪還に支障をきたす恐れがある。仮に今私達が結界の解除をしたとしても、予備の魔道具があったなら、港町を奪還しても外への通信は出来ないままで、二度手間になってしまう可能性もある。出来れば結界の解除と港町奪還は同時に行いたい。そうすれば、例え予備があろうとも再び結界を張るまでにはインファネースへ通信する時間は稼げる』


 リリィの説明にアグネーゼは納得して引き下がった。もし、その逆で港町を先に奪還したのなら、ここの警備がより強化されるかもだし、攻めるなら油断しているだろう今を一気に叩いてしまいたい。


 取り合えず、今いるこの場所をアンネに記憶して貰って、空間の精霊魔法でオアシス近くまで戻る。後はユリウス殿下の体調と肉体がある程度仕上り次第、作戦開始だ。

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