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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十三幕】砂の王国と堕落せし王
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19

 

 ドタドタと走るバンプリザードの背に揺られて数時間、周りの景色に緑が少なくなってきた頃、適当な場所で休憩を取ることにした。


「どうですか? バンプリザードの乗り心地は? 」


 魔力収納から水を取り出し飲んでいると、インファネースの商工ギルド職員であるレストンが話し掛けてきた。


「そうですね、馬よりかは揺れが激しいですが、背中が柔らかいのでそんなに気にならないです。速度もありますし、とても素晴らしいと思います」


「それは良かった。ここからは道も険しく、日差しを遮ってくれるような木々もありません。水分補給はこまめにして下さいね」


 レストンが言うように、この国は日差しが強くてとにかく暑い。肌を晒していると紫外線でやられてしまうので、フード付きのクロークを羽織っている。乾燥して砂埃も酷いから口と鼻を隠すマスクも必要だ。


 目の前には岩石や岩くずれで覆われている地帯が広がっている。所謂、岩石砂漠というやつだ。話によれば、サンドレア王国にある砂漠地帯の約四十%は岩石砂漠で、残りの六十%は砂砂漠なんだそうだ。


 王都へ行くにはこの岩石砂漠と岩山を一つ越えなけらばならない。尖った石や、急勾配な道が続いている上にこの暑さだ。レストンの言っていたように、馬ではきつかっただろうな。



 さて、休憩中にしておきたい事がある。それはマナフォンで、この国にいるであろうリリィ達に連絡を取ることだ。ここなら町中のように監視している者はいないので、安心してマナフォンが使える。


 俺はマナフォンを取り出し、リリィとの通信を試みた。



「…… ライル? 」


 おっ!? この控えめな声はリリィだ! やっぱり無事だったんだな。


「あぁ、ライルだ。他の二人は? クレスさんとレイシアさんは無事なのか? 」


「…… うん、無事。でも、どうやって? ここは結界のせいで他国との通信は出来ない筈、まさか…… 」


「そのまさかだよ。俺達も今サンドレアに来ているんだ。一体何があったんだ? 」


 マナフォンの向こうから、リリィの息を呑む音が聞こえた気がした。


「…… そう、ライル達も…… これは丁度良かったかも知れない」


 ん? 何が丁度良いんだ?


「ライル君!? 僕だよ、クレスだ! 本当にこの国へ来てしまったのかい? 心配を掛けてしまったようですまない。僕達は皆無事だよ。でも、少々厄介な事になって困っていた所なんだ。こう言ってはなんだけど、ライル君達が来てくれて助かったよ。これで希望が見えてきた」


「ライル殿!! 心配をお掛けした! この通り、私も無事であるぞ!! 」


 おぅ、クレスとレイシアも元気そうだ。


「詳しく話を伺いたいところですが、先ずは何処かで落ち合いましょう。今何処にいるんですか? 」


「王都から南の砂漠を進んだ所にある、オアシスの町だよ。そこを拠点としているんだ。王都に僕らの仲間がいるから、彼に案内をしてもらって来てほしい。王都の“赤蠍亭” という宿屋で、受付の人に“ガンビット“ に用があると言ってくれれば、会えるから」


「王都の赤蠍亭にガンビットさんですね? 分かりました。それでは、また後ほど」


「あぁ、オアシスの拠点で待ってるよ」


「…… 待ってる」


「うむ! 待っているぞ!! 」


 リリィ達との通信を終了する。良かった、ほんと元気そうで安心したよ。なんか向こうも大変な事になっているようだけど、とにかく会わなければ進展はない。


「リリィ達は大丈夫だったの? 」


「うん、元気そうだったよ。彼等ならアンデッドキングの事や、この国で何が起こったのかも詳しく知ってる筈」


「アンデッドキングを調べに行っていたと言う、ライル様とエレミアさんのお知り合いの冒険者さん達で御座いますね? ご無事で何よりです」


 リリィ達が無事だと知ったエレミアは嬉しそうに笑った。これまで自分から話題には出さなかったけれど、ずっと心配してたからね。


 少し離れている所で休んでいたレストンとガストール達の下へ向かい、クレス達との連絡がついたと報告した。


「まぁ、あいつらがそう簡単にくたばるとは思っちゃいなかったけどな」


「いやぁ、あの三人と連絡が取れて良かったっすよね! これで心強い味方が増えるっす!! 」


「あのミスリル級の冒険者達ですか。彼等の噂は良く聞いていました。サンドレアにいたんですね。それでは、王都へ着いたならその宿へ向かうとしましょう。それと、ライルさんさえ良ければ、そのマナフォンというのを見せて頂けませんか? そんなに小さい通信魔道具は始めて見ました。これは商品化するつもりはないのですか? 」


 やばい、商人の目になってるよ、レストンさん。マナフォンに興奮を隠せないレストンを宥めつつ、商品化する考えはないと説明した。


「画期的な発明なのに…… 残念です」


「普及するほどの量が用意出来そうもありませんので、すみません」


「そうですか、それなら仕方ありませんね。因みに、その術式や仕組みをギルドに売って頂く事は? 」


 悪いけど、その気もないから諦めて下さい。さ、もう休憩は十分なので早く出発しよう。


 それでもレストンは「絶対に売れるのに…… 」 とまだ未練がましく、ぶつぶつと呟いていた。意外と執着するタイプ?

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