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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十三幕】砂の王国と堕落せし王
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20

 

 リリィ達との連絡が取れ、三人の無事は確認出来た。彼女達が拠点としているオアシスの町へ案内してくれる、ガンビットという人物が王都の宿屋にいるらしい。ヴァンパイアのゲイリッヒに加えてまた一つ、王都での用事が増えたな。


 岩石砂漠をバンプリザードで駆って行くと、岩山付近に辿り着く。剥き出しの岩肌に、ゴツゴツとした地面。それでも一応道らしきものはある。レストンが言うには、昔に土魔法が使える者達が作ったらしい。ここを越えるのか…… なかなかに険しそうだ。


 そんな道でもバンプリザードは淀みなくスイスイと進んでいく。これが馬だったなら、かなり窮状していただろう。


「どうです? バンプリザードにして良かったでしょ? 」


 レストンは自分のバンプリザードを俺達の横に付け、並走しながら聞いてくる。


「はい、馬だとこうも行かなかったと思います。でも、なだらかな道もありましたよね? そこなら馬車も通れそうでしたけど、そんなに移動時間に差が出るものなのですか? 」


「だいぶ違います。それに、山越えの方が野盗の類いに襲われにくいのですよ。襲うなら、荷物が沢山積んでる馬車を狙いますからね。まぁこんな状況でまだ野盗がいるとは思えませんが」


 うん、アンデッドに襲われる可能性が高いからな。野盗も仕事にならないだろう。内戦勃発の兆しもあるようだし、少しでも早いに越したことはない。暫く山道を進むこと数時間、陽が沈みかけ辺りが暗くなってきた。


「おい! 完全に暗くならない内に、野営地となりそうな場所を探そうぜ!! 」


 前方にいるガストールから、そう声を掛けらた俺達は野営が出来そうな平らで広い場所を探す。


「ねぇ、態々探さなくても作れば良いんじゃない? ライルの魔力支配なら出来るんでしょ? 」


 真面目に探す俺を見かねて、エレミアが提案する。そうだった、俺の魔力支配で地面を操り、整地してしまえばいい。ナイスだ! エレミア。


 俺とエレミアはレストンに見られないよう少し離れ、整地する場所を見繕う。土魔法の使い手がいれば、こんな面倒な事をしなくても済むのだけれど、生憎とここには一人もいないんだよね。だから俺がするしかない。そういえばレストンは魔法スキルを授かっているのだろうか? 興味があるので後で聞いてみよう。


 手頃な場所を見つけたので、魔力支配で地面を操り、整地し終わる頃にはもう陽も完全に落ちきっていた。


 レストンとガストール達を呼び、野営の準備をしようとした時だった。何やら魔力の塊が複数体、此方に近付いてくるのが視える。


「皆さん! 何かが近づいてきます!! 十分に注意を! 」


 突然の事でレストンは、えっ!? と戸惑っていたが、ガストール達は瞬時に武器を抜き、俺とレストンの周囲を固める。良い動きだ、流石は慣れてらっしゃる。


「確かに、穢れの気配を感じます」


「結構な数がいるみたいね」


 アグネーゼはアンデッドの気配を感じ取り、エレミアは魔道具である義眼で魔力を視ていた。


「ちっ、ちょっと暗くて視界がわりぃな…… ライル! あの時のようにまた灯りの術式を施した魔石を辺りにばら蒔かねぇか? 」


 あの時? あぁ! ブラックウルフの群れに襲われた時か! その時も夜で視界が悪く、術式を刻んだ魔石を周囲に投げたんだったな。

 懐かしいと感じながらも魔力収納から魔石取り出し、術式を発動させてから周囲に投げる。明るく発光する魔石がばら蒔かれ、辺りを照らす。これで視界は確保出来た。


「うっ、なんですか? この臭いは? 」


 レストンは漂ってくる異臭に顔をしかめる。確かに、何かが腐ったかのような悪臭を感じる。気分が悪くなる位に臭い。


 魔術が発動している魔石に照らされ姿を現したのは、全身が腐りかけているグールとスケルトンだった。何処かの岩影にでも隠れていたのだろうか、それで陽が落ちたので出てきたって訳か。


 グールは人間の死体が魔物化しているので、腐ったものから生前と変わらないものまでいる。しかし魂が宿ってないからか、どれも知性は感じられない。グールと言うよりゾンビだなこれは。一般市民とは言えない見た目をしている、たぶんレストンが言っていた野盗かもしれないな。

 スケルトンは…… 見たまんま骨である。頭蓋骨の中に形成された魔核の光が漏れて眼窩が赤く光り、手には錆びて刃こぼれした剣や槍を持っている。


「まぁ、レイスだけじゃねぇよな…… 」


「うぅ…… 臭いっす! これだからグールは相手にしたくないっすよ!! 」


 ガストール達は武器を構え、迎撃体勢を取る。


「これがグール? 酷い臭いね。剣で斬り付けたら臭いが移っちゃいそうだわ」


「グールとスケルトンには留まる魂はありませんが、穢れであることには変わりありません。神の名の下に浄化致します」


 初めて見るグールにエレミアが顔を曇らせる横で、教義に燃えるアグネーゼがやる気を漲らせていた。


「ライル! 俺達は俺達で魔力念話を使うぜ! 実践で試すにゃ丁度良い相手だしな」


「分かりました。でも無茶はしないで下さい」


 覚えたての魔力念話が実践でどれだけ使えるか試すみたいだ。そんなに危ない相手ではないってことか?


 迫り来るグールとスケルトンに、ガストール達は突っ込んでいく。船の上で見せた時よりも、一段と良い連携が取れているように見える。

 自分がどう動き、どう動いて貰いたいか、魔力念話なら言葉にしなくとも相手にイメージが伝わるので、連携が取りやすいのだろう。流れるような動きで、次々とグールとスケルトンを斬り伏せている。


 一方、エレミアとアグネーゼも負けてはいない。


 エレミアは極力剣を使わず、風と雷魔法でスケルトンを吹き飛ばし、グールを黒く焦がしていく。そんなに臭いが移るのが嫌か。まぁこの臭いだもんな、近付きたくないのは分かるよ。


 エレミアの魔法で動けなくなったグールとスケルトンに、アグネーゼは魔法で浄化する。虹色の魔法陣から発せられる光に包まれたグールとスケルトンは灰になって崩れ去っていった。アンデッド特化の浄化魔法、威力も効果も抜群だ。


 魂や意思がないからなのか、グールやスケルトンの動きはどこか単調で読みやすい。ここまで危なげもなく順調だ。しかし、とあるグールを見たアグネーゼがピタリと動きを止める。その顔は驚きに染まっていた。


「えっ? …… ルシアンナ、司祭…… ? 」



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