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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十三幕】砂の王国と堕落せし王
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28

 

 サンドワームがガストール達に狙いを定めている内に、準備をする。


『ムウナ、質の高いのじゃなくていいから、小さめの魔核を幾つか造って欲しい。頼めるか? 』


『ちいさい、まかく。だいじょぶ、つくる! 』


 ムウナは食べた生物の遺伝子を取り込む事によって、自らの肉体を変化させ、その生物の器官を造り出せるという特性がある。


 その特性で親指サイズの丸い魔核を造り出してもらい、その魔核に爆裂の術式を刻む。ガンビットが言うにはサンドワームは目が存在しておらず、代わりに音や振動を感知する器官が発達しているらしい。

 それなら、大きな爆発音と爆風でサンドワームを怯ませて砂の中から引き摺り出してしまえば良い。もしくは驚いてこの場から逃げ出してくれたら御の字だ。


 だけど、それには魔石じゃ少々物足りない。どうやら今俺達を襲っているサンドワームは、通常サイズよりもデカイみたいなので何時もの手が通じないようだ。なのでもっと威力のある術式に堪えられる魔核をムウナに造って貰ったのだ。

 爆裂の術式と言っても単純なものなので、そう時間を要せず魔核に術式を施し、小さくても強力な爆弾が手軽に作れる。今回は魔力を込めた後、何かに接触した時点で爆発するように設定しておく。


『僕も手伝います。ライル君は出来た物からあのサンドワームに、これをお見舞いしてやって下さい』


『ありがとうございます、アルクス先生。助かります』


 ムウナが魔核を作り、アルクス先生が術式を刻む。簡単な術式だから威力の調整もしやすい。先ずは一回使用してみて、様子を見るか。


 俺は術式が刻まれた魔核を一つ取り出し、サンドワームがいるであろう砂上へと魔力を使って発射させる。そう、放り投げるのではなく発射である。魔核はまるで弾丸のように回転しながら突っこみ砂に接触した瞬間、激しい爆音が鳴り響き、衝撃で砂柱が上がった。

 だが、サンドワームはたじろぎはしたけど、逃げ出す程ではないようだ。もっと威力が必要か?


『アルクス先生、もう少し威力を強めに出来ますか? 』


『そうですね、ではもっと強くしてみましょうか』


 アルクス先生が術式を刻み始めたその時、サンドワームがまた砂中から飛び出し、ガストール達を飲み込もうとその大きな口を開けて迫ってきた。


 あれはまずい! そう思った俺は咄嗟に術式を刻み終えている魔核を発射させる。サンドワームに接触した魔核が派手に爆発を起こし、それに驚いたサンドワームが身をよじらせて砂の中へ潜り、ガストール達は事なきを得た。


「うおぉぉ!? あぶなかったっす!! ラ、ライルの旦那ぁ! 助かったっすよ! 」


「ふぅ…… 今のは流石に肝が冷えたぜ」


 それでもサンドワームには傷も付けられず、まだまだ元気一杯なご様子。尚も諦めずにガストール達を追いかけ回している。どんだけタフなんだよこのミミズもどきは。そんなサンドワームに辟易としていると、アルクス先生から術式を調整した魔核が用意出来たとの報告が上がった。


「ガストールさん!! 今度はもう少し強めの爆発が起こりますので、出来るだけ離れていて下さい! 」


 はぁ!? と驚愕した顔を浮かべたガストールとルベルトが慌てた様子でバンプリザードを走らせる。グリムは、相変わらずの無表情だ。


「エレミア、サンドワームと並走は出来る? 」


「えぇ、任せて」


 砂中を移動するサンドワームに、バンプリザードの手綱を握り並走させる。距離は付かず離れず、予測される爆発に巻き込まれない位置に着く。


 魔力収納から魔核を取り出して、今も砂に潜って出てこないサンドワームへ勢いよく発射させた。


 砂上に触れた魔核が粉々に砕け散るその刹那、地鳴りにも似た揺れと、耳をつんざく爆発音が辺りの空気を震わせる。爆風で砂が飛び散って、目も開けてられない。


『おや? 思ったより少し威力が大きかったですね』


 その様子を見たアルクス先生が独りごちる。これは少し所ではありませんよ?


 空気中に散乱して漂う砂塵が消え視界が晴れていくと、そこには大きく抉れた砂の大地と、巨体を揺らすサンドワームの姿があった。


「さっきの爆発で奴は怯んでいる! 倒すなら今しかない!! 」


 ガンビットが叫び、風魔法を放つ。ガストール達も急いで近寄り攻撃を加えるが、ゴムのようにぶよぶよとした体に四苦八苦させられ、思うようにダメージが通らない。


 そこにエレミアが、蛇腹剣を伸ばしてサンドワームの頭へと突き刺した。そして電撃を剣身に伝わせて送り込む。激しく痙攣し暴れるサンドワームに何度も電撃を流し込み続ける。


 辺りに焦げた匂いが漂う頃、サンドワームはついに力尽きたのか、ぐったりとして動かなくなった。


「し、死んだのか? 」


 ガストールはおそるおそるサンドワームの体を剣でつつくが反応は無し、本当に仕留めたようだ。


「こう改めて見ると、すげぇデカイっすね。砂漠じゃこんなのがうようよしてるんっすか? 」


「いや、ここまで大きい奴は初めて見る。通常はこれよりも少し小さい」


 そう言うガンビットに 「それでも十分デカイっすよ」 とルベルトは小声で呟く。


「お怪我は御座いませんか、ライル様」


「はい、大丈夫です。どこも怪我はしていません。それよりもガストールさん達を見てやって下さい」


「そちらにはエイブラムさんが行っていますので問題はありません。それにしても、随分と派手な爆発でした。あれもライル様がお作りになられたのですか? 」


 いや、術式の調整をしたのはアルクス先生だからね?


『あの巨体ですから、威力は大きいに越したことはないと思いまして』


 まぁ、確かにその通りなんどけどさ。実際あの爆発でも怯むだけで傷一つ付かないんだから、随分と丈夫な体をしているよ。


 しかし、このぶよぶよした柔らかな質感、つい最近これと似たような物を見た覚えがある。


「あの宿にあったソファーの質感に似てるわね」


 あの座り心地が癖になるソファー、こいつの革をだったのかぁ…… 言われてみればこのクリーム色も同じだ。

 ソファーは欲しいけど、元がこんな気持ちの悪いものの革だと知ったら、きっと母さん達は敬遠してしまうかも…… まぁ、黙ってれば分からないよね?

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