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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十三幕】砂の王国と堕落せし王
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17

 

 冒険者ギルドがある場所にと向かった先に見たものは、原形が分からない程に崩れた建物の残骸だけだった。

 これは酷い、ここで激しい争いがあった事は一目瞭然だ。一体彼等が何をしたというのだろうか? それはここまでされなければならない事だったのか?


 港へ戻ってガストール達に集めた情報を、荷下ろし作業を眺める振りをしつつ魔力念話で報告すると、三人とも揃って何とも言えない表情を浮かべる。


『まぁ、これで連絡が取れなくなった理由が分かった。しかし、国がギルドを直接武力で潰すとは…… よほど邪魔だったようだな』


『何もそこまでしなくても、言ってくれれば出ていったっすのにね』


『いや、出ていかれては困るんじゃないか? それだと余計な情報が外に漏れちまうからな。だから大層な結界を張ってまで通信を妨害して冒険者を始末しようとしたんだろうよ』


 たぶん冒険者達はこの国の知ってはならないものを知ってしまったか、近付き過ぎたのかも。教会の者達に牙を向けたのもきっと同じ理由だと思う。全ては裏に潜むアンデッドの存在を隠す為、害される危険性のある冒険者や神官達を排除する為に動いているのでは?


『で? これからどうするよ? 』


 ガストールが覚えたての魔力念話を送ってきた。もうだいぶ使いこなしている。これなら戦闘中でも問題はないだろう。


『それはレストンさんに聞かないと…… レストンさん、これからの予定は? 』


『変更はありません。予定通りこの町で一晩過ごし、船を見送ってから王都へ向かいましょう。ここの役人にはまだこの国で外せない用があると言っています。かなり苦い顔をされましたが、何とか了承してくれました』


 こんなレイスだらけの町で一晩か…… 確実に何か起こる予感しかしない、今夜は眠れそうもないな。


 荷物の運搬が終わる頃にはもうすっかりと日が暮れていた。夕食は適当な店で済まし、宿に泊まり翌朝を待つ。今はアンデッドの時間、何も起こらない筈はない。その予想通り、俺とレストンが泊まっている部屋にレイスが一人、忍び込んできた。


 俺は寝たふりをして様子を窺う。姿を消しているようだけど、魔力が視える俺にはしっかりと宙に浮かんで忍び寄るレイスの姿が確認できている。


 暫くベッドで寝ている俺とレストンの間を行ったり来たりしていたレイスだったが、俺の側で動きを止めた。どうやら此方に狙いを定めたらしい。まだ俺が若いから簡単に憑依出来るとでも思ったのだろう。だとしたらとんだ見当違いだ。


 思った通り、レイスが俺に憑依しようと体の中に潜り込んできた。これで俺の体に潜み、此方の動きを把握するつもりなんだろうけど、その目論見はあっさりと潰える事となる。

 何故なら、俺の中に入るということは、魔力収納に入るということ。そこにはアンネやギル、ムウナにアルラウネ達、そして元アンデッドキングであったテオドアが待ち構えている。このレイスは自ら奈落の穴へ飛び込んだのだ。


『は? 何だここは…… ? 何で人間の中にこんな空間が広がってるんだ? 』


 魔力収納に潜り込んだレイスは、予想だにしない光景に暫く呆然としていたが、背後から掛けられた声に我に返る。


『ようこそ、魔力収納へ。歓迎するぜ』


 そう言い放ち、テオドアはレイスの首を片手で掴む。それと同時に暴れないよう少しずつ魔力を奪っているようだ。


『ぐえっ!? て、てめぇは…… なんでこの国にいやがる。今更何しに来やがった。もうてめぇの居場所はねぇんだよ! 』


『あぁ? んなこたぁ分かってんだよ。俺様はな、おめぇらに復讐しに来たんだ。散々馬鹿にしやがって…… さぁ、夜は長い。じっくりと情報を吐いてもらうぜ? 』


 悪どい顔を向けるテオドアに、レイスは見下すような笑みを浮かべる。


『へっ! てめぇ一人に何が出来るってんだ? またキングに命乞いするのが落ちだ』


 だが、レイスのその強気な態度もすぐに萎んでしまう。


『ふぅ~ん、言うじゃない? あたしの楽園に無断で入って来たくせに生意気ね! 』


『フン、所詮は小者、用が済んだらさっさと消してしまえば良い』


『むぅ…… レイス、くえない、ムウナ、にがて』


 気づくとレイスの周りにアンネ、ギル、ムウナ、それにアルラウネ達やハニービィ達も集まり、取り囲んでいた。これにはレイスも驚愕を隠せない様子。


『な、な、なんだよ、これは!? なんでこんな所に龍がいやがる! ひぃ!! や、やめてくれ! 頼むから消さないでくれ! 』


 龍形態のギルに睨まれ、すっかりと萎縮してしまったレイスには、もう反抗の意思は見えない。気持ちは分かるが同情なんてしない。お前達はそれだけの事をしてきたんだ。容赦する必要性は皆無だ。


『なら嘘偽り無く話せ。貴様らは教会の者達と冒険者達に何をした? アンデッドキングは何処にいる? 』


『わ、分かった! 話すよ! だけど俺の知らない事もあるのは勘弁してくれ。えっと…… 神官達と冒険者だよな? あ、あいつらは俺達の邪魔になるってんで、殺した。で、でも! 逃げた奴もいるから全部じゃねぇ。そいつらが何処かで集まってるっていう情報もある。俺達にも、その場所を探るようにとも言われてるけど、正確な所はまだ分からねぇ。それと、キングの居場所も知らねぇ。ほ、ほんとだ! 本当に知らねぇんだよ! だ、だけど知ってそうな奴には心当たりがある。王都に“ゲイリッヒ” というヴァンパイアがいる。そいつならキングが何処にいるか知っている筈だ! 』


 消えたくないのか、まぁ良く喋ってくれる。ヴァンパイアのゲイリッヒか…… どちらにせよ、もっと詳しく調査をする為には王都へ行くしかなさそうだな。

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