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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十三幕】砂の王国と堕落せし王
324/812

16

 

 手続きも済ませ、レイスに取り憑かれているギルド職員が荷物の引き取りの為に馬車を港へと手配してくれた。


「すぐに向かわせますので、先に港でお待ち下さい」


「分かりました。それと頼みたい事なあるのですが、よろしいですか? 」


「え? あ、はい。何でしょうか? 」


「インファネースのギルドへ至急報告したい事がありますので、通信の魔道具を使わせて貰えませんか? 」


「…… 誠に申し訳ございません。今、通信の魔道具は故障しておりまして、修理に時間が掛かるとのことですので、使用は出来ません」


 へぇ、故障ねぇ? 怪しい…… レストンもそう思ったのか、方眉をピクリと上げる。


「そうですか、それなら仕方ありませんね。あっ、最後に一つだけ聞かせて下さい。私の前にもインファネースからギルド職員の方がお訪ねになりませんでしたか? ルファスと言う男性なのですが、ご存知でしょうか? 」


 受付の女性はルファスと聞いた時、一瞬だけ肩を震わせるのが見えた。


「…… いえ、聞き覚えはありません。力になれず申し訳ございません」


「此方こそ、失礼致しました」


 俺は商工ギルドから出て港へと戻る道すがら、魔力念話でレストンに話し掛ける。


『あの反応は何か知っているみたいでしたね。でも監視の目があるから何も言えない様子でした』


『私もそう思います。やはり職員の人達は全員レイスに? 』


『そう思った方が良いかも知れません。用心しましょう』


 もう結界の中なのだからマナフォンでクレス達と連絡が取れる筈、しかし奴らが至る所で目を光らせているので迂闊な行動は出来ない。暫くは町の様子を窺うしかなさそうだ。


 予定では町で一晩明かし、翌日の朝に船はインファネースへと向けて出港する事になっているけど、俺達は船に乗らずこのままサンドレアに残る。その事をずっと訝しいそうに様子を窺っている役人に伝えると、あからさまに不機嫌な顔をした。ちょっとは隠そうとしろよ。


 ギルドから手配された馬車が到着し、荷物を改めながら積んでいる間に、レストンの護衛をガストール達に任せて町を見て回る事にする。アンネとテオドアの見立てにより、町の人達は殆どレイスに憑依されていないという予想を立てた。どうやら役職に就いている者に多くレイスが憑依しているようだ。


 レイスに憑かれていない人を選び話しを聞くけど、法が変わって住みづらくなったとか、この町での仕事が減り、王都へ出稼ぎに行く者が増えてきているといったものが殆どだった。


 アンデッドについては、日が沈むと砂漠で彷徨うグールやスケルトンの姿をよく見掛けるようになったと聞くも、有力な情報は得られずにいる。やっぱり直接レイスに尋問した方が良いのかな? でも他のレイスにばれたら面倒だし、下手に警戒心を強めるような事はしたくない。何か良い手はないものか。


 教会に関しては誰も口にしたがらなかった。直接教会を訪ねてみたけど中には誰もいなく、もぬけの殻である。これにはアグネーゼも不安気な表情を隠せないでいる。


『きっと何処かに避難しているんだと思うよ? 』


『はい…… そう切に願います』


 はぁ…… 駄目だな俺は、慰めの言葉一つも満足に言えやしない。全員無事なら良いんだけど。


 結界の術式はこの町では解析出来ない。何処かに結界を発生させてる物がある筈…… ふと下を視てみると、魔力の流れというか道のようなものが出来ていた。それを辿っていけば町の外にまで続いているのが分かる。この方角の先には確か王都があると言っていたな。もしかして、結界の発生元は王都にあるのでは?



 ◇



「は? 教会だって? あんたら、何でそんな事が聞きたいんだ? 」


「いえ、私達は外から来たのですが、礼拝の為に教会を訪ねても誰もいなかったようでして」


 少しでも情報を集めるため聞き込みを続けていると、町人と思われる一人の男性が興味深い事を話してくれた。


「あぁ、他国の人か。変な時にここへ来ちまったな。悪いことは言わない、早く自分の国に帰った方がいい」


「一体サンドレアに何があったのですか? 」


「ちょっと来な」


 町人の男性は周りを気にして、目立たない路地の隅へと移動した。


「あまり聞かれたくないんでな。で? 何かあったかだ? そんなの俺の方が聞きたいね。いきなり法が変わって、税も上がった。皆その日暮らしでかつかつだよ。噂じゃ王はまるで別人のように人が変わったらしい。前は優しくおおらかな人だったのに…… 王は教会の廃止を宣言し、各町や村にいる神官や司祭達を強引に捕らえ始めたんだ。勿論教会側も反抗はしたが、兵士の数と力には抗えずに何処かへ連れていかれてしまった」


「そ、それは、全員なのでしょうか? 」


 アグネーゼは震える手を胸の前で組み、恐る恐る男性に聞いた。


「捕まる前に逃げ出した者達もいると聞くけど、本当の所は分からない。王の圧政のせいで国は荒れ、俺達の暮らしは酷くなる一方だ。これも噂だけど、この事態に意を唱えた者達が集まって反乱を起こそうとしているらしい」


「反乱、ですか? 」


 何とも険呑な噂だな。しかし、火の無い所に煙は立たずって言うし、眉唾と決め付けるには早計だ。


「その構成の殆どが冒険者だって話だ。王は教会の次に冒険者ギルドも廃止したんだ。ギルドがあった場所を見たか? 酷い有り様だぜ? 抵抗した冒険者達と国の騎士達との争いが勃発してな、今では建物すらまともに残っちゃいない」


「冒険者ギルドを? 何でそんな事に? 」


「さあ? さっぱり見当はつかない。もうこの国は駄目だ。そう見限って他国へ移ろうとした奴もいるが、何故かすぐにばれて連れ戻されてしまう。この町でも常に見られている感じがするし、休んでいても全然疲れが取れねぇんだよ。もう逃げ出そうとする気力さえ湧かなくなっちまった。あんたらも、この国から出られる内に早く出な。じゃないと、きっと後悔する事になるぞ? 」


 そう言い残し、町人の男性は力無い足取りで去っていった。


 王の圧政に、教会と冒険者ギルドの廃止、それと反乱か。このままいくとサンドレアで内戦が始まるかも知れない。ここまで物騒な事態に陥っているとはね。

 冒険者が筆頭になって反乱を起こそうとしてると言っていた。もしかして、クレス達もそこに加わっているんじゃないだろうな?


 とにかく、冒険者ギルドがあったという場所に行ってみよう。

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